食物アレルギー予防の観点から、湿疹の治療と離乳食の進め方について
公開日:2025年3月25日

アトピー性皮膚炎や湿疹はアレルギーマーチの入り口
アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹で、アレルギーが進行する「アレルギーマーチ」の最初の段階とされています。乳児期に適切な対策をとることで、即時型食物アレルギーを含む将来のアレルギーの発症を抑えられる可能性があります。特に、乳児期にアトピーを発症すると即時型食物アレルギーを起こしやすく、早く発症するほどリスクが高いことがわかっています。
アレルギー予防の基本的な考え方
アレルギーが起こる仕組みとして、「二重抗原曝露仮説」という考え方があります。これは、皮膚からアレルゲン(アレルギーの原因物質)が体内に入り込むのを防ぎながら、食べ物として口から症状がでない量を少しずつ摂取することで、アレルギーの発症を抑えていくという考えです。この考えに基づいて、湿疹の治療と即時型食物アレルギー予防を組み合わせて進めていくことが推奨されます。
湿疹の早期治療が重要な理由
湿疹があると環境中にある食物アレルゲンが皮膚を通して入ってきます。そうすると、食物アレルギー発症につながるIgE抗体を作っていきます。かゆみが目立たなくても、皮膚を擦るような行動が見られる場合は注意が必要です。湿疹が見える部分だけでなく、見た目には正常に見える皮膚にも炎症が潜んでいます。我々の臨床試験では、アトピー性皮膚炎を発症しても、早期からしっかり治療を行い、全身の皮膚をしっかりつるつるすべすべにすると鶏卵アレルギーの発症が抑えられることを世界で初めて実証しました。湿疹ができたら、保湿剤だけでは皮膚の炎症を抑えることはできません。保湿剤だけでなく、炎症を抑える外用薬をしっかり使って、つるつるすべすべになるようにコントロールしましょう。
即時型食物アレルギーの予防を考慮した授乳と離乳食
即時型食物アレルギーを予防するには、湿疹をしっかりとコントロールしたうえで、アレルギーを起こしやすい食品(鶏卵など)を少量ずつ早めに取り入れることが推奨されます。
牛乳アレルギー予防
生後1か月から母乳に少し粉ミルクを追加すると、牛乳アレルギーの予防効果があるとされています。ただし、湿疹があるとすでに牛乳アレルギーを発症している可能性がありますので、医師の指導のもとで進める必要があります。
鶏卵アレルギー予防
生後5-6か月から少量ずつ卵白を含む加熱全卵を摂取することで、鶏卵アレルギーの発症を抑えられることがわかっています。市販の“加熱”卵パウダー(製菓用の全卵パウダーや卵白パウダーは未加熱のため、そのまま使用しないでください)を使うと安全に導入しやすく、ご家族の負担を減らすことができます。加熱卵黄から開始すると加熱卵白が遅くなりがちなので、医師が問題ないと判断した場合は、加熱卵白や加熱全卵から開始することををすすめています。当センターからの鶏卵摂取についての説明をご参照ください。
そのほかのアレルギーになりやすい食物
早めに摂取を始めることでそのほかの即時型食物アレルギーを予防できる可能性があります。湿疹がでたことがない場合は、通常の離乳食と同様に少量から始め、離乳食開始前から乳児湿疹や、アトピー性皮膚炎が出ている場合などは医師に相談して進めてください。自己判断で進めてしまうとアナフィラキシーになる可能性がありますので、医師と相談してから進めましょう。
まとめ
即時型食物アレルギーの予防には、湿疹への適切な早期治療と適切な離乳食の進め方が大切です。湿疹をコントロールしながら、アレルギーを起こしやすい食品を少しずつ摂取することで、即時型食物アレルギーを予防できる可能性があります。ただし、お子様一人ひとりの状況に合わせて、医師と相談しながら進めていきましょう。