赤城智美さんコラム日々の生活と、食物アレルギーについて

28子どもだけで初めて外食したときのこと

公開日:2019年9月27日

子どもが6年生になったとき、連休中に友達と3駅先の駅前にあるハンバーガーショップに行くことになりました。数キロ先に信号機付の横断歩道ができた時には、物珍しさのあまり、連れ立って自転車で見に行ったような子ども達にとって、電車に乗ってお店にいくことが、大冒険だったのです。何週間も前からどうやって行くか相談し、ワクワクドキドキしながら計画を立てていました。

その当時は、卵と乳製品と小麦がアレルゲンだったけれど、小麦は何とかクリアして食べられる状態でした。乳製品は、バターはクリアしたけれど、パンに含まれている乳成分で息が苦しくなることもあったので、給食のパンは食べず、自宅でのみ、管理した分量を食べていた時期でした。卵はよく加熱したものを少量しか食べられない状態でした。それでも、どうやったら友達と一緒に楽しく過ごせるか、私は子どもと色々作戦を立てました。

冒険したくてしょうがない子どもは、「Webサイトでメニューを調べ、食べることができそうな商品をピックアップして、原材料を調べ、よくわからないものはお店に電話して確認すれば詳しくわかるでしょう? 最初から注文するものを決めておけばいいよね!」と、張り切ってプランを説明してくれました。

子どもは自宅と学校給食のことはよく知っているけれど、それ以外のご飯のことはよく知りませんでした。法事の時も結婚式におよばれした時も、母親の出張に付き合って遠くに出かけたときも、いつもいつも「予約した安全なご飯」か、親がそばについて、逐一中身を確かめたものを食べているので、不自由した経験がなかったのです。「普通は大丈夫じゃない場合もある」ことに気づいていなかったのです。子どもの提案に付き合ってパソコンとにらめっこしたり電話をかけたりした結果、注文することに決まったメニューはコーンと紅茶だけでした。

子どもは「ふーっ」とため息をつき、「こんな感じかぁ」とつぶやきました。我が子の場合は、油はアレルゲンではないけれど、なぜか揚げ物を食べると手足が湿疹だらけになるので、ポテトは除外していました。「今回はポテトを『アリ』にして食べる? お腹空くんじゃない?」と妥協案を提示してみましたが、「湿疹が出て、また包帯を巻くようになるのは嫌だから」と コーンを2個注文することになりました。

友達との大冒険は、なんとか無事にクリアしたようで、「楽しかった!」と帰ってきたときの顔を今でも時々思い出します。振り返れば、電車での遠出はもちろんですが、食べられるものを自分で選ぶ経験は、子どもにとってとても大切な出来事だったと思います。そして、子どもの大冒険は、実は、母にとっての大冒険でもあったのだと、後になって気づいたのでした。