専門家からのお声

消費者アドバイザー 一般社団法人「Food Communication Compass」代表:森田 満樹(もりた まき)氏

2015年の食品表示法の施行から食品表示が大きく変わっています

現在、消費者団体である一般社団法人Food Communication Compass、略してフーコムを通じて、食品安全、食品表示、消費者関連について、科学的根拠に基づく情報を発信し、各省庁の検討会の委員、消費者や企業向けに食品表示等の講演や執筆活動も行っています。

ここ近年、2015年に施行された食品表示法を皮切りに、原料原産地表示、遺伝子組み換え食品表示など、食品表示に関わるルールが大きく変わってきています。3年毎に調査検討をする食物アレルギー物質表示も、ナッツ類の流行が影響し、アーモンドが特定原材料に準ずる物質に追加となりました。今後さらに表示が変更されていくと予想しています。

食品表示法は5年の経過措置期間が過ぎ、基本すべての食品に「栄養成分表示」の義務化や、アレルギー物質の表示の仕方などが変わっています。それに気づいていない消費者が多いのが食品表示を取り巻く現状だと考えています。

森田 満樹 氏

食品表示は事業者と消費者をつなぐ架け橋

大きな表示の変更はひと段落つきましたが、今後、アレルギー物質表示や食品添加物表示のルールなど細かい見直しを続けていくと思います。

消費者庁にはこれからの数年の間、消費者に向けて食品表示に関する啓発活動をしてくれることを期待しています。
その活動を通じて、消費者側には、食品表示について興味を持っていただきたいです。
食品表示は消費者と事業所をつなぐという、大事な役割があります。食物アレルギーなどの人体への影響はもちろん、パッケージには作り方、保存方法、注意喚起などの大事な情報も記載されていますし、何より栄養成分値を含む食品表示を読み解けるようになると、自分の健康管理にも大いに役立てることができます。各自治体では行政栄養士や食生活改善推進委員が各自治体でセミナーを開催しているので、消費者の方は、そのような場を賢く利用し、健康と自分の身を守ることについてぜひ前向きに考えられたらよいですね。

森田 満樹 氏

食品表示の今後の課題

現在法令で決められた表示以外の部分、例えば特定原材料のアイコン化や、一括表示の枠外の部分が、企業によって表示の仕方が異なる場合もあります。各企業、様々な工夫で表示を行っているのですが、企業同士が歩み寄り、共通のアイコンの作成や、一定のルールを制定するなどは一考すべき課題です。
また、パッケージの範囲は限られているためWEBサイトやQRコードを利用した情報発信の仕方にも検討されています。

消費者の立場に立った使いやすさ、情報の分かりやすさの追求や、どこまで情報を発信するのかなど、食品業界全体で取り組まなくてはいけない課題がまだまだあります。

森田 満樹 氏

専門家が見る、ハウス食品グループの表示への姿勢

ハウス食品グループが発売している商品の食品表示を見ますと、消費者にわかりやすく伝えようとする熱意を感じます。
例えば、一括表示の部分。
食品表示はまず一括表示から確認していただきたいのですが、 パッケージの“原材料名”の中に入っているアレルギー物質名は赤字で記載。さらには枠外にも大きくアレルギー物質の表示が書かれている。食物アレルギーをお持ちの方に分かりやすい表示の工夫がなされています。
(*一部枠外の表示がない商品もございます。)

パッケージの“原材料名”の中に入っているアレルギー物質名品目は赤字で記載
パッケージは2020年時点の物です。

次に、賞味期限の隣にある、製造所者固有記号。
製造所者固有記号とは、製造している工場を表す記号で、同一製品を2つ以上の工場で製造する場合は、この記号での表記が認められています。この製造所者固有記号の近傍に、お客様相談センターの問い合わせ先が明記されていて、同じ面に情報を集中させ、分かりやすく書くことで、お客様へのスムーズな案内を実現しています。

賞味期限の隣にある、製造所者固有記号。

そのほかにも、消費者にとって一番大事な「作り方」。
イラストを多用して、簡潔に分かりやすく伝える工夫がされています。また、カレーやシチューの素などの栄養成分表示では、商品だけの一皿分と具材(じゃがいもやお肉)を用いて作った場合のエネルギー量と食塩相当量も記載されています。
栄養成分表示の単位は事業者が定めていい部分なので、「100g当たり」で記載して消費者が計算したり計ったりしなくてはいけない商品もたくさんありますが、ハウス食品グループの食品表示は消費者視点をすごく意識していると感じます。

消費者にとって一番大事な「作り方」

最後に、今後の期待として
2016年に景品表示法が改正され、大げさな表示や消費者を誤認させる表示を消費者庁が厳しく取り締まりを行っています。ハウス食品グループにも是非、消費者をミスリードしないよう今後も気を付けていただきたいところです。

食品表示の作成者はいろんな知識を総動員して、法律の知識、一方で見やすさや、海外製品の良い表示を積極的に取り入れていますよね。表示は各社の力量が見える場所。法律を守ることはもちろん大事ですが、分かりやすさ、デザインへの配慮、対象の食品の見やすさ、これら全てがパッケージに詰められています。

ハウス食品グループでは、食品表示のノウハウを業界全体にも広げるべく、行政が作るパンフレットの制作の手助けや、積極的な情報共有など、業界をリードする役割、社会的貢献を担っています。こうした姿勢も頼もしくうつります。
これからも、そんなハウス食品グループの食品表示を興味深く拝見していきます。

森田 満樹 氏
(取材内容は、2020年2月27日時点のものです。)