子供と過ごせる限られた時間を、どうすればより有意義なものにできるか。子供の成長に意味のある関わり方ができているか。そんなことを考えたことのある、パパも多いのではないでしょうか。一児の父であり、フォトグラファーとして活躍する猪俣慎吾さんも、そんな想いを持つ父親のひとりです。キャンプコーディネーターとしての顔も持つ猪俣さんは、息子さんと2人でキャンプに出かけ、日常とは違う自然環境の中で、父と子が同じ目線で過ごす時間を大切にしています。 本記事では、キャンプを“日常の延長線”として楽しむ猪俣さんに、この冬息子さんと訪れた福島県 桧原湖での冬キャンプのエピソードを交えながら、父子が向き合う時間を作ることや家族に対する想いについて伺いました。

ー父子キャンプを始めたきっかけを教えてください。
猪俣さん:息子を連れていく前から、十数年ほどキャンプ歴があり「いつか子供と行けたらいいな」とぼんやり思っていました。そうしたら幼馴染が3人の子供を連れてキャンプに行ってるというので、息子が1歳10カ月の時に、僕らも合流させてもらったのです。僕と幼馴染の男親2人と、子供達4人でのキャンプです。テントを設営しながら子供の面倒も見ないといけなかったので、それはもう大変でした!キャンプ歴が長くても、幼い子供を連れて行くキャンプは、これまでとまったく違います。そうしたら幼馴染が「おまえの息子、うんちしてるぞっ」て(笑)。「わかるの!?」って聞いたら「わかるよ」って。僕は、まったく気づくことができなくて、父親として色々考えさせられました。同時に、普段息子の面倒を見てくれている奥さんの偉大さも痛感しました。そんな経験を経て、息子が2歳くらいになった頃から、父子キャンプを始めたのです。
僕と息子がキャンプに行っている間は、奥さんも自分の時間をゆっくり楽しめますし、僕自身も息子としっかり向き合うことができます。家族それぞれにとって良い時間になっていて、ちょうどいいバランスだと感じています。
ーママやパパのどちらかだけがキャンプに行きたいパターンもありますよね。
猪俣さん:たしかに「旦那が出不精なんです」と、相談されたことがあります。それなら母子キャンプをすればいいと思います。別に家族みんなが揃っていなくてもいいんじゃないかな。
ーキャンプ=家族全員という思い込みがありました。
猪俣さん:うちの奥さんもキャンプには来てくれますが寒さに弱いので、冬は僕らだけテントで奥さんはキャンプ場近くの民宿やペンションに泊まったりしています。また、家族で沖縄に行った時、僕が「無人島に泊まってみたい」と提案したら息子は大喜びでしたが、奥さんは虫が苦手なので気が進まない様子でした。結局、僕と息子は無人島に泊まり、奥さんはその向かいにあるホテルで過ごしました。
ホテルのレストランがオーシャンビューだったようで、奥さんが夕食をとりながらふと無人島のほうを見たら、火がチラチラ見えたのだそうです。「この火はパパたちかな?」と、暗闇の中に小さな灯がともっている写真がLINEで僕に届きました。無人島には僕らしかいなかったので「たぶんそうだよ」と、やりとりをした思い出があります。
家族みんなはもちろんいいけど、誰かが無理をするのは僕は違うかなと感じてしまいます。
―そういえば、猪俣さんはキャンプ中でも、息子さんのゲームを禁止しないと伺いました。
猪俣さん:いろんな意見があるとは思いますが、やはりまだ小学5年生の子供なので「ゲームがやりたい」とか「YouTubeが見たい」となるんです。なので「1時間だけいいよ」と言いますね。
―パパもママも張り切ってキャンプにきてるから、ダメと言ってしまいがちですが……。
猪俣さん:そんなことを言ったら、険悪な空気になってしまいます。「ゲームができないなら、キャンプには行きたくない」とキャンプに対してネガティブなイメージを持ってしまうかもしれません。我が家の場合はキャンプ中ゲームOKだけど、その代わり徹底的にアウトドアをする時間も設けます。

―これまで多くの父子キャンプを経験されてきましたが、思い出に残る息子さんとの会話はありますか?
猪俣さん:キャンプだから話すわけではないかもしれませんが、友達のことや学校での出来事とか。「パパも子供の時にこんなことあった?」と、聞かれたことはありました。勉強でちょっと壁にぶつかった時にも、相談されたかな。キャンプは移動時間も含めて、すごく長い時間一緒にいるので、必然的に会話の時間は増えます。
ーおのずと心の距離も近くなりますね。
猪俣さん:そうだと思います。キャンプから自宅に帰ると、「次はどこに行こうか?」と、また新しい会話が生まれます。
―今回の父子キャンプでは福島県の桧原湖を訪れていましたが、どうでしたか?
猪俣さん:桧原湖は豪雪地帯なのですが、大寒波のせいか雪がサラサラで軽すぎて、テントのペグが全然刺さらなくて大変でした(笑)!
ただ、天候さえ良ければ冬のキャンプも困難ではありません。昨今のキャンプブームもあり、最近は冬でもキャンプをされる方が増えています。地域によっては初心者向けの雪中キャンプ場もありますよ。冬は空気が澄んでいるので景色がすごくきれいですし、虫も少ないため、虫が苦手な方でも過ごしやすいと思います。また冬は食材が傷みにくいので、管理の不安が少ない点もメリットです。
―キャンプに興味はあるけど、まだ試したことのない初心者の方は、どうやって始めるのがいいでしょう?
猪俣さん:キャンプは道具を揃えるのも大変だし、レンタルもお金がかかります。だから最初はバンガローやコテージから始めるのがおすすめです。コテージの庭では焚き火ができたりしますし、雪が降ってたら雪遊びもできて冬ならではのアクティビティも楽しめます。
また、いきなり遠出ではなく片道1時間程度でいける近場を選ぶこともポイントです。例えば、東京の方なら千葉や埼玉など。まずは始めてみることが大切だと思います。

ー行き先はどのように決めていらっしゃいますか?
猪俣さん:息子と一緒にお風呂に入る時、目的地の希望を聞いて決めてます。彼が5歳ぐらいの時、「ロケットが見たい」と言いました。ロケットといえば、鹿児島県の種子島ですよね。そうしたら、飛行機で行くしかないなと。車で行けないような行き先の場合は、持ち物も厳選しないといけませんが、こういう道具選びをする面白さは、息子が気づかせてくれました。
キャンプがゴールではなく、別に目的を持つ楽しみ方は、2人にとって良かったと思います。
―キャンプは宿泊ツールということですね。
猪俣さん:そうです。アウトドア業界の方ともよく話しますが、キャンプの入口が「道具」から始まることは多いと思います。たとえば、「テントを買ったからキャンプに行こう」といったように。もちろんそれ自体は悪いことではないのですが、動機としては、お父さんの物欲を満たすことが目的になってしまっている気がします。
あくまで目的は、家族が楽しく過ごすこと。だからキャンプは目的ではなく「宿泊手段」という位置付けでいいのではないかと思います。
ーキャンプを宿泊手段と考えると、急に身近に感じますね。昨年、父子キャンプで47都道府県すべてを制覇されたと伺いましたが、これは息子さんとキャンプを始めた当初からの目標だったのでしょうか?
猪俣さん:途中からです。気がついたら全県制覇できそうだなと。足掛け7年ぐらいかかりましたけど、200カ所以上のキャンプ場に行きました。
ー現在は国外のキャンプ場にも行かれてますね。
猪俣さん:僕は海外キャンプの普及をしているので、地球丸ごとキャンプ場くらいに思っています(笑)。たまに「タイや韓国に、キャンプ場があるんですか?」と聞かれますが、どこにでもあります。楽しみ方は日本のキャンプでやっていることと、変わりません。飛行機に乗り現地まで行き、レンタカーを借りて、スーパーに寄って、食材を買い、観光して、キャンプ場で寝泊まりをする。実は、キャンプした方が圧倒的に安いので、経済的にもお得でおすすめです。

―桧原湖のキャンプではカレーを作られていましたね。お肉を別焼きにして、こんな食べ方もキャンプならではですね。
猪俣さん:カレーの具材はじゃがいもと人参と玉ねぎだけにして、肉はイタリアンハーブをまとわせて焚き火で別焼きしました。自宅カレーとは少し違う食べ方もちょっとした非日常ですよね。カレーは失敗しにくいですし、キャンプ場でもルウが売ってて、調達しやすいです。うちの息子はうどんが好きなのでカレーうどんにしたり、アレンジしやすい点も魅力ですね。
―買い出しは事前にされますか?また、献立はいつ決めますか?
猪俣さん:買い出しは、大体キャンプ場に向かう途中のスーパーです。献立もスーパーで考えます。向かう場所によっては、その土地ならではの野菜や名産品に出会えるので、そういう食材は積極的に選んでいますし、道の駅に寄ったりもします。

―買い出しから楽しそうですね!炙ったマシュマロ入りのココアを飲まれていましたが、他にも焚き火で簡単に作れるものはありますか?
猪俣さん:ポテトチップスを焚き火で温めると、揚げたてのように美味しいですよ!また柑橘系の果物は温めると甘みが増すので、冬なら焼きみかんがいいですね。焼きリンゴもアルミホイルの中に、バターとシナモンを入れるだけ。皮を剥く手間も不要で、誰でも簡単に美味しく作れます。
先日、息子の友達も一緒にキャンプに行った時は、じゃがバターを作りました。子供はじゃがいもが好きですね。手軽なのに大好評でした。

―キャンプを始めてから父子の関係に変化はありましたか?
猪俣さん:僕たち親子の関係性は、すごく密だと思います。父子キャンプのスタートが息子が2歳の時なので、キャンプ前の息子と比べることは難しいのですが、順調にいい関係が築けていると思います。僕が思うに、大切なのは一緒にいる時間かなと。父子キャンプはずっと2人なので、向き合わざるを得ないですから。特別なことはしなくても、そういう時間が僕たち親子の繋がりを強くしてくれていると感じます。
ー父子キャンプを重ねる中で、息子さんの成長を感じた瞬間はありますか?
猪俣さん:体力面はもちろんですが、忍耐力の強さや精神面での成長はとても感じています。最近は息子と登山をしているのですが、昨年キリマンジャロに登りました。マイナス10℃の寒さの中、何日もかけて登る過酷な状況です。標高5,200メートルに差し掛かった時、息子の体調に異変が表れました。引き返すか、登り続けるか、息子に判断を委ねました。そうしたら「頂上まで登る」と言ったのです。その決意が半ば諦めかけていた僕の心を鼓舞してくれました。そしてその後、僕らは無事登頂することができました。弱音を吐かずに、よく頑張ったと思います。息子のおかげで、本当にいい思い出ができました。
―ピンチの状況で息子さん自身に判断を委ねたところに、猪俣さんと息子さんの向き合い方の本質を感じました。ちなみに普段、良好な家族関係を築くために猪俣さんが意識していることはありますか。
猪俣さん:家族全員が揃う時間を作ることかな。特に、朝食や夕飯はなるべく家族3人揃って食卓を囲めるように意識しています。キャンプも今は息子と2人が多いですが、奥さんも一緒に3人で行くこともあります。家族が揃う時間を作っていれば、すれ違いは防げるんじゃないかな。
―最後に、猪俣さんにとって父子キャンプとはなんですか?
猪俣さん:単純に、僕が楽しいんです。息子といろんな場所に行けることが幸せで、思い出が増えることが嬉しいです。それで息子が大人になった時、「そういえばパパとこんなことしたっけ」とか思い出してくれたら、最高じゃないですかね。

猪俣さんの言葉で特に印象に残ったのは、「こうあるべき」と決めすぎない柔軟さでした。大切なのは、体験そのものではなく、一緒にいる時間。キャンプを特別なイベントにするのではなく、宿泊手段として捉え、無理せず心地よく過ごせる形を選ぶことが、親子の対話や信頼を育んでいくのだと感じました。
遠くへ行く必要も、完璧な準備もいりません。行き先を決め、同じ景色を見て、同じ時間を過ごすこと。その積み重ねが、いつか振り返ったとき、かけがえのない記憶として残っているはずです。次の休日は、そんな時間をつくる旅に出かけてみませんか。
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