いつもの料理に少し加えるだけで驚くほど味わいの深みが増したり、組み合わせによって本格的な風味や新たなおいしさを生み出すことができたり。スパイスは食の楽しみを何倍にも広げてくれます。そんなスパイスをはじめ、調理済み食品や食材・調味料を駆使して“食のプロ”をサポートするソリューションカンパニーであるハウスギャバン。
ハウスギャバンは、ハウス食品グループの一つであった株式会社ギャバンがハウス食品の業務用食品事業と統合して2023年に発足した会社です。今回は、ホテルやレストランなど様々なプロが望む味や品質を提供できるよう、日々スパイスと向き合うハウスギャバン開発部の湯浅有夏さんに、スパイスの魅力とハウスギャバンの未来について伺いました。
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ハウスギャバン株式会社 湯浅 有夏 (ゆあさ ありか)
2014年株式会社ギャバン(現・ハウスギャバン株式会社)入社。営業企画部受注グループで受注業務を担当したのち、2015年からソリューション本部開発部でおもにスパイスミックスやシーズニングなどの開発・製品化業務に従事している。休日の楽しみは家族で出かけるピクニックや、子どもとの料理やお菓子作り。家庭での定番料理の一つ、クミンを効かせたスパイスカレーは6歳の子どもにも好評!
ーー湯浅さんは仕事として食品を扱うだけでなく、プライベートでも料理好きと聞きましたが、食に興味をもつようになったきっかけについて教えてください。
湯浅:最初に興味をもったのは小麦粉だったんです。中学生の頃でしょうか、テレビ番組で見かけた手打ちうどんを自分でも作ってみて、小麦粉をこねたり茹でたりすることで、うどんという食品になっていくことのおもしろさを実感したのがきっかけです。それから小麦粉を使ってパンや麺類、お菓子などを作るようになって、高校生からはシュトレン(シュトーレン)作りにハマり、今も特別なイベントがなくても好きなタイミングで好きな組み合わせで作っています。
ーーシュトレンにはシナモンをはじめスパイスが欠かせませんね!ご実家にもスパイスは常備されていましたか?
湯浅:はい、母もパンやソーセージを自分で作っていたので、実家のキッチンには『GABAN®』と書かれた缶が並んでいたんです。だからこそ私も自然にスパイスを使うようになり、その効果や可能性を知ったことから、ギャバン(現・ハウスギャバン株式会社)への入社志望につながっていきました。
ーースパイスの可能性とはどのようなことですか?
湯浅:大学で発酵について学び、味噌や醤油といった発酵調味料への理解を深めていくなかで、調味料にさらにプラスして食品の嗜好性を強めてくれるのがスパイスだと考えました。カレーのように味わいの主役になることも、ひと振りするだけで食品の風味を変化させることもできるので、まだまだいろいろなことに使えそうだな、と“未知の世界”みたいな魅力を感じたんです。
ーー現在は開発部に所属されているということですが、どのような業務を担当されているのか教えてください。
湯浅:開発部は3つのグループに分かれていて、おもに1グループはスパイス・シーズニングや輸入食材、2グループは業務用レトルト製品、3グループはケアフードを担当しています。
上記以外でも、業務用のルウやフレーク、顆粒などはハウス食品の開発、工場での生産の協力を得て製品化しているものもあります。
私は1グループに所属しているので、自社製品の開発や、お客様であるホテル、レストラン、食チェーン店などの外食ユーザー様や大手外食・加工メーカー様から依頼のあった調理用のシーズニングやミックススパイスなどの開発をおもに担当しています。業務用特有かと思いますが自らが企画して開発するというよりは、お客様の要望をかたちにするという仕事が多いです。
ーー『GABAN®』と聞くと真っ先にスパイスが思い浮かびますが、レトルトやケアフードも開発されているのですね。
湯浅:2023年にハウス食品と統合しハウスギャバンという会社になり、2グループでは業務用レトルト製品を扱うことになりました。2グループのメンバーはもともとハウス食品内の業務用レトルト担当だったこともあり、従来のレトルト技術を活かしてカレーやスープ、フィリング製品など、幅広いジャンルの開発をしています。
例えば大容量のレトルトカレーは、温めるだけでいつでも同じクオリティのカレーが食べられるとあって、外食ユーザー様や給食業態などで評価をいただいています。
そして3グループのケアフードは、食に何かしら配慮が必要な方に向け、機能性とおいしさの両立をめざした製品の開発をしています。例えば咀嚼や嚥下機能に困難がある方のためのペースト食ですが、唐揚げやすき焼き、きんぴらごぼうなどを、かたさやなめらかさ、食感やおいしさにとことんこだわって開発しています。また、カロリーやたんぱく質など、栄養面でのフォローが必要な方に向けた製品の開発もしています。
ーー湯浅さんが担当されたお仕事のなかで、特に印象的だったのはどんなことですか?
湯浅:自社製品では『デュカスパイス』や『ラスエルハヌート』の開発が印象深いです。というのも、この2製品は原料にかなりこだわりました。中東で使用されてきたスパイス調味料である『デュカスパイス』は、外観と食感が重要視されていたこともあり、ホールスパイスをいかに食感良くおいしく召し上がっていただけるかを考えながら、スパイスの新たな加熱加工技術を取り入れて製品化を行いました。この加熱加工工程を工場に導入する際は、現場の皆さんにも多大な協力をいただき、今でもそのときの情景が昨日のことのように思い出されます。皆が一体感を持って取り組んだからこそ、良い製品の開発につなげられたのだと感じます。
『ラスエルハヌート』はモロッコ発祥のスパイスミックスなのですが、今まで原料としては扱ったことのなかったバラの花を使用したことで、通常のスパイスだけでは再現できない特有のエキゾチックな味と香りを表現しました。
自社製品以外では、特定のお客様に向けて製造する製品の開発に携わることも多いのですが、同じ企業様でも時代と共に味や使い方だけでなく、外観や色味にもこだわりたいという依頼をいただくことが増えてきたと感じます。ネットやSNSの普及により、見映えも重要視されることが多くなったのだと思いますが、そういった要望にもできる限り応えるため、原料の探索を行ったり、製品の工業化に向けた製造条件の検討や、ラインテストを行ったり…、そうしたことをいつも模索しているため、案件一つ一つに思い入れと印象深さがありますね。
ーーギャバンがハウス食品と統合したのは2023年とのことですが、製品開発において湯浅さんが特に大切だと考えていることとは何でしょうか?
湯浅:一つはスピードです。お客様は、オペレーションを簡素化したいとか、調理時間を短縮したいとか、調理の現場での困りごとを抱えていらっしゃるケースが多いので、私たちもできるだけ早く解決するように努めています。そしてもう一つは、お客様の要望を正確に汲み取ることです。
ーー要望を正確に汲み取るために行っていることはありますか?
湯浅:通常は、営業部の担当者がお客様の要望を聞き取るのですが、私も同行して直接お客様とお話しすることもあります。そうすることで、どんな風味が求められていて、どのような使い方を想定しているのかなど、双方の開発視点で詳細なところまで話をすることができるので、それが結果的に精度の高い試作や、スピード感のある開発につながるのだと思っています。先ほど各グループの仕事内容をご紹介しましたが、外食ユーザー様や学校給食向けのレトルト製品などのほか、災害時に温めずに食べられる備蓄用のレトルトカレーの開発などもしているんですよ。
湯浅:ほかには、製品の良さや使い方を伝えるため、企画部内に製品を活用したレシピを考案するチームが在籍しており、実際の製品を使ったメニューを考案して提案する営業にあたることもあります。チームの方々は、実際にホテルやレストランで働いた経験のある人も多く、調理のプロです。こうした開発者部とはまた違った視点でのメニュー提案ができるのもハウスギャバンの強みだと思います。
また、本社内に企画部、開発部、営業部がそろっているので、案件ごとに素早く情報共有が可能な状態です。業務用の世界はスピード感を持って動くことがとても重要であるため、この3部門が連携する「スクラム型開発営業」にも力を入れています。また、ハウス食品グループR&Dの拠点である千葉研究センターにもハウスギャバンの開発メンバーが在籍しているので、新たな技術を取り入れやすい環境が整っています。
ーーそんな開発の仕事において、ギャバンからハウスギャバンになって変わった部分はありますか?
湯浅:ギャバンは、もともとスパイスやシーズニングといったドライ(乾燥)品の扱いがほとんどでしたが、レトルト技術やルウ技術などを使った製品が扱えるようになったことで、加工度の幅が広がったというところが一番大きな変化だと思います。そのおかげで、今までスパイスだけでは表現できなかった部分をレトルト、ルウ製品で提案したり、逆にレトルト製品だけでは足りなかった部分をスパイスで補ったりなど、お客様の要望に対する提案の幅も広がりました。
ーー提案の幅が増えることで、お仕事の量も増えたのでは?
湯浅:そうですね。取り扱う製品がかなり増えたこともあり、皆忙しそうにしています。1グループの業務で言うと、いままでは原料の選定から味作り、製品化までを一人で担当することが多かったのですが、組織が大きくなり、人員が増えたことで分業できることも増えてきました。そのため、開発業務に集中できる環境が整ってきている面もありますが、統合から間もないこともあるので、そういった開発のフローに関しては発展途上であるのも事実です。ハウスギャバンは業務用の世界でソリューションカンパニーをめざして発足した会社でもあるので、あらゆる案件に迅速に対応できるような仕組み作りにも貢献できればなと思っています。
ーーお子さんは今6歳とお聞きました。ご家庭でもスパイスを使って料理されますか?
湯浅:はい。子どもが通っていた保育園の給食がスパイスを使ったカレーだったこともあり、我が家のカレーはずっとスパイスカレーなのですが、味覚的に慣れた味ということもあり、子どもも抵抗なくよく食べています。辛みを唐辛子ではなくブラックペッパーで出すことが多いので、後からじわじわくる辛さではなく、キレのいい爽やかな辛さ(と言ってもかなり辛みは控えめです)のカレーです。使っているのは『GABAN®』の『ブラックペッパーグラウンド』です。『ブラックペッパーグラウンド』は、粒度が細かいものから粗いものまでバランスよくブレンドされていて、ペッパーの香りが上品で気に入っています。辛みもそこまで強くないので、家庭でも使いやすい製品です。
ーーほかにも、小さなお子さんがいる家庭で試せるスパイスの使い方をぜひ教えてください。
湯浅:そうですね、私は結構何にでもスパイスを使っています(笑)。例えば、トマトソースにはクミンを少し足すと味が締まっておいしくなりますし、クリームシチューにはホワイトペッパーを入れるとミルクくささが消えてすっきりと締まった味になります。そんなふうに、ちょっと使うだけで味が変わるのがスパイスの魅力だと思います。食材との組み合わせも自由ですし、いつもの料理に取り入れやすいですよね。
あと、おすすめなのが『手作りのカレー粉セット』です。個包装された20種類のスパイスが入っていて、例えば辛みが苦手なお子さんに作る場合はカイエンペッパーを入れないとか、全部をカレーとして使わずに別の料理に使うとか、食べる人や好みによって調整ができるので便利ですよ。
ーー子育てしながら仕事と両立するのは大変なことかと思いますが、ハウスギャバンになって、働き方に関しても何か変化はありましたか?
湯浅:大きく変わったのは、ハウス食品の制度を利用することで、働く時間を調整できるようになったり、テレワークを活用できるようになったことです。子どもの体調や保育園の都合に合わせて働く時間を調整したり、自身の仕事の進捗具合によって就業時間をずらしたりなど、柔軟に働くことができるようになりました。
ーーお子さんが小さいと不測の事態が起こりがちなので、柔軟に働けるのはいいですね。
湯浅:そうですね。働きやすくなるように制度が整っていくこともとてもありがたいのですが、一番助かっているのはやはり同僚たちの理解だと思っています。特に関わることの多い部内メンバーは、当然年齢も住環境も違う様々な方が在籍していますが、お互いに尊重し合い、何かあったときにフォローしあえるという風土が醸成されていると感じます。この環境が本当にありがたいですね。
湯浅:また、開発という仕事上、生産工場での立ち合いや、地方、海外出張もあったりするのですが、子どもが生まれてしばらくは、どうしても出張に行けない状況が続いていました。でも、上司は「子どもがいるから出張なんて行けないよね」と最初から可能性を消すのではなく、「出張行ける?」と私が行くか行かないかを選択できるようにしてくださっていて、すごくありがたいなと思っています。
来春には子どもが小学生になるので、少し手が離れてきています。社内外のいろいろなところに目を向けながら、新たな挑戦もしつつ、個人的な仕事の範囲もまた広げていきたいなと考えています。
ーーハウスギャバンがめざすところを教えてください。
湯浅:これまでも業務用メーカーとして品質の高さや安定性などをめざしてきましたが、ハウスギャバンになったことでそこに加工技術がプラスできるようになったことは、さら大きな進歩だと思います。素材であるスパイスから、その技術力を活かした最終製品まで、それぞれの段階でお客様に合った付加価値創造をしていくことが、“食のプロ”であるお客様の課題を解決していくソリューションカンパニーとしてハウスギャバンがめざしていくところです。
――湯浅さん個人としての目標、そして湯浅さんが思うスパイスの魅力を教えてください。
湯浅:私はスパイスが好きなので、今後もその奥深さを探求するためにスパイス・シーズニングの開発には引き続き携わっていきたいと思っています。そして、そこから一歩進んだところとして、ハウス食品グループならではの知見も取り入れながら、新たな価値の提供にも挑戦していきたいと思っています。個人的には「ハウスギャバンだからこそできた」と言えるような製品を作るのが目標の一つです。
そして先ほどもお話しした通り、スパイスは使い方次第で料理の風味や見た目に大きな影響を与えることができるところが魅力です。そのまま振りかけるも良し、テンパリング工程により油に風味を移しても良し…。焼き物や煮込み、揚げ物への使用など、使おうと思えば何にでも使えてしまうし、使い方一つで料理に様々な印象を与えることができるのがおもしろいところです。料理自体の味わいのボリューム感を増したり、楽しい食感を出したり、スパイスは本当にいろいろな表情をもっています。
スパイスと聞くとカレーやエスニック料理のイメージが強いかもしれませんが、和食やスイーツ、ドリンクなどにも使えたりして、まだまだたくさんの可能性を秘めていると思います。そうしたスパイスの幅広い使いこなし方を、日本国内はもちろん、世界に向けてももっと発信していきたいです。
肉じゃがにクミン、バニラアイスに山椒パウダー。工夫次第で新たなおいしさが無限に発見できるのもスパイスの底知れぬ魅力でもあると湯浅さんは教えてくれました。
そんなスパイスを愛する湯浅さんの探究心が、今後の提案につながり、ハウスギャバンの力となりそうです。
▶ハウスギャバン
https://www.housegaban.com/
【クレジット】
取材日:2025年1月
内容、所属等は取材時のものです
文:吉田けい
写真:小池彩子
編集:株式会社アーク・コミュニケーションズ
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