
日本人の国民食であるカレーに、新しい風を吹き込もうとしている人物がいます。それがハウスギャバンの加工営業部に所属する田中隆暁さん。
もともとラーメン業界では有名人だった田中さんが、その知見と人脈、さらにはハウス食品の技術力を最大限に活かした「ラーカレ」という新しい食文化を生み出そうとしています。
その独創的な発想の原点から、外食業界に革命を起こそうとする行動力の源まで、ざっくばらんに語っていただきました。

ハウスギャバン株式会社 田中 隆暁(たなか たかあき)
2020年株式会社ギャバン(現・ハウスギャバン株式会社)入社。大学卒業後、広告代理店に勤務し、地方紙(フリーペーパー)の制作に携わる。その後、株式会社ラーメンデータバンクや香辛料メーカーを経て、現在はハウスギャバンの加工営業部で香辛料の営業を担当している。一番好きな食べ物は「ラーメン。愚問ですね!」と即答するくらいのラーメン通。多いときは月に50軒、現在までに2000軒は食べ歩いている。
――ラーメン業界に長年携わり、ラーメンに精通している田中さん。その異色の経歴から、社内では"ラーさん"と呼ばれているのだとか?
田中:入社してすぐについたあだ名が「ラーメン田中さん」。今や略されて「ラーさん」ですね。これまで様々な形でラーメン業界に関わってきました。特に経験として大きかったのは、株式会社ラーメンデータバンクで8年ほど働いたことです。私の師でもあるラーメン評論家・大崎裕史さんが作った「ラーメンに関わる総合情報企業」です。そこでラーメン専門情報誌の発行や「ラーメン婚活」などのイベント企画、食品メーカー様とラーメン店のつなぎ役などをしていました。当時はひと月に50軒くらいラーメンを食べ歩いていたので、トータル2000軒以上は確実に実食したと思います。多いときはテレビ番組の企画で、2週間で54種類のラーメンを審査するというミッションの中で10時間かけて、1日に13杯食べたこともありました。
――実食したのは2000軒以上とのことですが、それだけ食べ歩くと、ラーメン店の皆さんとのつながりが深くなりそうですね。
田中:私にとってラーメン店の皆さんは「仕事相手」というよりは、友人でもあり敬意を払う相手でもあり、戦友という感覚に近いでしょうか。今、全国にはラーメン店が約8万軒あると言われています(諸説あり)。特に東京は激戦区として知られていて、全国の約1割にあたる、約8000軒がひしめき合っています。しかも月に50軒が新店舗としてオープンして、同時に50軒が閉店していくという過酷すぎる世界なんです。仲の良い店主が突然音信不通になり、居所を見つけるまで仲間総出で捜したこともありました。そんな大変な世界で日々必死に闘っているラーメン店の仲間のために「何か自分にできることはないか」という気持ちが自然と湧いてきて、ラーメンデータバンク時代に得てきた知識や経験を活かして第三者目線でアドバイスをしたりしていました。
例えば、集客に困っていたとして「ターゲットは誰か」「お客さんになるのはどんな人か」という点で、解像度を上げていく必要がありますよね。「誰に、いつ頃、いくら、どういう感じで今自分のラーメンが売れているのか?」という現状の分析から、お話を聞いたりします。繁盛するラーメン店を作るには鶏ガラ、豚ガラのほかに、「2つのガラ(柄)」が必要だというのが持論です。一つは「土地柄」。その地域に合わせた戦略や店づくり、味づくりのことです。例えばファミリー層のエリアでは小さな子どもも入りやすい雰囲気に、忙しいサラリーマンが多いビジネス街では、回転率を重視する…など、土地を分析する必要があります。そして、もう一つは「人柄」です。おいしいラーメンを作るだけではなく、店主やスタッフの心や接客、店の雰囲気なども相まって、総合的なおいしさと満足度につながると思っています。
――そんな田中さんがどういった経緯でハウスギャバンへ?
田中:株式会社ラーメンデータバンクの後は、コンサルティング企業を経て香辛料のメーカーに入りました。そこで3年半、スパイスについて本格的に学び、ご縁があって、2020年から「GABAN®」を取り扱う株式会社ギャバン(現:ハウスギャバン株式会社)にお世話になっています。今は加工営業部に所属していて、調味料メーカーさんなどにスパイスを提案する仕事をメインにしながら、相変わらずラーメンにも関わっていますので、振り返ってみると、"ラーメンに身を捧げる"不思議な人生をずっと歩んでいますね。
――ラーメン愛がさらに加速して、ハウスギャバンで「ラーカレ」というプロジェクトを立ち上げたとお聞きしました。それは一体どんなものでしょうか?
田中:文字通りラーメンとカレーを掛け合わせた造語で、ラーメン店のおいしいスープを活かして"オリジナルカレー"を作って集客要素にできないかというプロジェクトが「ラーカレ」です。ハウスギャバンの支援のもと、各ラーメン店"唯一無二のカレー"を作ってもらい、それを応援していこうという試みです。
――ラーメン店で、カレーを食べる!そんな斬新なアイデアはどうやって考えられたのでしょうか?
田中:発想のきっかけはシンプルです。今の世の中、食べる人の「1食の価値」って多様化していて、ただおいしいだけではなかなか来てもらえないし、「おいしい」は結果論のため集客要素にならない。ならば「ラーメン店がお店のスープで作った本格的なオリジナルカレーがあったとしたら…。これまでにない食体験になるじゃないか!」と思ったんです。もしも、博多豚骨の人気店にカレーがあったらどうだろう?激辛ラーメンの人気店に激辛カレーライスがあったらハマるだろうか?鳥取牛骨ラーメンのカレーライスは…?にんにく野菜マシマシのカレーライスなど。「あのラーメン店のスープで作る本気のカレーはどんなものだろう?」という期待感を持てるものになるなと思いました。しかもカレーになれば、テイクアウトニーズにもぴったりな商品にもなります。余ってしまうスープが使えるなら食材の有効利用にもつながりますよね。お客様は新しい食体験ができ、お店は食材を余さず使い切るというサステナブルな側面と、集客を両立できる。そして私たちハウス食品グループも業界に貢献できる。一石二鳥どころか、一石三鳥です。そんな裏定番メニューになり得ると感じたのです。
――たしかに良いことずくめですね。それなのに、どうしてこれまでなかったのでしょうか。
田中:昔からラーメンスープを活用したカレーを提供しているラーメン店や町中華はありますが、実際にはそこまで注目はされず、サイドメニューでしかなかったように思います。しかも、作る課題としてもカレーを作ろうとすると鍋やレンゲがカレーの油分で黄ばんで汚れるわ、店内にカレーの匂いが充満するわ…なかなか「カレーを提供しよう」という気持ちにならなかったように思います。それに人手不足の昨今、カレーを一から仕込む時間なんてありません。
――ラーメン店がカレーを作るって、そんなに困難な状況なのですね…。それが今回実現したのは、何があったからでしょうか?
田中:ハウスギャバンのカレー開発部門の同僚に「ラーメンスープに溶かすだけですぐカレーになるような"濃縮ベース"ってできないですか?」と何気なく相談してみたところ「できますよ」と即答。これには驚きましたね。しかもその初回サンプルが2週間程度であっという間にできあがって、ハウス食品グループの開発技術力を感じました。
――「2週間でサンプルができる」というのは、業界的に早いものですか?
田中:そうですね、相当早いと思います。しかもその濃縮ベースというのは、ただお湯に溶かしただけでも十分おいしいカレーソースだったんです。「これをおいしいラーメンスープに溶かしたら、絶対にもっとおいしくなる!」と思い、すぐにラーメン店の仲間のLINEグループで「スープだけを少し売ってくださる方いませんか?」とお願いしたんです。カエシ(タレ)も入ってないスープだけを欲しがる人間なんて普通はいませんが、私のラーメン偏愛を知っている仲間たちなので、すぐに8種類のスープを集めることができました。そうして集まったラーメン店のスープで溶かしてみたら、これがまたおいしい!むしろこれまでのカレーとは別次元のおいしさのカレーソースができあがりました。そのカレーを持ってハウスギャバン社内で社員・経営陣向けの「ラーカレ試食会」を開催しました。
――経営陣も含めて皆さんに食べてもらうのは緊張しますね!ラーカレへの反応はいかがでしたか?
田中:正直皆さん「スープが変わっても、カレーの味に大きな変化はないだろう」と捉えていたと思います。それでも、ひと口食べたら、皆さん大絶賛。鶏白湯、濃厚豚骨、煮干し、醤油系など多種類の本格的な「ラーカレ」に、「カレーソースを溶かすスープが違うだけで、味がこんなに変わるの!?」と大盛り上がり。味が濃いめの横浜家系タイプが好きな人もいたり濃厚な鶏白湯とアゴ出汁をあわせたタイプが好きな人もいたり…と、おもしろいほど趣向が分かれました。皆さんに実際に食べてみてもらって「スープによって、これだけ味わいに差が生まれるなら企画として面白い、やってみよう!」と満場一致でラーカレにGOサインをいただけたんです。
――まるでドラマを見ているような展開ですね!
田中:それもこれも、ハウス食品グループの、これまで培ってきた技術力と、新しいチャレンジを前向きに応援する風土があるからこそ。それに「ラーカレ」は、おいしいのはもちろん、お店側にもメリットをもたらします。と言うのも、この濃縮ベースとお店のラーメンスープを1:1で混ぜれば、わずか数分でカレーソースができあがりますから仕込みの時間も要らないですし、アルバイトさんでも簡単に作ることができます。その後、某ラーメンチェーン店様と個人店の仲間の双方に、テスト販売にご協力いただいたところ、カレーの注文率が20%程度とかなり良い数字を得られました。個人的に長年築いてきたラーメン人脈と、ハウスの技術力がカチッと噛み合った瞬間でしたね。不遜な言い方かもしれませんが、「これならラーメン業界に貢献できるかもしれない」と本気で信じています。
――「ラーカレ」を成功させるためには、情熱と技術のどちらも欠かせないですよね。
田中:そうですね。ラーメンに対する情熱があっても、技術がないと始まりません。今回のように、濃縮ベースサンプルを2週間で作ってしまうー、そんな専門領域で確かな強みとなる技術力をハウス食品グループはたくさん持っています。千葉県の四街道市にハウス食品の開発研究所があるのですが、そこはある意味、"ひらめき研究所"ですね。「こんなことができたら、飲食の市場が変わる」という、ワクワクする技術がたくさんあるんです。グループの垣根を越えてハウス食品の培ってきた技術にもアクセスできるようになったからこそ、様々な取り組みが実現しています。「ラーカレ」は、まさしくそういったグループ横断プロジェクトの代表選手だと思います。「ラーカレ」はハウスギャバン単体では成し得なかったことですから。グループ全体の優れた技術を活かして、いかに最終消費者であるお客様にとっての価値ある体験につなげられるか。それこそ、私たちハウス食品グループの社員がめざすべきところだと思っています。
――ハウスギャバンとハウス食品という、グループ会社が連携した横断プロジェクトなのですね。
田中:そうなんです。ハウスギャバンとハウス食品が連携することで、業務用として開発した「●●店監修ラーカレ」をご家庭用の製品として展開していく道も開けてきます。新しいことをおもしろがってくれる土壌がハウス食品グループにはあるので、ラーメン店の自慢のスープを使った「ラーカレ」を、業務用にとどまらず、もっと多くの食卓に届けていけたらと思っています。
2026年4月28日、ハウスギャバン本社にて「ラーカレ」の記者発表が盛大に行われました。たくさんの取材陣が集まるなか、ハウスギャバン生駒晴司社長や田中さん、「ラーカレ」に賛同する人気ラーメン店の店主6名が登壇。記者発表後に実施された試食会は、各店の個性豊かな「ラーカレ」のおいしさが伝わり大盛況となりました。
記者発表直後に、「ラーカレ」賛同メンバーの一人でもある「飯田商店」の店主・飯田将太さんに、「ラーカレ」に対しての思いを語っていただきました。飯田さんが営む神奈川県湯河原町の「飯田商店」は、予約が取れない全国屈指の実力派の名店として知られます。
飯田さんが「ラーカレ」というムーブメントに賛同したのはなぜか。ラーメンとカレー、2つの国民食が出会ったとき、何が生まれるのか。そしてスパイスとラーメンの化学反応はどのようなものか、お話を伺いました。

飯田商店 飯田 将太(いいだ しょうた)
「ガキ大将ラーメン湯河原店」の店主を経て、2010年に「飯田商店」をオープン。ラーメン業界で権威のある「TRYラーメン大賞」で4連覇を達成し殿堂入りを果たしている。生産者さんへの敬意を持って小麦や素材を選び、化学調味料不使用、自家製麺はメニューに合わせて製法を変えるなど、徹底したこだわりを持っている。
――田中さんから初めて「ラーカレ」の話を聞いたとき、どんな印象を持たれましたか?
飯田:すごくおもしろい試みだな、と思いました。ラーメンとカレーってどちらも日本の国民食ですし、"丼一発勝負"という潔い提供スタイルも共通していますよね。その2つがたくさんのラーメン店で融合していけば、おもしろい未来になりそうだなと感じました。皆さんのまわりにカレーが嫌いな人ってほとんど見かけないのではないでしょうか?ラーメンは好みが分かれるかもしれないけれど、カレーという国民食はそれくらい強い食事だと思います。だからこそ、ラーメンとカレーはすごくいい組み合わせだなと。
それと、もともとラーカレのお話をいただく前から、「飯田商店」ではオリジナルカレーとして『飯田のカレー』を開発・提供してきました。ですから、カレーに対しては人並み以上に愛着を持っていることもあり、もっとラーメン業界を盛り上げられるなら何かご協力できるかなと思って、「ラーカレ」プロジェクト立ち上げに参画させていただきました。ハウスギャバン田中さんの"新しいことにチャレンジしよう"という気概にも、共感したんです。
――もともと飯田商店さんでも「ラーメン×カレー」を始められていたんですね!
飯田:そうなんです、私自身そもそもカレーが大好きですから。それに、スパイスをもっと深く勉強したいとずっと考えていたんです。だから「ラーカレ」の話を聞いたとき、自分にとってもいい機会になると感じました。私のお店では担々麺も出していて、作る過程でスパイスに対していろいろな工夫を重ねてきました。山椒や唐辛子など、種類を変えただけで風味が全く別物に変わるし、粒状のホールスパイスの砕き方ひとつでもラーメンの表情が変わるんです。荒く砕いたり、細かく砕いたり。スパイスって探求し始めると止まらなくなる奥深さがあるんです。つい最近、プライベートで花山椒とホタルイカの鍋を作ったのですが、花山椒のスパイス感がもうとんでもなくおいしくて…ちょっと脳内がトリップしたようでした(笑)。そんな心をつかんで離さないようなところもスパイスの魅力ですよね。
ラーメンのパターンは、すでに出尽くしたと言われることもありますよね。豚骨、鶏、醤油、塩、味噌、辛味、つけ麺…と。そんな状況でもスパイスは、ラーメンの新たな世界を作り出してくれるポテンシャルを持っています。同じ鶏でも豚骨でも、スパイスをひとつ加えるだけで一気に多様性が広がるんです。ですから「スパイスを深掘りする」という観点からも、ラーメン店がカレーに取り組む「ラーカレ」は、大きな可能性を秘めていると感じます。
――「ラーカレ」はラーメン店にとっても、大きな進歩につながるわけですね。
飯田:味のクオリティが上がるだけではなく、SDGsの観点でも時代に合った取り組みだと思います。と言うのも、各店舗の「二番出汁」を活用できるからです。豚骨や鶏ガラから一番出汁を取ったあとの素材には、まだたくさんの旨みが残っています。それをスープにしたものが「二番出汁」で、一番出汁とはまた異なる旨みが出てきます。それをカレーに活かせば、食材も有効活用できてサステナブルですし、何よりカレーとして非常においしい!
余談ですが、以前スペインのシェフによるイカの料理を食べたときにも近いことがありました。今までなら高級レストランでは使わないであろうイカの「ゲソ」までコース料理のなかに出てきたんです。一瞬、「え!」と驚きましたが、それが時代のトレンドや料理の思想だと思いますし、何よりとってもおいしかったんです。
話をラーカレに戻しますと、皆さんがふだん食べているラーメンのスープって、実は想像以上にお金がかかっています。麺だけでもおいしいのですが、やはりあの旨みをまとった濃厚な液体があって初めてラーメンという料理は成立する。最近は、別業態のトップ料理人の方からも「ラーメンってすごいよね」と言われます。あれだけコストをかけて、あの価格で出しているなんてって。ですから二番出汁のような食材を全部活かすことで付加価値を生み出せる「ラーカレ」は、そんな時代の流れとも連動していると思っています。
――これから田中さんやハウスギャバンへ期待するとしたら、どんなことでしょうか?
飯田:ぜひもっと、ラーメン店の新商品につながるスパイスの提案をしてほしいですね。このスパイスを加えると、こういう方向性の味になる、という指針をたくさん示してもらえると、開発の現場としてはすごく助かる。そうすることでラーメン文化全体が豊かになるでしょうし、同時にスパイスは漢方の役割も果たしますので、健康的な側面も広められます。日本にスパイス文化が根付くのはこれからだと思いますので、その扉を開ける役割を田中さんたちハウスギャバンさんに担ってほしいと期待しています。
それと、ラーメンというのは型がないので、自由に、無限に作ることができます。「ラーカレ」プロジェクトもまだ始まったばかりですから、ラーメン同様、型がない分、可能性は無限にあります。まだ誰も食べたことのないものが、これから生まれてくる。そう思うとワクワクしますよね!
ラーカレはすでにその兆しが見えていて、記者会見で提供された6店舗の「ラーカレ」は、どれもまったく表情が違うんですよ。ラーメンも「ラーカレ」も自由ですから、ある日突然変異的にとんでもないものが生まれる可能性があるんです。想像するだけで楽しみですね。
さらに、田中さんと20年来の盟友で、田中さんが「困ったときは、まずクリエイター気質の柳さんに相談する」と語るほど厚い信頼を寄せる、「麺屋宗」の店主・柳宗紀さんにもお話を伺うため、高田馬場の「麺屋宗」を訪ねました。
「麺屋宗」の柳さんのインタビューはnoteにてご紹介しています!
【note】"好き"が突き抜けた先に、「ラーカレ」は生まれた
――現在はスパイス・ラーメン・カレーの三本柱だと思いますが、普段どんな生活で、どんな仕事習慣をお持ちなのでしょうか?
田中:やっていることは昔も今も変わらなくて、暇さえあればラーメンを食べ歩いています。最近はそこにカレーも加わりました。東京には約8000軒のラーメン店があって、10年経つと6000軒が入れ替わるんですね。つまり10年経っても残り続けるのは2000軒。その間に新店舗ができて…もう食べ歩きも終わりがない。でも楽しいです。そうやって食べ歩きしながら、ラーメン業界や飲食業界全体を俯瞰するのが習慣ですね。最近は大手の牛丼チェーンさんがラーメンのセット商品を始めたりしているので、大きな流れやトレンドを見逃さずキャッチアップすることを、日頃から意識しています。
――田中さんのアイデンティティや、働く上で大事にしていることを教えてください。
田中: アイデンティティとまで言えるかわかりませんが、「おいしければ売れる」という思い込みを打破したい、という気持ちは今も変わりません。どんなに良いものを作っても、それを届けなければ意味がない。世の中で流行っているものをちゃんと見て、消費者目線で分析し、次の仕事に活かしていく。それが自分のポリシーですね。そのために大事にしているのが、自分で自腹を切って食べてみるということです。財布からお金を出すときは、誰もが「イチ消費者」ですから、実際に支払ってみないとコストパフォーマンスも含めて本当のところは見えてこない。マーケティングリサーチも必要ですが、それだけでは分からない感覚を、自分の体験として持っておきたいんです。味以外になぜ売れているのか、なぜ流行っているのか、食と店に対する敬意と興味を、これからも持ち続けたいと思っています。
日本はこれから人口が減少し、食べる人そのものが減っていきます。外食産業にも家庭用飲食産業にも、大きな影響がある。だからこそ、ラーメンとカレーという日本の2大国民食をどう守り、どう育てていくか。新しい価値を見つけて仕掛け続けることが、自分にできることであり、やり続けなければいけないことだと思っています。「また食べたい」と思ってもらえる感動的な体験や付加価値を作るには、まず自分が感動しないと始まりませんから。
――最後に、これから個人として挑戦したいことは?
田中:まずは「ラーカレ」を広めることに全力を注いでいきたいですね。今はまだネットで検索しても「ラーカレ(Racale)」というイタリアの都市名が上位に出てきてしまうので(笑)。カレーの外食文化が盛り上がれば、家庭用にも必ずその波がやってきて、カレー業界全体が盛り上がると思います。ラーメン店のお客さんが「あのラーメン店のスープでラーカレを作ってほしい」なんてハウスギャバンに問い合わせしてくれたら、最高ですね。
約20年かけて歩んできた"ラーメンの道"が今、"カレーの道"と合流して「ラーカレ」という新たな章へと突入しています。
田中さんのラーメン業界との人脈力。ハウス食品グループが長年培ってきた技術力やブランドが持つ信頼力、そしてチャレンジ精神。「ラーカレ」が実現するまで、どれもが欠かせないものだったと言えるでしょう。ラーメンとカレー、日本の2大国民食を掛け合わせた、この壮大で"おいしそうな"プロジェクトの今後の動向に、ぜひご注目ください!
【note】"好き"が突き抜けた先に、「ラーカレ」は生まれた
取材日:2026年4月
内容、所属等は取材時のものです
▶ラーカレ®
▶ハウスギャバン
文:三宅隆史
写真:木村雅章
編集:株式会社アーク・コミュニケーションズ
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