新型コロナウイルスの位置づけが2023年5月より「5類感染症」となり、ポストコロナへとシフトしています。従来の延長ではない生活様式や価値観の変化、ウクライナ情勢の想像以上の長期化など、社会経済の安定が見えない中、長期的な気候変動への取り組みに加え、2022年9月には政府より「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が公表されるといった様々な社会課題のグローバルな視点での要請、対応が模索されています。
ハウス食品グループは「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします」というグループ理念を掲げています。このグループ理念は、P.ドラッカー先生が著書「企業とは何か」の中で説かれている内容を私たちなりに整理した「3つの責任」を念頭において制定したものです。一企業市民として「お客様への責任」「社員とその家族への責任」「社会への責任」という「3つの責任」を果たし、全てのステークホルダーの方々にとって「グッドパートナー」になることをめざして行くという考え方が根幹になっています。
グループ理念が企業としてのあるべき姿~すなわち“to be”とすれば、中期計画はそのあるべき姿に近づくための行動計画~“to do”と位置付けられます。私たちは第六次中期計画から本格的に「3つの責任」を中期計画に組み込み、取り組みを強化・推進してきました。そして、第七次中期計画からは、将来のあるべき姿に向けてバックキャストの視点でテーマを設定して取り組みを推進しています。
「お客様への責任」に関しては、グループの強みを最大限に発揮する領域として「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4系列バリューチェーンを設定し、「グローバルにプレゼンスのあるクオリティ企業」を目指してバックキャストの視点で取り組みを進めており、2023年3月期は各バリューチェーンにおいて成長ストーリーの議論が進んだ一年となりました。
例えば、「機能性素材系バリューチェーン」では、2022年4月には機能性飲料事業のグローバル展開を推進する橋頭堡として、タイに事業統括会社を設立。「大豆バリューチェーン」では、2022年9月に付加価値TOFU(豆腐)とPBF(植物由来食品)の製品ラインアップを持つ米国キーストーンナチュラルホールディングス社をグループに迎え入れております。
「社員とその家族への責任」に関しては、グループ会社のハウス食品において2023年4月に人事制度を改定しました。この新人事制度では、制度・評価・報酬を社員が仕事を通じて積み上げてきた「能力」に紐づけるのではなく「役割」に紐づけることで、グループ個社ごとの閉じた制度からよりオープンな制度にしていくことを志向しています。そして今後、この新制度のコンセプトをグループの他の会社にも横展開することにより、グループ内外の人材ローテーションの活性化を図ってまいります。
「社会への責任」においては、2022年5月に「2050年カーボンニュートラル(Scope1、2)」を宣言しておりますが、その具体的な取り組みの一つとして、2022年9月にはJFEエンジニアリング様をパートナーとした「多拠点一括エネルギーネットワークサービス」の基本合意を行い、2024年4月の導入にむけ鋭意準備を進めております。また、すべての人が取り組むべき人権課題への対応として2023年4月に「人権方針」を改訂し、優先領域を設定して活動をスタートしています。
また、企業基盤を支えるコーポレート・ガバナンスの強化に向けて、2022年1月には経営会議の諮問機関として「投資委員会」を設置、2023年3月期より「取締役会の実効性評価」の仕組みを導入しております。実効性評価のなかで社外取締役から挙がった「経営会議における各取締役の議論が見えづらい」という声を受け、取締役会で経営会議の議論内容を共有するようにしたことで、より内容の濃い議論ができるようになりました。
ハウス食品グループはこれからも食を通じて、お客様の笑顔を、社員とその家族の笑顔を、そして笑顔あふれる社会を、共に創るグッドパートナーをめざします。また、ステークホルダーの声に耳を傾け、新たな社会課題をとらえ、未来に向けた歩みを続けてまいります。
2023年11月