研究職からスタートアップへ!"小さな骨折"を恐れない、しなやかな挑戦の形

研究職からスタートアップへ!"小さな骨折"を恐れない、しなやかな挑戦の形

ハウスウェルネスフーズで研究開発職として7年のキャリアを持つ不破有沙さんが志願したのは、「いまの自分からいちばん遠い場所」への挑戦でした。CVCチャレンジ制度(※)を利用して飛び込んだのは、デジタル起点で食のビジネスを展開するスタートアップ企業。

そこで彼女を待っていたのは、「動きながら次のことを考える。トライ&エラーを繰り返し、スピード感をもって前進する」という環境でした。戸惑いながらも、営業やオペレーションといった未知の現場を駆け抜けた1年間。彼女を支えたのは、日本舞踊やテコンドーで培った「何度転んでも立ち上がる」しなやかな強さでした。

確かな芯を持ちながらも、変化や他者を受け入れる柔らかな余白を持つ彼女の挑戦の軌跡と、そこから見えてきた新しいキャリアの景色をたどります。

※CVCチャンレジ制度とは

ハウス食品グループが行っている、CVCからの出資先であるベンチャー企業へ1年間出向し、新しい視野・視座の獲得やスピード感を持ちチャレンジを繰り返す経験を積む制度のこと。ベンチャー(スタートアップ)企業での実務経験を通じ、経営・イノベーション・変革といったテーマを推進する人材への成長を支援している。

ハウスウェルネスフーズ株式会社 不破 有沙(ふわ ありさ)

ハウスウェルネスフーズ株式会社 不破 有沙(ふわ ありさ)

2017年ハウスウェルネスフーズ入社。
伊丹本社の研究部にてウコンの生理機能研究に、素材開発部で乳酸菌の素材開発や分析、お客様対応、営業サポートなどに従事したのち、入社8年目となる2024年にCVCチャレンジ制度に応募。「FOODCODE」に1年間出向し、営業職やオペレーションを経験した。2025年春よりハウスウェルネスフーズに帰任し、現在はバリューチェーン戦略部に所属。大学生のときに始めたテコンドーでは、段位別の全日本大会での優勝経験、世界大会への出場経験を持つ。

これまでの自分から"いちばん遠い場所"へ

これまでの自分から"いちばん遠い場所"へ

――まずは、不破さんの経歴について教えてください。
不破:学生時代は食品化学研究室で食物アレルギーの研究をしていて、卒業後は食品開発に携わりたいと思っていました。というのも、私はとても食いしん坊で、食品化学研究室を専攻したのも、食に携わりたい!という気持ちからだったんです。就職活動で食品メーカーを広く見ていくなかでハウスウェルネスフーズとご縁があり、開発だけでなくいろいろなことに挑戦したいとお伝えした結果、最初の配属は研究部になりました。
研究部ではウコンエキスの生理機能研究に3年ほど携わり、4年目に素材開発部に異動になりました。素材開発部は、当時、機能性素材系バリューチェーンの戦略素材である乳酸菌L-137とウコンエキスの素材面での開発をめざして新設された部署です。私は乳酸菌L-137の素材開発にあたり、分析をはじめ、日本や各国の制度に則した届出や販売のサポートまで、社内の関連部署だけでなく、お客様となる企業の方々とも連携して幅広い業務にあたりました。

――そして入社8年目に、「CVCチャレンジ制度」に応募されたと伺っています。これはどのような制度でしょうか。
不破:ハウス食品グループでは、社員の成長を支援する「公募チャレンジ」という制度があります。たとえば海外現地法人へ出向してグローバルビジネスの体感・修得をめざす「海外現法チャレンジ」、新規事業の立ち上げに主体的に参画する「新規事業チャレンジ」などがあり、各自が挑戦してみたいものに手を挙げられる仕組みです。
「CVCチャレンジ」はそのうちの一つで、ハウス食品グループ本社が出資しているベンチャー(スタートアップ)企業に1年間出向するという取り組みです。CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)によってつながりを持った企業での就労経験を通じ、経営・イノベーション・変革といったテーマの推進力を養うプログラムになっています。

――数ある公募チャレンジ制度の中で、CVCチャレンジを選んだのはなぜですか?
不破:CVCチャレンジを利用して出向するかどうかも迷ったなかで、実際に出向している方や、過去にこの制度を利用した方にお話を伺ったりしました。海外現法チャレンジや新規事業チャレンジなども検討したのですが、求められる技量やポジションがある程度決まっていたことや、せっかくだから社外に出てみたいという思いもあってCVCチャレンジを選びました。いくつか出向先の候補がある中で、よりスタートアップ色が濃いFOODCODEにエントリーしました。

――FOODCODEの事業内容にも魅力を感じられたのでしょうか?
不破:FOODCODEの基幹事業は、モバイルアプリでしか買えないカレー屋「TOKYO MIX CURRY」の運営です。カレーの生産から提供、注文アプリを始めとした飲食店の運営に必要なシステムプラットフォームの開発、マーケティング、CRMまでを一貫して行っています。私がいちばん魅力に感じたのは「食×IT」、いわゆるフードテックと言われる分野の企業であることでした。世の中では 「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が話題ですが、結局のところそれで何ができるのか、新しいビジネスを生み出すとはどういうことなのかという点にも、興味がありました。トラディショナルな日本企業においては、もともと"アナログ"な仕事があって、そのうちの一部を"デジタル"に置き換えるというのが、DXの一つの在り方だと思うのですが、FOODCODEでは、まず基幹に"デジタル"があって、それが活きるようにほかを配置していくんです。すべてが一つのところに集まってくるので、データ活用も非常にしやすい。人間に合わせてデジタルを配置するのではなく、デジタルに合わせて人間を配置していくような発想ですね。

これまでの自分から"いちばん遠い場所"へ

FOODCODEが提供している「TMCチキンカリー」

――会社の規模や環境の違いに困惑されたこともありましたか?
不破:私が出向した時点で、FOODCODEは創業5年目、社員は10名ほどでした。スタートアップならではの仕事の進め方や向き合い方については、出向して初めて実感をもって理解できた部分が多かったのですが、ハウスウェルネスフーズでは当たり前だったことが当たり前じゃないんだ、という気づきが多くの場面でありました。インフラや制度もそうですし、総務や財務など細分化された組織体制はありませんが、その分、一人ひとりが複数の役割を担い、必要に応じて柔軟に動いている。それぞれが自分の担当領域を越えて会社全体を見ながら動いていることで、組織としてしっかり機能していることに、強い印象を受けました。

――入社8年目というと、一般にポジションが確立されてくるタイミングかと思います。それをいったん手放すことへの不安はありませんでしたか?
不破:そうですね。技術系の仕事は、経験を重ねれば重ねるほどよしとされる世界ですから、当時携わっていた仕事をそのまま続けることも、もちろん考えました。ただ、会社にとっても自分にとっても、いったん社外に出てみることがすごく大事なんじゃないかと思ったんです。それと、未知の環境に飛び込むような大きなチャレンジができるのは、自分を取り巻く生活環境に大きな制約のない今だけだと考えたことも、決断の理由の一つでした。

――不破さんご自身が、今回のCVCチャレンジでいちばん得たかったものはどのようなことでしょうか?
不破:自分自身の経験や知識のアップデートということももちろんあるのですが、いちばんは「ビジネス」への理解を深めたい、という気持ちでした。素材開発部では、営業サポートとしてお客様とお話しする機会も多かったのですが、もっと根本的に、「自分の仕事が何のためにあるのか」ということや、売上・コスト・利益の仕組み、顧客・市場・競合の視点といった事業全体の構造を理解したいと思っていて。あとは、ハウスウェルネスフーズという会社が、ハウス食品との人材交流はあるものの、当時は人事異動も活発ではなく、良くも悪くも安定しているように見えていました。そこに、社外を見てきた経験のある人間がいてもいいんじゃないか、と思ったんです。

――「研究」「技術」というミクロの世界から、「営業」という市場や顧客、数字がダイナミックに動くマクロな世界に挑戦され、環境としても、大企業のグループ会社からスタートアップ企業へ、というのは"いちばん遠いところ"への挑戦でしたね。
不破:はい、まさに正反対の環境だったと思います。FOODCODEでは、前半は事業開発チームで営業を、後半はオペレーション業務を担当しました。営業を担当していたときは、企業への飛び込み営業や、電動自転車での配送など、これまでの研究職では経験したことのない業務ばかりで、正直なところ最初は戸惑いの連続でした。扱うテーマも求められるスピード感も、開発研究所での仕事とはまさに180度違っていたと思います。ただ、日々現場に立ち、営業や配送を重ねる中で、次第に「実は研究職でやってきたことと、根っこは同じなのではないか」と感じるようになりました。研究では仮説を立て、条件を整理し、検証を重ねながら最適解を探していきますが、営業やオペレーションでも同様に、「相手は何を求めているのか」、「どこに課題があるのか」を観察し、仮説を立て、行動し、その結果をもとに改善していくプロセスが求められます。たとえば企業への営業では、表面的な要望だけでなく、その背景にある課題や制約を読み取ることが重要ですし、配送業務でも、効率や品質を高めるために細かな条件や動線を分解して考える必要があります。こうした「構造を分解し、再構築する視点」は、研究職で培ってきた考え方と非常に近いものだと感じました。職種や立場は大きく異なりますが、「現象を捉え、本質を見極め、より良い形にしていく」という点では共通している。研究から営業・オペレーションへとフィールドは変わりましたが、これまで積み重ねてきた思考や姿勢が、形を変えて活かされていることに気づけた経験でした。

失敗から学んだ「自分を過信しない」こと

失敗から学んだ「自分を過信しない」こと

――FOODCODEで「スタートアップ企業だからできることだな」と感じたことはありましたか?
不破:強く感じたのは、施策のイン・アウトがとても速いこと。たとえば、ハウスウェルネスフーズやハウス食品で何か新しい事業を立ち上げようと思ったら、2〜4年かかるのが常だと思うんです。それがFOODCODEだと、週一回の定例ミーティングが全体会議になっていて、「これ、いつからやる?」「じゃあ明日から」ということもざらで。小さな会社なので、一つのものを売ることを大事にしていながらも、これをこのまま積み上げていっても見合う成長曲線に乗らないとなったら、撤退の判断もとても速い。スタートアップ企業である以上、緩やかな成長ではなく、ぐいっと急激に上がっていくような成長曲線を求めている。そこに対するハンドリングが、これまでの会社とは全然違うなと感じましたね。

――不破さんがハウスウェルネスフーズで培ったものが役立った場面もありましたか?
不破:細かなところですと、カレーにトッピングをする際のばらつきを検定するのに、私が研究で使っていた統計の知識を持ち込んだりはしたのですが、それくらいかもしれません。ハウスウェルネスフーズしかり、ハウス食品しかり、メーカーとしてミスのない100%の商品をお客様にお届けすることが大前提で、それに対するリスク回避の施策を講じることが必要です。それに対しFOODCODEでは、及第点に乗せられれば、100%でなくてもよしとする部分もありました。そうした考え方の差があるので、ハウスウェルネスフーズで培ったものをそのまま持ち込んでも、尺度が合わないんですよね。先ほどお話ししたように、似ている要素を見つけ出し、応用して考える、という姿勢が求められていたのかなと思います。

――では、出向先で戸惑われることも多かった?
不破:もう、最初から最後まで戸惑っていました(笑)。ただ、組織がコンパクトなので、決定者である経営者との距離がすごく近いんですよ。顔が見えるどころか、すぐ隣にいる距離感なんです。これまでの研究・開発のセクションは、販売や経営者の判断がすごく遠くにあるように感じられていました。どうして今ここでこれをやって、どうしてこれはやらないのかが見えづらかったのですが、FOODCODEに飛び込んでみて、経営判断がなされている現場を生で見られたことは大きな収穫でした。

――失敗してしまったこともありましたか?
不破:失敗は数えきれないほどたくさんありますよ。たとえばお弁当販売をする際、配達が遅れてお弁当のピークタイムを逃してしまい、お弁当を余らせて持ち帰ったり、営業に飛び込んだビルの中で変な場所に迷い込んで出られなくなってしまったことも(笑)。お客様とのコミュニケーションがうまくいかず、お叱りを受けたこともありました。上手に対処できたことの方が少ないくらいですが、謝って、再び取り組んで…を、繰り返すしかなかったですね。

失敗から学んだ「自分を過信しない」こと

FOODCODE出向期間終了時の送別会にて

――FOODCODEに出向して驚かれたこともあったそうですね?
不破:はい、ありました。驚きとともに、感動したことでもあるのですが、FOODCODEでは、私より5歳くらい若い社員が、セクションの責任者として物事を主体的に前に進めていたんです。年齢的に見たら「若手」である彼らの、「自らの裁量で物事を決め、しっかり責任を負う」という姿勢を見て、年齢ではなく、その人が積んできた「経験」がいかに大事かということを考えさせられました。

――不破さんが仕事をするうえで大事にしていることはありますか?
不破:自分を過信しないこと、それから周りの方をリスペクトすることです。
まず「自分を過信しない」という点については、あまり完璧にこだわりすぎない、という姿勢でしょうか。自分では「100%できた」と思っていても、他人の視点から見ればそれが100%とは限らず、場合によっては40%以下に見えることもある。そう考えると、良い意味での開き直りというか、自分の評価を絶対視しないことが大切だと感じています。
もう一つ大切にしているのが、周りの方へのリスペクトです。これは単に「敬意を払う」という姿勢だけでなく、自分とは異なる立場や専門性、経験を持つ方々を本気で信頼し、そこから学ぼうとすることだと思っています。自分の考えが常に正しいという前提に立つのではなく、「なぜその判断に至ったのか」、「相手は何を大切にしているのか」を理解したいと考えています。今回のCVCチャレンジについても、まさにその考え方が背景にありました。出向が実現してもしなくても、リスクやダメージを負うのは基本的に自分自身です。一方で会社にとっては、応募者が増えたという実績が残りますし、出向が実現すれば外部で挑戦する社員がいるということ自体がプラスになります。会社や周囲のそうした立場・視点を冷静に捉えたときに、「応募しない理由はない」と自然に思えたんです。自分一人で完結させようとせず、周囲の力や知見を信じて任せることが、結果的に様々な成長につながると感じています。

――周囲の方へのリスペクトという点では、出向先で年下への接し方を評価されたと伺いました。
不破:ありがたいことですね。実は、私は大人になってからテコンドーを始めたのですが、なかには子どもの頃から競技を続けていて、年下だけれど段位は上、という方もたくさんいらっしゃいます。ですから年齢に関係なく、その人の経験に敬意を持って接する、という姿勢はテコンドーのおかげで培われたのかもしれません。それは社員の方だけでなく、アルバイトクルーやインターンの学生さんに対しても同様ですね。

――今回は不破さんが在籍されていたFOODCODEのCEOである西山亮介さんに、不破さんがFOODCODEに在籍していた頃に印象に残っていることを教えていただきました。

FOODCODE 西山 亮介(にしやま りょうすけ)

FOODCODE 西山 亮介(にしやま りょうすけ)

株式会社FOODCODEの代表取締役CEO。前リクルートマーケティングパートナーズ執行役員/Quipper 取締役COO。スタディサプリ事業をゼロから企画。数人での立上げから4か国で1000人規模への成長を事業責任者として牽引する。

FOODCODE西山:特に印象に残っているのは、 FOODCODE側の上司と「喧嘩?」と思うくらいのアグレッシブな議論をする不破さんの姿です。白熱しすぎて不破さんのかかと落としが炸裂するのでは?とソワソワ(ワクワク)したのを覚えています(笑)。
また、システム開発案件のときには、自ら現場に足を運び、解像度高く課題を把握していましたね。そしてイギリスのエンジニアに、「現場の臨場感」そして「我々が求める理想の姿」の両方を伝え、プロジェクトをリードしてくれていました。全く異なる役割のステークホルダーを巻き込みながら「まずやってみる」というスタンスで、スピード感をもって課題解決に取り組んでいたのも非常に印象的でしたね。
それと、不破さんの、「"人"に仕えるのではなく、"事"に仕える姿勢」が僕は好きでした。
彼女をひと言で表すなら、「一意専心」でしょうか。わき目もふらず、一つの物事に心を集中してひたむきに努力ができるのが、不破さんの魅力だと思います。
最後に、不破さんのかかと落としが炸裂するのを見られなかったのが心残りです!

"小さな骨折"を力に変える、しなやかな強さ

"小さな骨折"を力に変える、しなやかな強さ

――冒頭で食いしん坊とのお話が出ましたが、小さい頃はどのようなお子さんでしたか?
不破:子どもの頃からよく食べる子どもでしたね。両親が共働きだったので、小さい頃は祖父母に預けられることが多く、いろんな場所に連れて行ってもらいました。それで、子どもながらに味覚が渋めになって(笑)。食に対する関心が高まったのは、祖父母のおかげかなと思います。

――おばあさまは日本舞踊の先生でいらっしゃったとか。
不破:はい。私も3〜15歳まで、祖母と大叔母に日本舞踊を習っていました。ただ、当時はあまり踊り自体は好きではなくて。でもいま思えば、自分の体を動かすことに対する興味は、このときに育まれたのかもしれません。

――大学では、テコンドーに出会われたと伺っています。テコンドーも不破さんが"未経験に飛び込んだ"ことの一つだと思いますが、戸惑いなどはなかったですか?
不破:中学・高校と帰宅部だったので、大学では健康のために運動しようと思っていたんです。そんな折、たまたまテコンドー部に所属されている先輩が「一度のぞきにおいでよ」と誘ってくれて。テニスやバスケットボールなどは中学や高校で経験している方も多いですが、テコンドーはマイナースポーツなので、私が所属していた部ではほとんどの人が未経験、同じところからのスタートでした。先輩や師範も、初心者に一から教えることに慣れていらっしゃいましたし、ある意味、気負いなく始められたことがよかったんだと思います。テコンドーは社会人になったいまでも続けています。数年前、全日本テコンドー選手権大会で優勝し、カザフスタンで開催された世界大会に出場する機会をいただけたことは、大変貴重な経験となりました。

"小さな骨折"を力に変える、しなやかな強さ

――世界大会出場ですか!それはすごいですね!素晴らしいご活躍をされていますが、師匠の教えや言葉で、強く心に残っていることはありますか?
不破:直接的な「教え」ではないのですが、私の師範が人とのつながりをとても大切にされる方なんです。練習や礼儀ももちろん大事だけれど、それ以上に、練習や競技自体をお休みしている方にも細やかに連絡をとるなど、人とのつながりを大事にされていて…。そういったところをとても尊敬しています。また、師範や一流選手の動きには直感的に「美しさ」を感じます。その理由を考えると、無駄がなく本質を捉えているからではないかと思います。
出向していたFOODCODEの西山さんも「Simple is best」とよく仰っていたのですが、何かを極めるとシンプルに回帰するのかもしれません。その気づきから、私自身も「シンプルかどうか」という問いを常に持つようにしています。

――日舞を10年以上、テコンドーも11年にわたって続けている「継続」の経験は、挫折や困難に直面したときにプラスに働いていますか?
不破:そう言っていただくとすごいことのようですけれど、逆に私はそれしかないんですよ。残りは挫折の瓦礫が積まれている状態です(笑)。みなさんもスポーツだったり、趣味のことだったり、継続されていることはきっとあると思うんです。私にとってはそれがたまたま日舞であり、テコンドーだっただけという気がします。

――いえいえ、十分すごいことだと思います。不破さんのその謙虚さや、自分を過信しないストイックさはどこからくるのでしょう?
不破:昔から好奇心旺盛ではあったのですが、同時におっちょこちょいなタイプだったこともあり、子どもの頃から周囲の方に指摘されたり、助言をもらったりする機会が多かったのだと思います。挫折といいますか、"小さな骨折"を積み重ねて今がある感じです。骨折だらけなので、もう新たな骨折を気にせず動けるというか…。あまりいい言葉ではないかもしれませんが、「面の皮が厚い」って言われたことがあるんですよ(笑)。今はまだ、それも許してもらえる「若手」と呼ばれる範囲なので、私がたくさん転んでたくさん傷を作っておくことは、上の人たちの判断材料になるし、下の人たちの前例にもなる。そう考えると、失敗がもうあまり怖くなくなりましたね。

頭を使ったら、体を動かしてバランスをとる

頭を使ったら、体を動かしてバランスをとる

――日々、仕事で忙しくされていると思うのですが、つらいとき、何か失敗をしてしまったときの切り替え方を教えてください。
不破:やっぱりテコンドーの存在に助けられていると思います。仕事で頭を使ったら、その分、体を使いたい。気持ちが落ち込んだり、頭が疲れていても、体を動かすことでうまくバランスがとれている気がします。切り替えるというよりは、バランスをとっているという感じですね。あとは、よく寝ること、おいしいものを食べること、友人に会うこと。30歳を過ぎたあたりから、睡眠の大切さを思い知りました(笑)。

――不破さんが人付き合いをする上で大事にしていることはどんなことですか?
不破:平たく言うと、「相手の気持ちを考える」ということでしょうか。たとえば朝、出社して「おはようございます」と声をかけたとき、「おはようございます」と返ってくることもあれば、返ってこないこともあるじゃないですか。そういうとき、「どうして返事をしないんだ」と、怒る人もいると思うんです。でも、もしかしたら何かに集中していただけかもしれないし、たまたま風邪を引いて声が出ないのかもしれない。そもそも聞こえていなかったのかもしれない。その人にはその人の都合があるから、自分の尺度で測ったりしない、判断しないということは心がけています。

――先ほどおっしゃっていた、「自分の100%と他人の100%は違う」というお話ともつながりますね。
不破:そうですね。実は以前、バレーボールをやっていた友人が、「サーブの時に『行くぞ』と大きなかけ声を出さなくてはいけなくて、それがつらい」と話していたんです。私自身は「声を出せ」と言われたら「はいっ!」と出せちゃうタイプなのですが、そこに葛藤があったり、ストレスを感じる人もいると気づいてから、その人その人が置かれた状況や都合というものに、より注目するようになりました。

――お話を伺っていて、お友だちが多く、頼られているんだろうなと感じますが、オフの日は、どのように過ごされているんですか?
不破:小中高と一貫校でしたし、大学でも長い時間を一緒に過ごした友人がいます。今でも連絡を取り合う子がたくさんいて、そこは恵まれていると思います。音楽も好きなので、フェスやライブにもよく行くんですよ。それから、やりたいことや挑戦したいことをなんでもリストアップして、実行に移しています。最近でいうと、博物館の企画展に行ったり、痛風鍋を食べたりですね。

視座を高め、さらなる広がりへ

視座を高め、さらなる広がりへ

――2025年4月からは、またハウスウェルネスフーズに帰任されているそうですね。
不破:はい。バリューチェーン戦略部に配属になりました。この部署はもともと経営企画部や国際事業部の流れを汲んでいるので、グローバルかつ長い目で見た戦略を立てるような業務を担っています。そのなかで、戦略素材であるターメリックエキスをおもに担当したり、海外の企業とのやり取りも少しやらせていただいています。

――ハウスウェルネスフーズは、働きやすい会社ですか?
不破:そうですね。設備や環境という意味でも整備されていますし、なにより人が素晴らしいです。研究・開発の場においても何でも教えてくださるし、みなさん穏やかで、働きやすさにつながっていますね。

――不破さんの行動の土台になっている「価値観」は何だと思いますか? また、今後のキャリアでの目標を教えてください。
不破:まず、「人を大切にする」ということ、それから「複数の視点を持つ」ということです。これからめざしたいのは「より上の視点から物事を見る」こと。これまで私が大事にしてきたのは、どちらかというと下から上を見上げて、「できない、わからない」の視点を内在化するという考え方でした。でも出向先で経営者の方に間近で接し、様々な経営者の方のお話を聞く機会を得て、もっと上の視点を獲得し、広い範囲を見られるようになりたいという思いが高まりました。複数の視点を大切にしつつ、より上の視座から物事を見られるようになることが、今後の目標ですね。

――ご自身の経験を活かして、若手社員の方にメッセージをお願いします。
不破:まずは、何でも気軽に挑戦してみてほしいですね。ハウス食品グループにいる方は、優秀な方が多いと思うんです。素晴らしい学歴・経歴のなかで、もしかしたら"小さな骨折"を怖がってしまうこともあるかもしれません。でも世の中って、結構なんとかなるようにできていると思うんですよ。
ハウス食品グループでは、多くのチャレンジの機会が設けられており、様々な部署が新たな人材を求めて、自分から手を挙げてその部署に行けるジョブポスティング制度や私が利用したCVCチャレンジ制度(出向)などの公募施策もその一つです。こうした制度を通じて、会社全体が各自のチャレンジを後押ししてくれて環境が整っているので、自分のやりたいことにつき進めるところも、ハウス食品グループの魅力だと感じます。ですから、ちょっと気になると思ったら、恐れず気軽に、まず半歩踏み出す。考えたうえで挑戦し、たとえ途中で挫折したとしても、チャレンジや挑戦そのものを評価し、結果を受け止める度量がこの会社にはあると信じています。やってみて「違ったな」と思うのも、一つの収穫だと思うんですよね。小さな失敗、小さな骨折を恐れず、まずは踏み出していただきたいですね。

視座を高め、さらなる広がりへ

違うと思ったら、何度でも軌道修正すればいい。
それを許してくれる度量が会社にあるからこそ、ためらわずにチャレンジを続けられる。

1年間のスタートアップ企業への出向で、「まずやってみる」という風土に触れた不破さん。失敗を恐れず前に進む彼女の姿、凛としたまなざしは、後に続く後輩たちの背中を押し、新しい挑戦を生み出していくのでしょう。


取材日:2026年1月
内容、所属等は取材時のものです

文:山村奈央子
写真:下林彩子
編集:株式会社アーク・コミュニケーションズ

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