経営成績・財政状態に関する分析
1.経営成績等の概況
(1)当期の経営成績の概況
当社グループは、2018年4月からスタートした第六次中期計画において、“「食で健康」クオリティ企業への変革”をハウス食品グループのめざす姿と位置づけ、2年目である当期も、企業市民として果たすべき「3つの責任」(お客様に対して、社員とその家族に対して、社会に対して)の全てにおいて、クオリティ企業への変革に向けた取組を推進しております。
・「3つの責任」重点取組テーマ
お客様に対して | 国内成熟市場におけるイノベーションの創出と海外成長市場における事業展開の加速 (バリューチェーン革新、R&D変革、海外事業の成長拡大と事業基盤の強化) |
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社員とその家族に対して | ダイバーシティの実現と生産性の向上 (働き方変革の実行、多彩な人材の獲得と活躍できる場づくり) |
社会に対して | 当社グループが考えるCSR(Creating Smiles & Relationships)活動を通じた循環型モデルの構築と健康長寿社会の実現 |
「お客様」に対するテーマでは、ハウス食品㈱のレトルト製品製造ライン増設や米国豆腐事業の生産能力増強、ハウスウェルネスフーズ㈱の研究拠点を千葉研究センターに統合することによるR&Dの機能強化など、既存事業の収益力と価値創出力の強化に向けた取組を遂行いたしました。「社員とその家族」に対するテーマでは、「働き方変革」を通じた生産性向上に繋がる組織風土の醸成に取り組んだほか、「社会」に対するテーマでは、循環型モデルの構築に向けて新たに環境投資判断基準を策定するなど、「3つの責任」それぞれで重点取組を推進しております。
当連結会計年度の売上高は、海外食品事業がタイを中心に事業規模を拡大したほか、香辛・調味加工食品事業、外食事業も前年を上回りましたが、健康食品事業の苦戦やその他食品関連事業において主要物流事業をF-LINE㈱へ譲渡した影響もあり、2,936億82百万円、前期比1.0%の減収となりました。営業利益については、健康食品事業の苦戦や物流事業の譲渡による影響はあったものの、香辛・調味加工食品事業や海外食品事業、外食事業が連結業績への貢献度を高めたことで、190億5百万円、前期比8.2%の増益となりました。
経常利益は、持分法による投資利益の増加等により営業外収益が増加したことで、207億97百万円、前期比8.9%の増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に投資有価証券売却益を計上した反動等により、114億58百万円、前期比16.8%の減益となりました。
セグメント別の経営成績の概況(セグメント間取引消去前)は、次のとおりであります。
<香辛・調味加工食品事業>
ハウス食品㈱は、国内市場が成熟の度合いを深めるなかで、収益構造モデルの変革に取り組み、既存事業の強化と新価値創造に取り組んでおります。既存事業においては、「食の外部化」への対応強化の一環として2019年8月にレトルト製品の製造ラインを稼働させたほか、大容量ねりスパイスやパーソナル食品の育成等、お客様のライフスタイルの変化に即した提案力および収益力強化に取り組みました。下期に入り消費税増税によるマーケットの冷え込みもあり苦戦いたしましたが、2月中旬以降新型コロナウイルス感染拡大の影響が顕在化し、家庭内食への需要が極大化したことから、増収増益を確保いたしました。
当事業セグメントに属する㈱ギャバンは主力のペッパーを中心に国内外とも底堅い推移となりました。マロニー㈱は暖冬要因もあり鍋需要が振るわず、軟調な推移となりました。
以上の結果、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,449億96百万円、前期比2.7%の増収となりました。営業利益は、成長投資に伴う減価償却費の増加が負担とはなりましたが、141億11百万円、前期比11.4%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は9.7%となり、前期より0.8pt向上いたしました。
<健康食品事業>
ハウスウェルネスフーズ㈱は、基幹ブランド「ウコンの力」が飲酒環境の変化や年度末にかけての新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、非常に厳しい販売環境が続き、業績が悪化しております。このような市場環境のなか、将来に向けた事業基盤の再構築を進めており、当期は持続的な成長を見込むゼリー製品および「1日分のビタミン」の内製化を進める一方で、競争力の維持確保が難しいPET製品の事業縮小を進めております。また、戦略的健康素材と位置づける「乳酸菌L-137」の事業化に取り組むほか、機能性表示食品「ネルノダ」の育成に努めました。
以上の結果、健康食品事業の売上高は278億90百万円、前期比9.7%の減収となりました。営業利益は、主要ブランドの減収による影響が大きく、5億21百万円、前期比63.3%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は1.9%となり、前期より2.7pt減少いたしました。
<海外食品事業>
海外食品事業はグループの成長を担うコア育成事業として、重点3エリア(米国・中国・アセアン)で事業成長と収益基盤の強化に取り組んでおります。
米国豆腐事業は、近年の健康志向や環境意識を背景とした植物性タンパク市場の拡大とともに成長を持続したものの、土日稼働に伴う労務費増や一部原料の関税アップ等から、増収減益となりました。なお、当連結会計年度は強い需要拡大に対して生産能力が逼迫するなか、我慢の経営を強いられましたが、ロサンゼルス工場の新ラインが当期終了直後の本年1月に完成し、成長機会を取り込む体制を整えております。
中国カレー事業は、家庭用・業務用ともに成長を実現し、日本式カレーの着実な浸透は進めることが出来たものの、成長を支える営業人員の採用・育成が遅れたことで、前期の浙江工場稼働に伴うコスト増を吸収するには至らず、増収減益となりました。
タイ機能性飲料事業は、健康志向の高まりを背景とした旺盛な需要に支えられ、CVS等のモダントレードおよびトラディショナルトレードの双方で「C-vitt」の成長が続き、増収増益となりました。なお、同国では2019年10月から10%の物品税が課され、一部は価格改定で吸収したものの、損益改善への打ち手を講じてまいります。
以上の結果、海外食品事業の売上高は297億34百万円、前期比13.0%の増収、営業利益は40億98百万円、前期比14.3%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は13.8%となり、前期より0.2pt向上いたしました。
<外食事業>
㈱壱番屋は、期初となる2019年3月に価格改定を行った影響や海外子会社が堅調に推移したこと等から増収増益となりました。同社の国内既存店客数は2019年8月以降に発生した台風や豪雨のほか、10月からの消費増税の影響等により前期比1.5%減となる一方、客単価は価格改定の効果等により同2.1%増となっております。
なお、当事業セグメントの対象であったハウスフーズアメリカ社が運営する「カレーハウス」レストラン事業は、同社の経営資源を豆腐事業に集中するために2019年6月に事業譲渡を行っております。
以上の結果、㈱壱番屋とその他外食子会社を含めた外食事業の売上高は524億98百万円、前期比0.8%の増収となりました。営業利益は、㈱壱番屋を連結対象子会社とした際に発生したのれんや無形固定資産の償却負担があるものの、価格改定効果や海外子会社の収益伸長により2億2百万円と黒字に転換し、前期からは7億63百万円の増益となりました。結果、売上高営業利益率は0.4%となり、前期より1.5pt向上いたしました。
<その他食品関連事業>
コンビニエンスストア向けの総菜等製造事業を営む㈱デリカシェフは、雇用環境の悪化に伴う人件費の上昇影響はありましたが、開発力強化と生産性改善に注力し、収益性を向上しております。
農産物・食品等の輸出入および販売を営む㈱ヴォークス・トレーディングも、基幹事業の収益力強化や高付加価値製品の拡販に引き続き取り組み、増収増益を確保しております。
なお、当事業セグメントに属するハウス物流サービス㈱(当社連結対象子会社)は、2019年4月より同社の受注・構内荷受を除く主要物流事業をF-LINE㈱(同 持分法適用関連会社)へ譲渡しており、当期の当事業セグメントの売上高および営業利益を大きく押し下げる要因となっております。
以上の結果、その他食品関連事業の売上高は462億96百万円、前期比25.2%の減収、営業利益は17億91百万円、前期比12.4%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は3.9%となり、前期より0.6pt向上いたしました。
(2)当期の財政状態の概況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて38億31百万円減少し3,671億94百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて48億98百万円増加し1,496億53百万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて87億29百万円減少し2,175億41百万円となりました。
流動資産の増加の主な要因は、商品及び製品が22億55百万円減少した一方で、現金及び預金が39億40百万円、有価証券が38億10百万円増加したことなどによるものです。
固定資産の減少の主な要因は、投資有価証券が62億90百万円、のれんが34億17百万円減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて56億17百万円減少し862億64百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べて21億70百万円減少し531億38百万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて34億47百万円減少し331億26百万円となりました。
流動負債の減少の主な要因は、支払手形及び買掛金が14億72百万円、短期借入金が4億9百万円減少したことなどによるものです。
固定負債の減少の主な要因は、繰延税金負債が17億16百万円、リース債務が13億19百万円減少したことなどによるものです。
当連結会計年度末の純資産は、保有する投資有価証券の売却および時価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したことや、退職給付に係る調整累計額が減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べて17億86百万円増加の2,809億30百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の66.6%から67.7%となり、1株当たり純資産が2,454円34銭から2,469円20銭となりました。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー242億18百万円に対し、「有形固定資産の取得」「有価証券の売却」などの投資活動によるキャッシュ・フロー△63億56百万円、「短期借入れ」「短期借入金の返済」「配当金の支払」などの財務活動によるキャッシュ・フロー△75億67百万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は698億70百万円となり、期首残高より73億75百万円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は242億18百万円(前期比+33億6百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益206億82百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、たな卸資産の増減額の減少(前期比+45億67百万円)、投資有価証券売却損益の減少(前期比+21億95百万円)、仕入債務の増減額の減少(前期比△16億25百万円)、税金等調整前当期純利益の減少(前期比△16億15百万円)などが主な要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は63億56百万円(前期比△53億48百万円)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出149億16百万円、投資有価証券の取得による支出31億62百万円、有価証券の取得による支出20億円、有価証券の売却による収入85億49百万円、投資有価証券の売却による収入59億91百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての減少は、有形固定資産の取得による支出の増加(前期比△53億73百万円)、投資有価証券の売却による収入の減少(前期比△13億67百万円)、定期預金の預入による支出の増加(前期比△11億36百万円)、投資有価証券の取得による支出の減少(前期比+29億33百万円)などが要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は75億67百万円(前期比+97億50百万円)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出353億82百万円、配当金の支払額45億32百万円、短期借入れによる収入348億46百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、短期借入金の返済による支出の減少(前期比+261億92百万円)、自己株式の取得による支出の減少(前期比+87億68百万円)、短期借入れによる収入の減少(前期比△245億2百万円)などが要因であります。
(4)今後の見通し
<次期の連結業績予想>
次期の経営環境については、新型コロナウイルスの国際的な感染拡大により、サプライチェーンの不全や消費の減退等による国際経済の大幅な減速が懸念されます。当社グループにおいても影響は国内外の各事業に及び、家庭内食の需要拡大が見込まれる一方、外出自粛に伴う業務用製品や機能性飲料の販売機会の減少、外食事業の売上高の減少など、消費行動の変化による影響が広範囲に及ぶことが見込まれます。これらの影響は、事業セグメント毎に影響の程度は異なるものの、上期については影響が大きく、下期にかけて徐々に収束に向かうと仮定して連結業績予想を算出いたしました。
・事業セグメント別の前提
香辛・調味加工食品事業 | BtoC事業は家庭内食機会の増加の影響を受ける一方、BtoB事業はマイナス影響を受ける(家庭用事業の需要拡大、業務用事業の販売機会の減少) |
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健康食品事業 | 「ウコンの力」等、機能性飲料の販売機会の減少 |
海外食品事業 |
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外食事業 | 消費減速や外出自粛に伴う国内外店舗の売上減少 |
その他食品関連事業 | 商社事業において外食需要の減少が影響 |
<第六次中期計画 最終年度目標とのギャップ>
2021年3月期は当社グループにとって2018年4月からの3年間を対象とする第六次中期計画の最終年度にあたります。中期計画2年間については、第3の柱の育成に課題を残した健康食品事業を除き、利益面では概ね計画通りに進捗してまいりましたものの、最終年度目標に対しては上述する新型コロナウイルスの影響が大きく、未達を見込んでおります。
このような環境ではありますが、“「食で健康」クオリティ企業への変革”という第六次中期計画で掲げるハウス食品グループのめざす姿の実現に向けて、企業市民として果たすべき「3つの責任」(お客さまに対して、社員とその家族に対して、社会に対して)の全てにおいて、クオリティ企業への変革に向けた取組を推進するとともに、既存の成熟事業領域での生産性向上による収益力強化と国内外の成長事業領域への経営資源の重点配分に取り組んでまいります。
上記の予想は、本資料発表日現在に入手可能な情報や仮定に基づき作成したものであり、業績予想の修正の必要性が生じた場合には、速やかに開示いたします。
(5)利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
当社グループは、株主のみなさまへの利益還元を経営の重要課題の一つと位置づけ、グループの収益力向上と財務体質の強化に努めるとともに、連結業績や事業計画などを総合的に勘案しながら、企業結合に伴い発生する特別損益やのれん償却の影響を除く連結配当性向30%以上を基準とした安定的な配当を継続することを、利益配分の基本方針としております。
当期の期末配当につきましては、前期に対し1.00円増配の1株当たり23.00円を予定しております。また、年間配当は、中間配当23.00円と合わせて、前期に対し2.00円増配の1株当たり46.00円を予定しております。これにより連結配当性向は40.4%となり、上記に記載の、企業結合に伴い発生する特別損益やのれん償却の影響を除いた連結配当性向は31.6%となります。
次期の配当につきましては、1株当たり年間46.00円(中間配当23.00円)を予定しております。
なお、内部留保金につきましては、将来を見据えた製造設備・研究開発などの投資や新たな事業展開のために活用してまいりたいと考えております。
(6)事業等のリスク
(1)お客様に対する責任に関連するリスク
① 国内市場動向
当社グループ売上高の8割以上を国内販売が占めており、国内景気の動向や人口の減少が長期的な消費の低迷や市場縮小、販売競争の激化に繋がるリスクがあります。当社グループのコア事業のうち、香辛・調味加工食品事業はルウカレー等の調理型製品が売上高の大半を占めておりますが、食の外部化の進展による中長期的な市場縮小のリスクがあるほか、健康食品事業の主力ブランドである「ウコンの力」については、生活者のライフスタイルの変化による市場縮小のリスクがあります。こうした変化への対応が遅れることで提供価値が毀損するリスクがあります。
<主要な対策>
当社グループは、既存の成熟事業領域での生産性向上による収益力強化と国内外の成長事業領域への経営資源の重点配分に取り組んでおります。
・時短調理等のライフスタイルの変化に対応した製品・サービスの拡充、提案力の強化
・バリューチェーン上の展開領域を、従来のBtoCを中心とした領域からスパイスを軸に川上から川下まで拡大
・米国、中国、アセアンを重点エリアとした海外事業展開の加速
・グループ独自の技術やCVC等の外部共創を活用した新規事業の創出
② 事業拡大
当社グループは、2013年の持株会社体制移行後、2015年に㈱壱番屋を、2016年に㈱ギャバンをグループに迎えるなどバリューチェーンの拡大を進めております。また、第六次中期計画では新規事業創出に向けた投資枠を設定し、国内外において事業・資本提携を推進しております。
結果、企業買収に伴うのれんや無形資産を相当額計上しておりますが、こうした資産が事業計画の未達や市場環境の変化等によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出せない場合、また当初想定したシナジーが得られない場合、減損損失が生じる等、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
<主要な対策>
・経営会議における投資計画の検証(財務的視点での妥当性、事業戦略視点での収益性や成長性リスク等)
・グループ最適視点でのシナジー実現に向け、グループ横断取組(重点領域:調達・生産・BtoB)の推進等、バリューチェーンの共有化・効率化による競争力強化、価値提供力の向上
・グループPDCA会議等を通じた事業会社中期計画のモニタリング
③ 技術革新への対応の遅れ
成熟した食品産業においては、既存の事業競合に加え、異業種参入や新技術の台頭により競争環境も多様化しております。当社グループは、お客様や社会が直面する課題の解決に繋がるR&D機能の強化やデジタル化への対応に努めておりますが、こうした対応が遅れた場合、当社グループの競争優位性が低下し、既存事業や提供価値が陳腐化するリスクがあります。
<主要な対策>
・R&D重点領域および重点テーマの設定と経営資源の集中投下
・イノベーション創出力と実現力向上に向けた意識改革、風土醸成
・グループ企業間の技術課題の解決だけでなく、事業創造をめざしたバリューチェーン間の連携強化
・オープンイノベーションを通じた共創戦略の推進
・デジタルバリューネットワークの構築による新しい価値の創造
④ 海外事業展開
当社グループは進出各国においてカレー製品、豆腐製品、機能性飲料等の事業を展開しておりますが、食は元来保守的なものであり、当社グループの提供する製品・サービスが進出各国の食文化へ浸透、定着が想定を下回ることで事業計画の遅れや減損損失が生じ、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。また、ブランドや事業規模に見合う経営基盤の構築、整備が進まない場合やカントリーリスクが顕在化した場合に、利益創出力の低下、ガバナンス不全等が生じ、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
<主要な対策>
・日本式食文化の早期浸透をめざした米国、中国、アセアン重点3エリアへの経営資源の集中
・グローバル人材の確保や現地雇用の増員、進出各エリアでの生産供給体制の増強、合弁パートナーとの連携強化等による事業基盤の強化
・グループ本社と海外事業会社が連携した事業規模に応じたリスクマネジメント体制の構築、整備
⑤ 食の安全・安心
製品、サービスの品質トラブル発生に伴う企業ブランドの毀損、社会的信用の失墜、対応に係るコスト増加のリスクがあります。
<主要な対策>
・グループ品質保証会議・グループ品質保証責任者会議を中心としたグループ全体での品質保証体制の強化、推進
・グループ会社の特性に応じたISO9001やFSSC22000等の国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの取得
・法規制やお客様の食品安全への関心事などに関連する品質リスク情報のマネジメント
・食の安全・安心をテーマとした学習会を通じた人材育成、組織風土の醸成
・お客様の声を反映する活動を通じた、商品設計から販売に至る各工程における品質保証の向上
・製品パッケージやWEBを通じた分かりやすい情報開示の徹底
(2)社員とその家族に対する責任に関連するリスク
① 多様性のある人材の確保・育成
当社グループの中長期的な成長には多様な価値観や専門性を持つ社員一人ひとりの活躍が欠かせません。グループ各社の特性や成長ステージに応じた人材を適切に確保・育成出来ないことや、文化や価値観の多様性を尊重する組織風土が醸成できないことは、イノベーション創出力の毀損、事業における機会損失だけでなく、優秀な人材の流出が起こるリスクがあります。
<主要な対策>
・多様な個性を持つ社員一人ひとりが能力を発揮できる人事制度の整備や仕事の進め方の変革(新しいワークスタイルの導入)
・性別、国籍、キャリア、障がいの有無などを問わず、多彩な人材が活躍できる組織風土づくり
・グループ内外での人材交流の推進、人材育成プロセスの強化
・差別やハラスメントのないコンプライアンスを順守する職場環境づくり
(3)社会に対する責任に関連するリスク
① 持続可能な原材料調達
当社グループはスパイスをはじめ様々な原材料を世界各国から調達しております。これらの調達にあたっては、国際的な需要の拡大に伴う食資源の調達競争の激化や需給動向の変化、気候変動や地政学的リスク、バリューチェーンの各段階における社会・環境問題への対応の遅れ等により、安定的な調達の不全やコストの増加、社会的信用の失墜等に繋がるリスクがあります。
<主要な対策>
・川上領域の取組強化に向けた各種施策の遂行(産地多様化による安定調達、技術開発や品質向上等における調達地との協働取組の推進、サプライヤーへのモニタリング強化)
・生産地の環境、人権、経済等に配慮した原材料調達の推進(パーム油、紙から取組を開始)
② 気候変動
気候変動は世界規模で影響を与える問題であり、国内外でバリューチェーンを構築する当社グループにとって重要な課題と認識し対策を実施しておりますが、気温の上昇や異常気象、自然災害等によって原材料の調達不全やコスト増、生産停止等の事業活動の分断が生じるリスクがあります。また、脱炭素への対応が不足または遅れることで、生産コストの上昇や事業活動の制限、企業価値の毀損が生じるリスクがあります。
<主要な対策>
・環境投資判断基準の策定による環境負荷低減に向けた投資の促進
・サプライチェーン全体での環境負荷の把握(スコープ3への対応)
・食品ロスや工程ロスの低減(飼料肥料化・フードバンク・廃棄抑制・原料使い切り技術確立)、環境に配慮した容器包装の開発等への取組による資源循環、再資源化の促進
・再生可能エネルギーへのシフト
③ 天候要因、大規模自然災害、重篤な疾病の流行
当社グループの事業は、冷夏・猛暑・暖冬などの天候要因や、大規模な自然災害の発生・重篤な感染症の大流行により、業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
<主要な対策>
・大規模災害発生、重篤な感染症の大流行に際して、食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすための生産・供給体制の整備等の危機管理体制の構築
・国内外グループ会社における、事業特性や事業規模に応じた事業継続計画(BCP)の策定と定期的な訓練等を通じた見直しの実施
なお、新型コロナウイルスの感染拡大が次期の業績に与える影響については、2020年3月期決算短信「1.経営成績等の概況 (4)今後の見通し」をご参照ください。
(4)その他共通のリスク
① 法的規制とソフトロー
当社グループは、食品衛生法、製造物責任法、不当景品類及び不当表示防止法などの各種規制や、海外進出先における現地法令などの適用を受けております。各主管部門と法務部門が連携し、関連諸法規の順守に万全の体制で臨んでおりますが、予期しえない法的規制の強化、新たな規制などによって事業活動が制限される可能性がある他、法令違反や社会的要請に反する行動等による処罰や事業活動の制限を受けた場合の対応コストの増加、社会的信用の失墜により企業価値が毀損するリスクがあります。
<主要な対策>
・グループ共通の価値観である「ハウスウェイ」や行動原則である「ハウス食品グループCSR方針」「ハウス食品グループ行動指針」に基づく、役員・社員一人ひとりの関係各国における法令・国際ルールの順守、現地の人権、文化、伝統、慣習の尊重による友好的な関係の維持、促進
・ハウス食品グループの取締役等で構成される「グループCSR委員会」を通じて、グループ全体のCSR関連重要テーマの取組状況のモニタリング、レビューを実施するとともに、CSR重要テーマと位置づけるコンプライアンスについては、「コンプライアンス推進委員会」を設置し、各社の課題解決を推進
・コンプライアンス上の問題の早期発見、解決に向けた「グループ共通コンプライアンス・ヘルプライン」の整備、周知徹底
② 為替変動
当社グループが海外から調達する原材料において、中長期的な為替変動の影響を受ける可能性があります。また、当社グループの連結損益における海外事業構成比は、売上高で2割未満の水準ではありますが、当社グループは海外事業を成長領域と位置づけ、海外事業展開の加速に取り組んでおり、今後重要性が高まることを見込んでおります。連結財務諸表作成のため、展開各エリアの現地通貨で作成された財務諸表を円換算しており、中長期的な為替変動が当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報セキュリティ
当社グループは、開発・生産・物流・販売などの情報や、販売促進キャンペーン、通信販売などによる多数のお客さまの個人情報をコンピュータにより管理しており、システム上のトラブルなど、万一の場合に備えて最大限の保守・保全の対策を講じるとともに、情報管理体制の整備とルールの徹底に努めております。しかしながら、災害によってソフトウェアや機器が被災した場合のシステム作動不能や内部情報の消失、想定を超えた技術による不正アクセスや予測不能のコンピュータウィルス感染などによって、システム障害や情報漏洩、改ざんなどの被害を受ける可能性があります。このような事態が発生した場合、当社グループの業績・財政状態や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。
<主要な対策>
・当社グループの情報セキュリティを包括的に管理するための体制整備と継続的な強化
・ソフトウェアや機器でのシステムセキュリティ対策、社員教育や訓練の実施
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