パパたち、家事・育児を楽しみながらできていますか?「主夫」や「育休」といった選択をし、一足早く家庭に軸足を置いたり、子育てにコミットしたりしているパパたちが語るリアル。
今回のテーマは「男性が家事・育児をやることのメリット」について。
現在、家庭に軸足を置き家事や子育てをしながら仕事もしている男性「兼業主夫」で、そんな主夫たちの団体である「秘密結社主夫の友」(NPO法人ファザーリング・ジャパン所属メンバーにより結成)の堀込タイゾーさん(All About「男の子育て」ガイド)と杉山錠士さん(兼業主夫放送作家)。二人はいつものように公園で行う井戸端会議の中で、このテーマについて話し合っているようです。
杉山さん「堀込さんは会社員をしてから、家事と子育てを中心にした暮らしに変わりましたし、育休を取った後で当時勤めていた会社に復帰した経験もありますよね?」
堀込さん「そうですね、いわゆる育休を取りました。もう10年くらい前なので、当時はかなり珍しい存在だったと思います」
杉山さん「ぶっちゃけ、家事や育児を経験したことで復帰後の仕事は変わりました?」
堀込さん「変わりましたね。仕事の効率が上がりましたし、残業も減りました」
杉山さん「それは業務量が減ったということ?」
堀込さん「いやいや、そこは変わりません」
杉山さん「じゃあ、スピードが上がったんですか?」
堀込さん「スピード……なんですかね?」
杉山さん「同じ量の仕事をするのに時間が短くなったというのは、そういうことですよね?」
堀込さん「まあ、そうですね。スピードというか、“効率”だと思います」
杉山さん「家庭のことをしている間は仕事を離れているわけで、どちらかというと“ブランク”になってしまうような気もするんですが、それでも効率が上がるなんてことがあるんですか?」
堀込さん「あるんですよ。ポイントは二つ。まずは精神的なモノ。育休が終わった後も、例えば保育園のお迎えがあって、基本的に仕事を終わらせないといけない時間が決まってきます。後ろに予定がある時って集中力が上がるじゃないですか? そういう感覚です」
杉山さん「それだけで上がるもんですか?」
堀込さん「仕事で言えば、外せない会議や出張。プライベートで言えば楽しみな飲み会や、スポーツ、ライブなど動かせない予定は子育て以外にもいろいろありますけど、そういうのがある時ってブーストかかりません?」
杉山さん「確かに」
堀込さん「子育てを出張&重要な会議と同じくらい大事なものだと考えればできないはずはない、ということです」
杉山さん「もう一つはなんですか?」
堀込さん「もう一つは、作業自体の効率化ですよね。男性は同時に複数のことを進める、いわゆるマルチタスクが苦手と言われますけど、家事をしながらの育児はまさにそれが求められます。いや、家事だけでも洗濯している間に掃除しないといけないからそれだけでマルチタスク。そういう経験をすることで、完全ではないけどある程度のマルチタスク能力はつくし、一つのことを進める上での段取り力も求められます。それに子どもたちは待ってくれないので容赦なく泣いたり、遊んでくれとせがんできますから、そこに対応しながら仕事をする能力は上がったと感じます。実際に『ファザーリング・ジャパン』のさんきゅーパパプロジェクトが今年行った『隠れ育休調査』のアンケートでも、育休取得後に『業務効率化に対する意識』『残業時間削減に対する意識』など仕事の効率に関する意識が上がったと答えた人が過半数いました」
※NPO法人ファザ―リング・ジャパン 「隠れ育休調査2019」より
杉山さん「なるほど。そうそう、子どもたちは待ってくれないから、それも大変ですよね」
堀込さん「そう、その子どもへの対応が顧客や取引先とのコミュニケーション力アップにも繋がります」
杉山さん「そうなんですか?」
堀込さん「だって、子どもたちは理屈も筋も通じない。こんなにやっかいな“顧客”はいませんよ」
杉山さん「そうですよね。あとは妻の存在もありますが」
堀込さん「妻、それは“スキルの高い上司”です」
杉山さん「そのこころは?」
堀込さん「そのままの意味なんですけど、やっぱり妻の方が家事力も育児力も高いじゃないですか。そういう人がいる中で、家事も子育てもしないといけない。チェックも厳しいし、“上司”からすれば、できて当たり前のことができないとなると機嫌だって悪くなる。そういう“上司”から認めてもらうにはどうしたらいいのかを考えて自分で行動したり、いいタイミングでアドバイスを聞いたり、やり方を教わったり」
杉山さん「全部仕事での上司とのやりとりですね」
堀込さん「そうなんですよ」
杉山さん「家庭の方が完全に荒波ですけどね」
堀込さん「それを乗り越えたら当然スキルアップに繋がるわけです」
杉山さん「でも、それを習得するのが難しい」
堀込さん「いやいやそんなことはないですよ。語学の習得に似ていると思います。そもそも得意不得意があるのも共通点だと思いますが、生きていくために必要なスキルの一つです、それでいて習得の仕方は様々。言ってみれば育休というのは『留学』みたいなものです」
杉山さん「育休が留学!?」
堀込さん「もちろん“家庭学習”、つまり家でこつこつと勉強して習得できればいいですが、なかなかその時間が取れない。あとは机の上で勉強しても実際に使えないと意味がないし、かなりフレキシブルな対応が求められます。しかも語学とは違ってテキストが少ないわけで、ほとんど経験がない人が習得するには、わりとまとまった時間を使って、学ぶことと実践することを繰り返せる環境が必要なんです」
杉山さん「まさに留学と同じ」
堀込さん「短期留学よりも長期で留学した方がしっかりと習得できるし、応用も利くようになる。だから育休はある程度長くとった方がいいというところがあると思います」
杉山さん「でもなかなか育休が取れない人もいますよね?」
堀込さん「よく趣味でしょっちゅう海外旅行にいくから、留学したことがなくても英語が堪能な人もいますよね。だから必ずしも育休という留学をしなくても、必要性を理解して真剣に取り組めば、家事・育児も習得できます。それに、英語の習得の時によく“小さい頃から触れる方がいい”とか“日常的に触れる機会を増やすといい”と言いますけど、これだって家事・育児と同じですよね」
杉山さん「なるほど。社会全体が育休を留学と同じ位置に考える価値観を持てば、全体的に育休の取得に前向きな流れになりそうですね。英語の習得は仕事に役立つからいいけど、家事・育児の習得は仕事に役立たない……あ、いや役立つのか!」
堀込さん「そういう考え方にたどり着けば、育休を含めて家事や育児について、企業がもっと前向きになってもおかしくないんですけどね」
杉山さん「あとは子どもを育てるようになると景色が変わりますよね。パパ友やママ友という仕事では出会わない人たちとも人脈が広がるし、病院やスーパー、児童館など行く場所も変わってきます。結果的にすごく視野が広がる感覚があります」
堀込さん「特に一つの企業に勤めていると、同じような価値観の人が集まるし、常識も狭くなるところがあります。他の企業の人たちと関わり合うことで新しい発想が生まれるという事例はたくさんありますけど、企業同士よりもさらに広い価値観に触れることはアイデアを広げるためには重要。ましてやBtoCの職業であれば、エンドユーザーの目線をいままでよりもダイレクトに感じることができるなと思います」
♪~夕焼小焼~
杉山さん「あ、5時ですね。もう帰らないと!」
堀込さん「そうですねー。夕食何作ります?」
杉山さん「あ、きのう作ったカレーがあるんですけど、今日はそれをリメイクしてチーズカレードリアにしようかなと思ってます」
堀込さん「いいですねー。カレーかぁ、うちもカレーにしようかな」
杉山さん「なんか、カレーって聞くだけで、カレー食べたくなりますよね」
堀込さん「そうなんですよ、もう口の中がカレーです(笑)。よし、カレーに決定!」
杉山さん「子どもたちの意見は聞かないんですか?」
堀込さん「ま、カレーなら文句ないでしょう!」
杉山さん「そうですね」
夕暮れとともに流れるチャイムが、二人の主夫に“定時”を知らせ、この日の会議は終了。
二人の話を聞いていたあなたも、“家事・育児は仕事に役立つ”と感じられたでしょうか?
12歳と8歳の男の子を育てる兼業主夫。長男誕生時に2年間の育休を取得。その後、妻の海外勤務を経て退職し、在宅で翻訳の仕事を始め、夫妻ともに兼業シュフの「Wシュフ家庭」を実践している。
子育て情報サイト「パパコミ」編集長、兼業主夫放送作家・株式会社ジョージ代表取締役。
妻がフルタイムで働いている共働き家庭であることもあって、2008年頃から家事・育児に軸足を置くことを決意。“兼業主夫放送作家”へ。現在も炊事や掃除など家事全般を担当し、16歳と8歳の娘を子育て中。
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