専門医コラム 近藤康人先生

食物アレルギーと上手につきあう

公開日:2026年4月20日

食物アレルギーと上手につきあう

完全除去から「必要最小限の除去」へ──食物アレルギーの新しい考え方

食物アレルギーの食事指導は、「完全除去」から"食べられる範囲を上手に活用する"必要最小限の除去へと変わってきました。食物経口負荷試験により安全な摂取量が分かれば、その範囲の食品を日常生活に取り入れることができ、食の選択肢が広がります。
一方で、家庭で毎回アレルゲン量や加熱条件を調整することは負担が大きく、また子どもにとっては「アレルギーを起こす食品=怖いもの」という印象が残り、治療に前向きになれない場合もあります。
加工食品であれば無理なく生活に取り入れることができ、家族の負担軽減だけでなく、子どもの心理的ハードルを下げる点でも重要です。

加工食品のアレルゲン含有量早見表──家庭で"選べる"ことを支えるツール

この課題を軽減するために役立つのが「加工食品のアレルゲン含有量早見表」(以下、早見表)です。市販のパンや菓子、加工食品約120種類について、卵・乳・小麦に含まれるアレルギーの原因となるタンパク質の量を測定し、1個(1枚)ごとに9段階に分類した一覧です。2023年度だけで全国の小児アレルギー診療施設約320施設に配布しています。

早見表の使用にあたっては、食物アレルギーに精通した医師の指導のもとで行う必要があります。また、製品リニューアルによりアレルゲン量が変化する場合があるため、必ず最新版をご使用ください。

※早見表は医療機関向けの冊子であり、安全にご使用いただくため、医師の指導のもとで使用することを前提としています。ご利用を希望される場合は、主治医にご相談ください。

国内外で注目される取り組みへ──治療を前に進める力

利用者からは「加工食品なら怖がらずに食べられ、治療が進むため重宝している」という声も寄せられています。実際に、鶏卵や乳アレルギーの患者が早見表を使って適切に取り入れることで、安全に食べられる範囲が広がり、特異的IgE値が低下した(血液検査での改善)という報告を、WAO Congress 2023 など海外の学会でも発表しました。日本の一部の加工食品ではありますが、アレルゲン量を明確に示すこうした取り組みは国際的にも注目され、2025年にはオーストラリアで開催された食物アレルギー対策に関する国際シンポジウムにも招待されました。

我々の取り組みは、安全性向上に向けた新たな実践として評価され、世界でも関心がもたれています。

家族の負担を減らし、子どもの"食べる力"を育てるために

早見表を活用することで、家庭では「安全な範囲の加工食品を選ぶ」ことが可能となり、手作りにかかる時間や精神的負担を軽減できます。また、子ども自身が安心して食べられる食品を知ることで恐怖心が和らぎ、食事療法にも前向きに取り組めるようになります。加工食品の賢い活用によって無理なく必要最小限の除去が実践でき、家族全体のQOL(生活の質)の向上につながります。

早見表は、食物アレルギーと向き合うご家庭に寄り添う重要なパートナーとなるでしょう。

近藤康人先生

近藤康人先生

藤田医科大学ばんたね病院
小児科所属長

(藤田医科大学 医学部 教授)

藤田医科大学医学部卒業。小児科専門医・指導医、アレルギー専門医・指導医として診療に携わりながら、加工食品のアレルギー含有量早見表の制作に尽力。

藤田医科大学のHP