経営成績
(1)経営成績に関する分析
1.当期の経営成績
当連結会計年度におけるわが国の消費環境は、デフレの長期化に伴う生活防衛意識の高まりから、一年を通して節約志向、選別消費が続く厳しい状況にありました。そのようななか、3月に発生した東日本大震災が今後の日本経済に与える影響は計り知れないものがあり、極めて不透明な環境下で年度を終了いたしました。
当社グループは、第三次中期計画の2年目にあたる当連結会計年度を、中期計画の成否を決める重要な1年と位置づけ、「利益重視」「新しい需要の創造」の2つの施策を軸とした企業活動を推し進めてまいりました。
売上面におきましては、「ウコンの力」シリーズを中心とした健康食品やスパイス製品が順調に推移したほか、子会社ハウスウェルネスフーズ(株)の飲料製品が好調な売上を示しました。また、地産地消の活動と連動した“CURRY ACTION NIPPON”や、映画タイアップ企画などのプロモーションを積極的に展開し、市場活性化を図りました。しかしながら、昨夏の猛暑の影響を受け主力製品の夏場の売上が伸びなかったことや、昨年5月にミネラルウォーター事業を売却したことなどから、当連結会計年度の連結売上高は2,167億1,300万円と前期比1.8%の減収となりました。
一方利益面では、成長分野に積極的なコスト投下を行いましたが、引き続きコストダウン活動に注力したことに加え、健康食品の収益基盤が強化されたことなどから、連結営業利益は120億6,900万円、前期比10.1%の増益、連結経常利益は130億3,100万円、前期比6.9%の増益となりました。連結当期純利益は、震災関連費用や投資有価証券評価損などの特別損失計上がありましたが、52億5,200万円、前期比9.0%の増益となりました。
なお、震災発生後、被災者支援のために農林水産省地震対策本部と連動し、当社グループ製品を支援物資として供給するなど、継続的な支援活動に取り組んでおります。
セグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
<香辛・調味加工食品事業>
カレー製品は、猛暑による家庭での調理頻度の減少の影響を受けるなか、地産地消と連動したエリア毎の活動や積極的なキャンペーンなど市場活性化に努めましたことから、主力のルウ製品「バーモントカレー」「ジャワカレー」が前年並みの売上を確保しました。また、低価格帯製品との競合が激化していた「こくまろカレー」と高級カレー「ザ・カリー」を本年2月にフレッシュアップし、ブランド価値向上に取り組みました。レトルトカレー製品では、「」が前期のインフルエンザ流行による備蓄需要の反動を吸収し、前年の水準を維持しました。
スパイス製品は、新製法を採用した「ねりスパイス」が好調に推移したほか、「洋風スパイス」が引き続きお客さまから大きなご支持をいただき、順調な売上となりました。
シチュー製品は、導入期である秋口まで酷暑が続きましたが、最需要期である年末年始に積極的にキャンペーンを展開しましたことなどから、「シチューミクス」「こくまろシチュー」が前年を下回りましたものの、野菜の甘みがとけ込んだ新製品「ふうふうシチュー」が着実に市場に定着し、全般では堅調な売上となりました。
カップタイプのスープ製品「スープdeおこげ」は、厳しい市場環境下で苦戦を強いられました。
デザート製品は、ロングセラーの「フルーチェ」が、バラエティ製品を投入し、積極的なプロモーション活動を行った結果、増収となりました。
以上の結果、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,285億9,000万円、前期比0.1%の減収、営業利益は115億4,000万円、前期比0.5%の増益となりました。
<健康食品事業>
健康食品は、市場に着実に浸透している「ウコンの力」について、購買層をより一層拡大するべく、販売チャネルの開拓に注力するとともに、朝の素早い水分補給に適したウコンウォーター「ウコンの力モーニングレスキュー」や飲みやすいスティックタイプの「ウコンの力顆粒スーパー」を新発売し、シリーズの強化を図りました。また、スパイスを活用した新機能性飲料「メガシャキ」が、高速道路のサービスエリアや受験生をターゲットとした販促活動への注力で売上を伸ばしたことから、全体では増収となりました。
子会社ハウスウェルネスフーズ(株)の健康食品事業は、「C1000 ビタミンレモン」のバラエティ製品「C1000 ビタミンレモンコラーゲン」を新発売したほか、フレッシュアップした「C1000 リフレッシュタイム」が好調であったことなどが寄与し、前年実績を上回りました。
ダイレクト事業では、製品とユーザーサポートがセットになったダイエットプログラム「ニュートリシステムJ-ダイエット」が多様なメディア活用による顧客接点の拡大に取り組みましたが、残念ながら目標を下回る結果となりました。
以上の結果、健康食品事業の売上高は496億500万円、前期比3.8%の増収、営業利益は1億9,900万円となりました。
<海外事業>
米国の大豆事業は、東部地区を中心に豆腐製品の新規チャネル開拓が進んだことや、現地で受け入れられる豆腐活用メニューの提案などの販売促進活動に引き続き努めましたことなどから、売上を伸長いたしました。
中国の加工食品事業は、昨年2月に合弁事業の見直しを行い、当社が主体となって進めてきたルウ事業に、レトルト事業を統合することで、統一したコーポレートブランドでの展開をはじめ、さまざまな相乗効果が図れました。さらに、現地で親しまれているオリンピック選手を起用した販売促進活動などを通じて、日本式カレーの訴求に努めましたことから、前年実績を大きく上回りました。
カレーレストラン事業は、景気回復傾向にある米国で売上が順調に推移したほか、中国でも既存店が引き続き高いご支持をいただきました。また、台湾・韓国で新規出店を進めた結果、各国の事業がいずれも増収となるとともに、黒字化も達成できました。
以上の結果、円ベースでは、海外事業の売上高は105億2,100万円、前期比5.2%の増収、営業利益は3億5,000万円、前期比16.2%の減益となりました。
<運送事業他>
子会社ハウス物流サービス(株)の運送・倉庫事業は、当社ミネラルウォーター事業譲渡に伴う影響がありましたが、グループ外企業の物流業務の受託拡大が好調に進みましたことなどから、前年実績を上回りました。
当セグメントに含めております「六甲のおいしい水」は、事業譲渡を行いました結果、大幅な減収となりました。
以上の結果、運送事業他の売上高は279億9,700万円、前期比18.0%の減収、営業損失は1,600万円となりました。
2.次期の見通し
今後の見通しでございますが、未曾有の大震災に加え、原子力発電所事故の影響が懸念されるなかで、資源相場の上昇や為替相場の変動などもあり、景気の先行きについては引き続き不透明な状況が予想されます。生活関連業界におきましては、お客さまの生活防衛意識が高まり、商品に対する厳しい選別志向が続く環境下において、震災による消費マインドの変化や原材料価格の高騰が、企業業績に一段と影響するものと思われます。
当社グループにおきましては、このような状況のもと、「食を通じて、家庭の幸せに役立つ」という企業理念に定める当社の社会での役割を全うすることにより、日本経済の活性化に微力ながら貢献したいと考えております。
国内においては、カレー・シチュー・スパイスなどの主力事業について、トップメーカーとして市場活性化のための積極的なプロモーション活動を展開するほか、製品価値向上につながる生産設備の増強にも取り組んでまいります。また、子会社ハウスウェルネスフーズ(株)を含めた健康食品事業については、成長分野として更なる事業の伸長に注力してまいります。海外においては、米国内でアジア系マーケットを中心に拡大してきた大豆事業について、さまざまな施策を実施し現地への浸透をこれまで以上に進めるとともに、中国での加工食品事業や米国・アジアにおけるレストラン事業の一層の拡大に努めてまいります。また、成長が期待できる東南アジアを中心に、新規市場の開拓に取り組んでまいります。
以上により、次期連結会計年度の連結売上高は2,170億円(前期比+0.1%)、連結営業利益は130億円(前期比+7.7%)、連結経常利益は143億円(前期比+9.7%)、連結当期純利益は84億円(前期比+59.9%)を予定しております。
(2)財政状態に関する分析
1.資産、負債および純資産の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて31億1,600万円減少し2,288億1,000万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べて28億6,300万円減少し996億4,400万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて2億5,400万円減少し1,291億6,600万円となりました。
流動資産の減少の主な要因は、債券の償還等により有価証券が28億9,800万円減少したことなどによるものであります。
固定資産の減少の主な要因は、債券・株式等の取得などにより投資その他の資産が135億4,400万円増加したものの、ミネラルウォーター事業の売却や減価償却などによる有形固定資産及び無形固定資産の減少137億9,800万円によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて17億8,700万円減少し475億1,200万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べて15億2,000万円減少し377億5,500万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて2億6,600万円減少し97億5,700万円となりました。
流動負債の減少の主な要因は、支払手形及び買掛金が11億6,100万円減少したことによるものであります。
固定負債の減少の主な要因は、リース債務が2億4,500万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、自己株式の消却等により利益剰余金が24億6,800万円減少したことなどにより、前連結会計年度末と比べて13億3,000万円減少の1,812億9,800万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の78.6%から79.1%となり、1株当たり純資産が1,660円57銭から1,694円59銭となりました。
2.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー185億6,800万円に対し、「有形固定資産の取得による支出」等の投資活動によるキャッシュ・フロー△102億2,800万円、「自己株式の取得」・「配当金の支払」等の財務活動によるキャッシュ・フロー△64億6,600万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は460億9,100万円となり、期首残高より15億2,100万円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は185億6,800万円(前期比+27億5,500万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益95億8,100万円、減価償却費57億400万円によるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、仕入債務の増減額(前期比+7億8,600万円)と投資有価証券評価損(前期比+7億4,200万円)などが主な要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は102億2,800万円(前期比△9,900万円)となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出169億8,700万円によるものであります。
また、前連結会計年度に比べての減少は、債券・株式等の投資有価証券の取得による支出の増加(前期比△55億4,100万円)と、事業譲渡による収入が増加(前期比+53億円)したことが主な要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は64億6,600万円(前期比△36億9,500万円)となりました。これは主に自己株式の取得による支出39億8,100万円と、配当金の支払額24億1,100万円によるものであります。
また前連結会計年度に比べての増加は、自己株式の取得による支出の増加(前期比△39億7,700万円)が主な要因であります。
(3)利益配分に関する基本方針および当期・次期の配当
当社グループは、株主のみなさまへの利益還元を経営の最重要課題の一つと位置づけ、収益性の向上と財務体質の強化に努めるとともに、業績・事業計画などを総合的に勘案し、安定的な配当を継続することを基本方針としております。
この方針のもと、配当金につきましては連結ベースで配当性向30%以上を基準とした安定的な配当をめざしてまいります。
内部留保金につきましては、将来を見据えた製造設備・研究開発などの投資資金や新たな事業展開のために活用してまいりたいと考えております。
なお、平成22年10月29日の取締役会決議に基づき、3,000,000株の自己株式を取得するとともに、平成22年12月28日に4,113,312株の自己株式の消却を実施しました。この結果、発行済株式総数は106,765,422株となりました。
当連結会計年度の期末配当につきましては、1株当たり11.00円を予定しており、中間配当11.00円と合わせまして1株当たり年間22.00円となる予定です。
次期の配当予想につきましては、1株当たり年間22.00円(うち、中間配当11.00円)を予定しております。
(4)事業等のリスク
当社グループの経営成績および財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識し、発生の抑制・回避および発生時の対応に努めてまいります。
1.食品の安全性の問題
食品業界におきましては、消費者の品質に対する要求は一段と高まってきております。当社では、製品品質を保証する専門部署である品質保証部を中心に、トレーサビリティの仕組みの構築にも注力するなど、品質保証体制の強化に努めております。しかしながら、社会全般にわたる品質問題など、上記の取組の範囲を超えた事象が発生した場合、または当社製品に直接関係がない場合であっても、風評などにより当社製品のイメージが低下するなどの事態が発生した場合、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
2.天候や自然災害
当社グループの食料品事業は、冷夏・猛暑などの天候要因や、大規模な自然災害の発生により、業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
この度の東日本大震災発生に際しては、直ちに対策本部を設置し、全社的な対応体制を構築するとともに、食品企業の使命として製品支援・製品供給を第一に考え、生産・供給体制を整備し、対応いたしました。今後は、より直接的な被害を被ったことも想定し、リスクマネジメント体制を強化することにより、災害発生時の損害の軽減を図ってまいります。
3.原材料の調達および価格の変動
当社グループ製品の主要原材料は、小麦粉・香辛料などの農産物および包材に使用する石油製品などであり、原産地での異常気象や紛争の発生、法律または規制の予期しない変更などにより安定調達が困難になるリスクや、さらに需給関係や相場の変動等による価格高騰で製造コストが上昇し、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
また、当社グループは、原材料の一部を海外から調達しており、為替変動の影響を受ける可能性があります。中長期的な為替変動は、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
4.保有資産の価値変動
当社グループは、様々な資産を保有しておりますが、土地や有価証券などの資産価値が下落することにより減損処理が必要となる場合があり、減損処理した場合、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
5.法的規制等の影響
当社グループは、食品衛生法、製造物責任法、不当景品類及び不当表示防止法、環境・リサイクル関連法規などの各種規制や、海外進出先における現地法令などの適用を受けております。当社グループといたしましては各主管部門と法務部門が連携し、関連諸法規の順守に万全の体制で臨んでおりますが、法的規制の強化、新たな規制などによって事業活動が制限される可能性があり、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
6.情報・システム管理におけるリスク
当社グループは、開発・生産・物流・販売などの情報や、販売促進キャンペーン、通信販売などによる多数のお客さまの個人情報をコンピュータにより管理しており、システム上のトラブルなど、万一の場合に備えて最大限の保守・保全の対策を講じるとともに、情報管理体制の徹底に努めております。しかしながら、災害によってソフトウェアや機器が被災した場合のシステム作動不能や内部情報の消失、想定を超えた技術による不正アクセスや予測不能のコンピュータウィルス感染などによって、システム障害や情報漏洩、改ざんなどの被害の可能性があります。このような事態が発生した場合、当社グループの業績・財政状態や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。
7.海外事業におけるリスク
当社グループは、米国・中国・台湾・韓国において、豆腐の製造・販売、ルウカレーならびにレトルトカレーの製造・販売、カレーレストランのチェーン展開などの事業を行っております。これらの国々での景気後退・政治的問題、食品の安全性を脅かす事態の発生などが、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
Adobe Readerのダウンロード
- PDFファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社が配布しているAdobe Reader(無償)が必要です。
Adobe Readerをダウンロードする