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経営成績・財政状態に関する分析

1.経営成績等の概況

(1)当期の経営成績の概況

当連結会計年度における経営環境は、海外における政治・経済の不確実性や地政学的リスクが大きな影を落としました。国内においては、所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が続く一方、生産年齢人口減少の影響もあり、雇用環境は厳しさを増してきております。

食品業界においては、市場の成熟化が進展する中、多様化する食ニーズへの対応、新しい価値の提供が求められております。

当期は、当社グループにとって第五次中期計画の最終年度にあたり、“「食で健康」クオリティ企業への変革”に向けて、国内既存事業の収益力強化と新規需要の創出、海外事業の成長加速に向けた取組を推進いたしました。

結果、グループ全体の売上高は、健康食品事業において主力製品が低調であったことから苦戦したものの、香辛・調味加工食品事業、海外食品事業の伸長などにより、2,918億97百万円、前期比2.8%の増収となりました。

利益面では、増収効果やグループ各社の収益力向上に向けた取組が寄与し、営業利益は162億88百万円、前期比32.3%の増益となりました。経常利益は172億7百万円、前期比23.3%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に計上した㈱ギャバンの連結子会社化に伴う特別利益や税制改正に伴う㈱壱番屋の繰延税金負債の取崩しの影響がありましたものの、93億53百万円、前期比7.7%の増益となりました。なお、当期の2017年8月にはマロニー㈱の株式を取得、同社を連結子会社として香辛・調味加工食品事業セグメントに組み入れております。


セグメント別の業績の概況(セグメント間取引消去前)は、次のとおりであります。


<香辛・調味加工食品事業>

当事業セグメントは、「食の外部化」などの事業を取り巻く環境変化に対し、「より健康、より上質、より簡便、より適量」にフォーカスした製品・サービスの提供を通じて、「既存領域の強化」および「新規領域の展開」に取り組みました。

カレー類は、「食の外部化」の影響もあり、調理型のルウカレーは前年を下回る推移となりましたが、堅調な中食・外食ニーズを取り込んだレトルトカレーや業務用製品が伸長し、トータルでは前年を上回りました。加えて、ルウシチュー、スパイス、スナックも売上を伸ばしております。

以上に加え、㈱ギャバンやマロニー㈱の新規連結効果も寄与し、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,399億37百万円、前期比6.0%の増収となりました。営業利益はハウス食品㈱を中心とした既存事業の収益改善が寄与し、120億81百万円、前期比22.2%の増益となりました。

<健康食品事業>

当事業セグメントは、主力製品の収益力改善と成長に向けた仕込みに取り組みましたものの、依然厳しい状況が続きました。

機能性スパイス事業では、主力の「ウコンの力」がお客様の飲酒シーンが多様化する中で苦戦が続き、セグメント業績を押し下げる大きな要因となりました。

ビタミン事業では、「C1000」シリーズは前年を下回りましたが、ビタミンの提供領域拡大に向け注力する「1日分のビタミン」が着実に拡大し、全体では前年並みの実績を確保いたしました。

以上の結果、健康食品事業の売上高は315億99百万円、前期比5.1%の減収となりました。営業利益は主力製品の苦戦の影響により、9億7百万円、前期比32.0%の減益となりました。

<海外食品事業>

当事業セグメントは、重点3エリア(米国・中国・アセアン)における事業拡大のスピードアップと収益力強化に取り組んでおり、それぞれ事業拡大を進めました。

米国では、豆腐および豆腐関連製品が主力のアジア系マーケットの拡大に加え、米系マーケットにおいても、健康意識の高まりに対応した顧客層の拡大が奏功し、好調な推移となりました。

中国では、「カレーの人民食化」に向けて、前期の販売体制の再構築に加え、当下期には家庭用製品の価格改定を実施するなど、事業基盤の強化を図りました。

アセアンでは、タイにおいて機能性飲料「C-vitt」の市場浸透が進みました。また前期事業化したインドネシアでのハラール認証カレー事業は業務用市場へのアプローチを開始いたしました。

以上の結果、海外食品事業の売上高は228億55百万円、前期比13.6%の増収、営業利益は28億47百万円、前期比69.3%の増益となりました。

<外食事業>

当事業セグメントは、国内外でのカレーレストランの運営を通じて、お客様とカレーライスの接点の多様化とメニューの更なる深耕に取り組んでおります。

㈱壱番屋は、国内では全店ベースの売上高は前期比2.9%増、既存店ベースの売上高は同1.8%増と堅調に推移いたしました。一方利益面では、人件費や業務用米を中心とした食材原価の上昇等により前期比では微減となりました。

海外では、競争が激しさを増す環境下において、これまで当社が㈱壱番屋のフランチャイジーとして展開しておりました中国、台湾におけるレストラン事業を㈱壱番屋へ移管し、収益力ならびに競争力の強化に努めました。

以上の結果、外食事業の売上高は519億74百万円、前期比1.2%の増収、営業利益は㈱壱番屋を連結対象子会社とした際に発生したのれんや無形固定資産の償却が重く、4億6百万円の損失(前期は営業損失4億24百万円)となりました。

<その他食品関連事業>

当事業セグメントは、各社の機能強化の追求によるグループ総合力の向上に努めております。

運送・倉庫事業を営むハウス物流サービス㈱は、厳しい物流環境の中、食品企業による共同取組「F-LINE」の全国展開を見据え、事業の最適化、再構築に取り組み、増益を確保しております。

コンビニエンスストア向けの総菜等製造事業を営む㈱デリカシェフは、開発力強化・生産性改善に取り組んだ結果、収益性は大幅に改善いたしました。

㈱ヴォークス・トレーディングは、グループ協働取組の推進、調達・販売力の一層の強化に継続して注力した結果、増益を確保いたしました。

以上の結果、その他食品関連事業の売上高は610億24百万円、前期比1.8%の減収、営業利益は各社の収益力改善の成果が表れ、18億65百万円、前期比159.5%の増益となりました。

(2)当期の財政状態の概況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて261億15百万円増加し3,800億3百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて83億5百万円増加し1,439億17百万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて178億10百万円増加し2,360億85百万円となりました。

流動資産の増加の主な要因は、受取手形及び売掛金32億5百万円、現金及び預金が30億47百万円、有価証券が12億18百万円増加したことなどによるものです。

固定資産の増加の主な要因は、のれんが35億63百万円減少した一方で、投資有価証券が149億70百万円、退職給付に係る資産が36億23百万円増加したことなどによるものです。

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて90億11百万円増加し962億84百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べて52億円増加し566億92百万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて38億11百万円増加し395億92百万円となりました。

流動負債の増加の主な要因は、未払金が17億29百万円、未払法人税等が16億51百万円、支払手形及び買掛金12億93百万円増加したことなどによるものです。

固定負債の増加の主な要因は、退職給付に係る負債が9億93百万円減少した一方で、繰延税金負債が33億70百万円、長期預り保証金が11億35百万円増加したことなどによるものです。

当連結会計年度末の純資産は、保有する投資有価証券の時価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したことや、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したこと、退職給付に係る調整累計額が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べて171億4百万円増加の2,837億19百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の66.5%から66.3%となり、1株当たり純資産が2,289円43銭から2,450円71銭となりました。

(3)当期のキャッシュ・フローの概況

当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー236億8百万円に対し、「子会社株式の取得」「有価証券の取得」「有価証券の売却」などの投資活動によるキャッシュ・フロー137億39百万円、「短期借入れ」「短期借入金の返済」「配当金の支払」などの財務活動によるキャッシュ・フロー53億17百万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は602億2百万円となり、期首残高より46億8百万円増加いたしました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は236億8百万円(前期比23億10百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益170億14百万円などによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増加は、税金等調整前当期純利益の増加(前期比25億44百万円)、負ののれん発生益の減少(前期比9億61百万円)、投資有価証券売却損益の増加(前期比6億19百万円)、減損損失の減少(前期比3億64百万円)、減価償却費の減少(前期比2億19百万円)などが主な要因であります。

投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は137億39百万円(前期比115億70百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出101億53百万円、投資有価証券の取得による支出84億84百万円、有価証券の取得による支出50億円、有価証券の売却による収入83億36百万円などによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての減少は、投資有価証券の取得による支出の増加(前期比63億71百万円)、有価証券の取得による支出の増加(前期比40億円)、有形固定資産の取得による支出の増加(前期比31億80百万円)、有価証券の売却による収入の減少(前期比21億64百万円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少(前期比31億92百万円)などが要因であります。

財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は53億17百万円(前期比20億71百万円)となりました。これは主に配当金の支払額35億96百万円、非支配株主への配当金の支払額8億72百万円、リース債務の返済による支出7億35百万円などによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増加は、短期借入金の返済による支出の減少(前期比65億42百万円)、連結の範囲の変更を伴わない子会社出資金の取得による支出の減少(前期比9億41百万円)、子会社の自己株式の取得による支出の減少(前期比9億2百万円)、短期借入金による収入の減少(前期比50億83百万円)、子会社が所有する親会社株式の売却による収入の減少(前期比10億9百万円)などが要因であります。

(4)今後の見通し

当社グループを取り巻く経営環境は、国内成熟市場における世帯構成や生活者の食スタイルの変化、国際情勢の不確実性の高まりや新興国の需要増を背景とした原材料動向に注意を要するなど、予断を許さない状況が続くものと想定しております。

本年4月よりスタートした第六次中期3カ年計画では、前中期計画から継続して“「食で健康」クオリティ企業への変革”をテーマに掲げ、前中期計画期間中に新たにグループに迎えた㈱壱番屋、㈱ギャバン、マロニー㈱といった異文化・複数のビジネスモデルの融合、グローバル展開のスピードアップ、グループシナジーの創出に取り組んでまいります。

同時に、当社グループの理念である「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」の実現に向けて、事業視点だけでなく、より幅広い視点から、「お客様」「社員とその家族」「社会」の全てに対して、一企業市民としての責任を果たすべく取り組んでまいります。

次期につきましては、国内においては、グループ視点での事業最適化による競争力強化や新価値創造に取り組むことで、成熟市場における収益力強化に注力してまいります。海外においては、重点エリアである米国、中国、アセアンにおいて、食文化の壁を越えた新たな価値を定着させることで、力強い成長を目指してまいります。

以上をふまえ、次期連結会計年度の売上高は3,013億円(前期比3.2%)、営業利益は170億円(前期比4.4%)、経常利益は180億円(前期比4.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益は100億円(前期比6.9%)を予定しております。

(5)利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当

当社グループは、株主のみなさまへの利益還元を経営の重要課題の一つと位置づけ、グループの収益力向上と財務体質の強化に努めるとともに、連結業績や事業計画などを総合的に勘案しながら、企業結合に伴い発生する特別損益やのれん償却の影響を除く連結配当性向30%以上を基準とした安定的な配当を継続することを、利益配分の基本方針としております。

内部留保金につきましては、将来を見据えた製造設備・研究開発などの投資や新たな事業展開のために活用してまいりたいと考えております。

当期の期末配当につきましては、1株当たり20.00円(前期末比3.00円)を予定しており、中間配当18.00円と合わせて、年間配当は前期に対し6.00円増配の1株当たり38.00円を予定しております。これにより連結配当性向は41.7%となりますが、上記に記載の、企業結合に伴い発生する特別損益やのれん償却の影響を除いた連結配当性向は30.4%となります。

次期の配当につきましては、1株当たり年間40.00円(中間配当20.00円)を予定しております。

(6)事業等のリスク

当社グループの経営成績および財政状態などに影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ないまたは問題視されていないリスクの影響を将来受ける可能性があります。

なお、当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識し、発生の抑制・回避および発生時、経営および事業リスクの最小化に努めてまいります。

①食品の安全性の問題

食品業界におきましては、消費者の品質に対する要求は一段と高まってきております。当社では、製品品質を保証する専門部署である品質保証統括部を中心にしたトレーサビリティの仕組みの構築をはじめ、外部有識者を交えたグループ品質保証会議の開催など品質保証体制の強化に努めております。しかしながら、社会全般にわたる品質問題など、上記の取組の範囲を超えた事象が発生し、当社グループ製品のイメージが低下するなどの事態が発生した場合、または当社グループ製品に直接関係がない場合であっても、風評などにより当社グループ製品のイメージが低下するなどの事態が発生した場合、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

②気候変動や自然災害・重篤な感染症の大流行

当社グループの事業は冷夏・猛暑・暖冬などの天候要因や、大規模な自然災害の発生・重篤な感染症の大流行により、業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

大規模災害発生・重篤な感染症の大流行に際しては、直ちに対策本部を設置し、全社的な対応体制を構築するとともに、食品企業の使命として製品支援・製品供給を第一に考え、生産・供給体制を整備いたします。また、当社グループで災害発生による損害が発生した場合に、いち早く事業を復旧するため、毎年、事業継続計画を見直しております。

③原材料の調達および価格の変動

当社グループ製品の主要原材料は、小麦粉・香辛料などの農産物および材に使用する石油化学製品などであり、原産地での異常気象や紛争の発生、法律または規制の予期しない変更などにより安定調達が困難になるリスクや、さらに需給関係や相場の変動などによる価格高騰で製造コストが上昇し、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

また、当社グループは、原材料の一部を海外から調達しており、為替変動の影響を受ける可能性があります。中長期的な為替変動は、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

④海外事業におけるリスク

当社グループは、米国・中国・台湾・韓国・タイ・ベトナム・インドネシア・マレーシアなど海外において、豆腐製品、カレー製品などの製造・販売、レストランのチェーン展開など食品関連の諸事業を行っております。これらの国々での景気後退・政治的問題、テロまたは紛争、食品の安全性を脅かす事態の発生などにより、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

外食事業におけるリスク

外食事業は、マーケット規模の横ばい傾向が続く中、外食の店舗間だけでなく、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどとの業態の垣根を越えた競争が激しさを増してきております。当社グループが、お客様のニーズにあったメニューや付加価値の高いサービスを提供できない場合には売上高は減少し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

保有資産の価値変動

当社グループは、事業用設備、不動産や企業買収などにより取得したのれんをはじめとする様々な有形・無形の固定資産を保有しております。こうした資産は、時価の下落や、期待通りのキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなどその収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなることにより減損処理が必要となる場合があり、減損処理した場合、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

⑦法的規制などの影響

当社グループは、食品衛生法、製造物責任法、不当景品類及び不当表示防止法、環境・リサイクル関連法規などの各種規制や、海外進出先における現地法令などの適用を受けております。当社グループといたしましては各主管部門と法務部門が連携し、関連諸法規の順守に万全の体制で臨んでおりますが、法的規制の強化、新たな規制などによって事業活動が制限される可能性があり、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

情報漏洩・システム管理におけるリスク

当社グループは、開発・生産・物流・販売などの情報や、販売促進キャンペーン、通信販売などによる多数のお客さまの個人情報をコンピュータにより管理しており、システム上のトラブルなど、万一の場合に備えて最大限の保守・保全の対策を講じるとともに、情報管理体制の徹底に努めております。しかしながら、災害によってソフトウェアや機器が被災した場合のシステム作動不能や内部情報の消失、想定を超えた技術による不正アクセスや予測不能のコンピュータウィルス感染などによって、システム障害や情報漏洩、改ざんなどの被害を受ける可能性があります。このような事態が発生した場合、当社グループの業績・財政状態や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。

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