食物アレルギーを心配されているお客様に、食物アレルギー原因食物に関する正確な情報を提供できるように、分析方法を開発しています。ここでは、これまでに開発した定性リアルタイムPCR法やえび、かにを検出するPCR法などの分析方法をご紹介します。
食物アレルギー原因食物として表示が義務づけられている「小麦」、「そば」、「落花生」、「くるみ」を感度良く分析できる定性リアルタイムPCR法(注1)を開発しました。この方法は、DNA量が既知の判定基準試料を検査試料と同時に分析することで、検査試料の陽性/陰性を判定します。特徴として、リアルタイムPCR装置の機種を限定しないこと、分析環境からの微量の混入を誤って陽性と判定しないこと、小麦・そば・落花生・くるみを同じ条件で分析できること、が挙げられます。これら四つのPCR法につきましては、消費者庁の通知に収載されるとともに、技術のライセンス先である株式会社ファスマックより試薬キット「定性リアルタイムPCR小麦検出用プライマー&プローブセット」、「定性リアルタイムPCRそば検出用プライマー&プローブセット」、「定性リアルタイムPCR落花生検出用プライマー&プローブセット」、「定性リアルタイムPCRくるみ検出用プライマー&プローブセット」として販売されております。
注1 リアルタイムPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)
PCRは、試料に含まれるDNAの中から、特定のDNA断片だけを選択的に増やすことにより、検出対象のみを感度良く検出できます。 リアルタイムPCRは、DNA断片の増幅をリアルタイムでモニターし解析する方法で、通常のPCRで別途行う、DNA断片を電気泳動などで検出する操作が不要です。そのため、PCR産物のキャリーオーバーに起因する誤判定リスクを低減することができます。
甲殻類として表示が求められる国が多い中、日本では「えび」と「かに」を区別して表示が義務付けられています。この表示制度に対応して、世界に先駆けて「えび」と「かに」とを識別できる定性PCR法を開発しました。この方法を、「えび」あるいは「かに」だけにアレルギー症状を示す患者さん達の食の選択の幅を広げることに役立てていただければと考えています。
なお、これら二つのPCR法につきましては、消費者庁の通知に収載されるとともに、技術のライセンス先である株式会社ファスマックより、試薬キット「えび検出用プライマー」、「かに検出用プライマー」として販売されております。
果物アレルギーの主な症状としては、口腔アレルギー症候群があり、花粉症やラテックスアレルギーとの関連が報告されています。表示推奨品目の中には、「キウイフルーツ」、「もも」、「りんご」、「オレンジ」、「バナナ」の5品目の果物があります。果物の中では症状が重篤で症例数が多い「キウイフルーツ」のほか、「もも」、「りんご」について、PCR法を開発しました。これら三つのPCR法につきましては、技術のライセンス先である株式会社ファスマックより、試薬キット「キウイ検出用プライマー」、「もも検出用プライマー」、「りんご検出用プライマー」として販売されております。