健康に関する新価値創造に向けた弘前大学との取り組み

ハウス食品グループは健康に関する新たな価値を提案する取り組みを進めており、医学的観点から研究を行なうために、弘前大学大学院医学研究科に2018年6月1日付で、共同研究講座『食と健康 科学講座』を開設しました。

岩木健康増進プロジェクトにおける当社取り組み

弘前大学COI※1では、これまでに10年以上続けてきた大規模疫学調査である「岩木健康増進プロジェクト※2」の健康ビッグデータをベースに予防医療に焦点を当て、研究を進めております。本講座では、岩木健康増進プロジェクトの健康ビッグデータの活用とともに、当社独自の検査項目として味覚、食関心、食事内容を調査して、味覚や食生活と様々な健康指標との関連性を解明し、健康寿命延伸につながる食習慣を明らかにしていきます。特に近年の超高齢社会において、認知症といった疾患や、さらにはフレイルと呼ばれる虚弱状態が問題となっており、こうした社会課題に対してエビデンスをもとにした食のスタイルを提案していきます。

岩木健康増進プロジェクトにおける当社取り組み
左:味覚検査、中央:食関心・食生活アンケート、右:アプリを使用した食事調査

左:味覚検査、中央:食関心・食生活アンケート、右:アプリを使用した食事調査

※1弘前大学COI
文部科学省主導の革新的イノベーション創出プログラムのことで、2013年に採択されました。弘前大学は、「短命県返上」を目標に、産官学民共同の研究活動の成果から大きなイノベーション創出を目指しています。

※2岩木健康増進プロジェクト
弘前大学が青森県弘前市岩木地区で2005年から実施している健康調査で、約2000項目という世界に例のない膨大な検査項目を設けることで、巨大な健康ビッグデータを記録しています

味覚と食関心・食生活との関連を学会で発表

ハウス食品グループは九州大学大学院歯学研究院、弘前大学農学生命科学部、弘前大学医学研究科、弘前大学COI研究推進機構と共同で、第54回日本味と匂い学会にて「食事への興味・食習慣が味覚閾値(味覚の感じやすさ)に及ぼす影響について」を発表しました。

味覚は食事をおいしく食べるという観点から、健康やQOLにとって重要な要素です。2019年度の岩木健康増進プロジェクト健診に参加した20~89歳の男女1025名について、味覚閾値、食事への興味、食生活との関連を検討しました。結果、食事に関心のある群と比較して、食事に関心のない群は塩味閾値が有意に高値でした。また食生活において共食回数(誰かと一緒に食事をする)の少ない群は、共食回数の多い群と比較して、塩味閾値が有意に高値でした。以上から、普段の食事への興味や食生活が味覚に影響を及ぼす可能性が示唆されました。

味覚が加齢に影響することを示唆 味覚が食関心や共食に影響することを示唆

生活習慣病と関連する食生活を学会で発表

ハウス食品グループは、弘前大学健康未来イノベーション研究機構と共同で、第77回日本栄養・食糧学会大会にて「食事管理アプリを用いた一般地域住民の食事摂取状況に関する検討」を発表しました。

食事は健康的な生活を送る上で非常に重要な要素ですが、自身の食生活を把握できていないことが多く、気付かないうちに食生活起因の疾病に罹患する可能性があります。近年、自身のスマートフォンから手軽に食事内容を記録できる食事管理アプリが登場しており、食生活起因の疾病予防に役立つことが期待されます。
今回、2020年度の岩木健康増進プロジェクト健診に参加した方の中で、アプリを使用した食事調査に協力頂いた90名について、主要な生活習慣病に関する指標と、食事管理アプリで取得した主要な栄養成分摂取量や生活習慣(飲酒、喫煙、睡眠、運動)の関連を検討しました。その結果、高血圧指標と関連の高い因子として、炭水化物・食物繊維・年齢・食塩相当量、高脂血症指標と関連の高い因子として、年齢・飲酒・食物繊維・脂質、糖尿病指標と関連の高い因子として、炭水化物が上位に見られました。以上のことから、食事管理アプリを用いた調査において、生活習慣病と関連のある主要な栄養成分が示唆されました。