食でつなぐ親子の時間!社員の育児経験から生まれた新事業−家族の時間を『Kidslation』と『タスミィ』でサポート!−

食でつなぐ親子の時間!社員の育児経験から生まれた新事業−家族の時間を『Kidslation』と『タスミィ』でサポート!−

「幼児をもつ家庭の食の悩みを解決したい!」という二人の社員の想いから始まった新規事業『Kidslation(キッズレーション)』と『タスミィ』。両事業が誕生するきっかけとなったのは、食を通じた“新しい価値づくり”を掲げるハウス食品グループが2020年にスタートさせた「GRIT(グリット)」と呼ばれる新規事業創出プログラムでした。

GRITは社員が新しいビジネスモデルの創出にチャレンジする挙手制の公募プログラムで、数ある応募の中から第1期のプロジェクトとして採択され、2023年に事業実証を開始させたのが両事業でした。

今回は、それぞれの事業の立案者であり、新規事業開発部のプロジェクトリーダーとして活躍する岸さんと石井さんに、イノベーションを生み出したプロジェクトの概要や、事業立ち上げの原動力となったご自身の育児エピソードについてお話を伺います。

ハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部 岸 健人(きし けんと)

ハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部 岸 健人(きし けんと)

2013年ハウス食品入社。Kidslation事業推進者。
弁護士を志した経験から法務部に配属され、M&Aや海外企業との契約交渉等、国内外の企業法務に幅広く従事。2021年4月にGRITの1期生として新規事業開発部へ異動しKidslation事業を推進。家庭では1児の父として保育園の送迎等を担当し家事育児に積極的に関わっている。

ハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部 石井 英貴(いしい ひでたか)

ハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部 石井 英貴(いしい ひでたか)

2011年ハウス食品入社。タスミィ事業推進者。
自社の開発研究所にてデザート製品開発、新領域開発部にて『味付カレーパウダー バーモントカレー味』等のサブカテゴリーを形成する新製品の開発に従事。2021年4月にGRITの1期生として新規事業開発部に異動しタスミィ事業を推進。休日は家族の食事を担当する、料理が得意な2児の父。

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

岸さんが立ち上げたのは、冷凍幼児食をECサイトでサブスクリプション販売する『Kidslation』という事業です。6ヶ月~1歳6ヶ月向けの「離乳食」ではなく、1歳6ヶ月~6歳を対象にした「幼児食」であることがこの事業の大きなポイントのひとつで、立案者である岸さんのこだわりでもありました。

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

「息子の育児で大変苦労したのが、夫婦共に苦手だった食事づくりでした。乳児期までは、市販されているレトルトタイプのベビーフードを多用していましたが、1歳半になり離乳食を卒業するあたりから、幼児食は出来合いの市販品が少ないことに気が付き、困惑してしまいました。当然、手料理を作らざるを得ませんが、夫婦共働きのため、平日の帰宅後はやるべき家事や育児に追われ、息子が一緒に遊びたいと言っても時間が取れません。そうした慌ただしい日常の中で再認識したのが、子どもと密接に関わる時間の重要性です。そこで『帰宅後のタスクを簡略化すれば子どもとの時間を捻出できるのでは』と考え、夕食の調理時間を大幅に削減できる冷凍幼児食のECサイト販売事業を立ち上げました」(岸)

事業名になっている『Kidslation』は、「Kids(子ども)」と「relation(つながり)」を掛け合わせた造語。“忙しい日々の中でも、子どもとの時間を確保し、密接な親子関係を築くことができる家庭を増やす”といった想いが込められています。

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

お子さんに対する親心から生まれた『Kidslation』ですが、この事業のポイントでもある「幼児食」を開発するにあたって、多くの課題に直面したと言います。
「この事業の難しかった点は、自我が発達し始める幼児期は、イヤイヤ期とも重なり、食べ物の好き嫌いに対する意思表示も強く、根気よく子どもの食事と向き合う必要がある時期であるということです。そこで、リアルな幼児食のニーズを調査するために、ベビー用品店でポップアップストアを出店し、店頭ヒアリングを実施しました。幼児をもつご家庭から、直接製品の意見を伺えた成果は大きく、『量の多さよりも、多種類の野菜が入った料理を食べさせたい』という要望を引き出すことができ、大変、有意義でした」(岸)

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

すべてのメニューに付加価値として5種類以上の野菜を取り入れ、保存方法にはそれらの栄養価や食感を保ちやすい冷凍を選びました。現在、専用ECサイトではパウチ容器のまま手軽にレンジ調理できる、『ふんわり卵の親子煮』や『保育園で大人気の鯖カレー』など、12種類のメニューを販売しています。

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

『Kidslation』の冷凍幼児食の食べやすさの秘密は、保育園の管理栄養士監修による、保育園給食をベースにしたメニューにあります。あまり魚を口にしなかったという岸さんのお子さんも、鯖カレーは「おいしい!」と喜んで食べてくれたそうです。ただ、幼児が好むメニューの開発過程には並々ならぬ苦労が伴いました。

子どもにたくさんの野菜を食べてほしいという想いを形に

「幼児期のお子さまに馴染み深い理想のメニューに近づけようと、多くのお客様の声を聴き、検証をして、改良を重ねるという、プロセスをきちんと踏んだ実証実験が非常に有益でした。例えば、購入者アンケートから見えてきたのが、スライスしたマッシュルームの食感に苦手意識を覚えるお子さまが多いこと。好き嫌いにつながるマイナス要素を極力削るため、マッシュルームを細かくみじん切りにして食感を抑える工夫をしました。こうしたお客様の声を商品にダイレクトに反映できるのも、ECサイトで直販するD2C(Direct to Consumer)ならではの強みだと思います」(岸)

保育園で子どもの夕飯が買える!

一方、石井さんが考案したのは、保育園でお惣菜を無人販売する事業『タスミィ』です。2023年4月からスタートした『タスミィ』は、“保育園に設置された無人販売機”でお惣菜を購入できるこれまでにないビジネスモデルだったことから、SNSで拡散され、働くお父さん・お母さんたちの間で話題になりました。

保育園で子どもの夕飯が買える!

「『タスミィ』という名称には、頑張るお父さんやお母さんを“助けたい”という願いが込められています。ただでさえ帰宅後の家事・育児は忙しいものですが、急な残業でお迎えが遅くなったり、体調不良で夕食を作るのが辛かったり、そんな非常時にも事前注文や店に立ち寄る手間は一切なく、保育園のお迎えついでに、その日、その場の気分で食べたいメニューを選んで購入できます。一袋の惣菜パウチには、大人1人分、子ども1人分の分量が入っているので、家に帰ったら親子で同じメニューを食べて、コミュケーションの時間を増やしていただきたいです」(石井)

『タスミィ』を起案するきっかけは、石井さんが育児休業中のワンオペ育児で抱いた“切実な願い”によるものでした。第2子の生まれるタイミングがコロナ禍と重なり、保育園に通う長女の育児を1人で担当することになった石井さんの孤軍奮闘体験が、子育て家庭の食卓を支える便利なサービスを生み出したのです。

保育園で子どもの夕飯が買える!

「120日間に及ぶ長女のワンオペ育児を経験する中で、日中は仕事、夕方は保育園のお迎え、帰宅後は家事・育児と、息つく暇もないほどの忙しさに、平日の夕食準備が億劫になってしまいました。私は料理が“趣味”と言えるほど得意な方ですが、子どもの食事となるとレパートリーも限られ、時間をかけて作っても食べてくれない日さえあります。長女と過ごす思い通りにならない日々に、徐々に余裕を失っていき、『ときには夕食づくりを休む日があってもいいのでは』という思いに至りました。それと同時に、私自身の中に強く芽生えたのが、将来、娘が親になった時に『自分と同じような子育ての苦労を経験してほしくない』という想いです。ハウス食品グループの社員だからこそ実現できる食を通じた社会貢献として、娘のためにも子育て家庭の未来を変えていきたいという切なる願いが、この事業の起案の背景にあります」(石井)

ワンオペ育児のあまりの忙しさに、お子さんの通う保育園の園長先生に「余った給食を持ち帰ることはできませんか?」と尋ねたことがあったという石井さん。衛生面などの観点から「持ち帰りは難しい」との返答を受けましたが、保護者から同様の声が頻繁に挙がっていたようで、この事業の潜在的なニーズを確信し、背中を押されたと言います。

保育園で子どもの夕飯が買える!

「この事業は4度の事業転換を図りましたが、最初の試みは保育園でのお弁当販売でした。事前にアンケートを実施し、回答に基づいてお弁当の試作や販売方法を決めたものの、購入者からのフィードバックは『お米は必要ない』『自転車での保育園帰りは荷物が多く、お弁当が傾いて液だれする』『家族4人のお弁当を温めると電子レンジ渋滞が起こる』といった散々な指摘で(笑)。お客様の要望と当初案との間にミスマッチが生じている実情を突き付けられてしまいました」(石井)

こうした意見を踏まえて軌道修正を行いながら完成したのが容器のまま電子レンジで1分強温めれば親子で手軽に夕食を楽しめるパウチ入り惣菜です。『トマトの煮込みハンバーグ』や『ごろごろ野菜のキーマカレー』『5種の野菜入り麻婆豆腐』など、各自動販売機には10種類前後のメニューがそろっています。

保育園で子どもの夕飯が買える!

石井さんは、もともとハウス食品の開発研究所で、デザートや新製品などの開発に従事していました。当時から続く人脈が、1年の試行錯誤を経て完成させたメニュー開発の大きな力となりました。

保育園で子どもの夕飯が買える!

「非常に心強かったのが、このプロジェクトに共感してくれた研究所時代の仲間が、子育て世代の研究者たちと『タスミィ応援チーム』を結成し、製品開発に協力してくれたことです。もともとハウス食品の研究部門には、週5日勤務のうちの1日を各研究員にとって興味のある開発や研究に充てて、新規領域の開拓を目指す『One Day a Week』といった取り組みがありました。こうした部署を横断した研究チームが生まれやすい社風もあり、有力な協力者を得られました」(石井)

新規事業として立ち上げた理由

社員のチャレンジを後押しする組織風土づくりに挑むハウス食品グループが、2020年に導入したのが新規事業の公募プログラム「GRIT」。両氏がこのプログラムに挑戦した背景には、将来を見据えたそれぞれの考えがありました。

新規事業として立ち上げた理由

「エントリーの動機は、この新規事業創出プログラムへの参加が、スモールビジネスの起業を一から体験できる千載一遇のチャンスだと捉えたからです。人生100年時代と言われ、定年後も働き続けることを想定し、会社に属さない働き方を模索せざるを得ない状況を考えた時に、GRITに挑戦しないことの方がリスクだと感じました。『Kidslation』は、一つの事業体として“小さな会社”のような形態を目指しており、組み上げたビジネスモデルを自分でカスタマイズできる新規事業ならではの醍醐味があります」(岸)

新規事業として立ち上げた理由

「『タスミィ』も同様に、専門分野を超えた一連のタスクを1人で行う必要があり、メニュー開発から、顧客調査、デザインの調整、保育園への営業、当初は自動販売機の商品補充に至るまで業務は多岐にわたりました。サービスの立ち上げから関わる新規事業なら、未来を変える社会貢献ができるのではないかと考え、GRITにエントリーしました」(石井)

新規事業として立ち上げた理由

2023年にスタートした両事業は共に1年以上が経過しました。そこで、利用者から寄せられた反響や見えてきた課題を伺いました。

「『Kidslation』は、共働きで忙しい方や料理が苦手な方からの需要が高く、サブスクリプションで10回、20回と継続購入されるロイヤルユーザーも数多くいらっしゃいます。これまでは、メニューの種類が固定され飽きられてしまう課題に対応できずにいましたが、プロジェクトメンバーが3人に増員され、余力も生まれたので、新メニューの試作品を開発中です。現在、12種類から選択できますが、2024年の夏を目途に、5種類の新メニューを追加し、今後は継続的に商品を入れ替える仕組みを作っていく予定です」(岸)

「『タスミィ』の自動販売機を稼働させる上で、もっとも興味深かったのが保育園側の反応でした。先例のない新規サービスだけに最初は怪訝な顔をされていた保育園の園長先生も、販売開始を機に商品を購入した保護者からの好意的な意見が顕在化すると、積極的に利用者の声を報告してくださるようになりました。現在、千葉県10カ所の保育園で『タスミィ』の自動販売機を稼働させていますが、新規設置に前向きな保育園からの連絡も多数いただいています」(石井)

育児の経験によって、キャリアを広げる

ハウス食品グループが掲げる“食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。”といったグループ理念は、「お客様」はもちろん、「社員とその家族」そして「社会」へ向けたメッセージでもあります。社員や家族を支えるこうした企業姿勢が、両氏の積極的な育児参加を促し、プロジェクトを立ち上げる原動力となってキャリアを広げる好循環をもたらしました。

育児の経験によって、キャリアを広げる

「育児とキャリア形成は両立するものだと考えています。私も息子が生まれた当時は2ヶ月間の育児休業を取得し、息子が6歳になった現在も、妻と手を取り合って育児をしています。料理は少々苦手ですが、保育園の送迎、寝かしつけも私が担当しています。『Kidslation』の原案は、息子の育児に向き合ってきた体験から生まれました。そのおかげで立ち上げの機会を得られた新規事業はまだ道半ばですが、自分がステークホルダーと交渉してプロジェクトを牽引し、実務がうまく回り出す状況に面白さを感じています」(岸)

「私は2児の父親ですが、第1子、第2子それぞれの育児経験により、異なる視点から生まれた発想や新しい知識を得られたので、自身の人生にはもちろん、仕事の面でも子育てがプラスに働きました。それというのも、第1子の子育て中に、妻が食事のレパートリーに行き詰まっていたことから『味付カレーパウダー バーモントカレー味』の着想を得て商品化に至り、第2子の誕生を機に経験したワンオペ育児から『タスミィ』の原案が形づくられたからです」(石井)

育児の経験によって、キャリアを広げる

仕事の上でも互いに協力し合い切磋琢磨する岸さんと石井さん。『Kidslation』と『タスミィ』の2つのプロジェクトは、現在はグループ内新規事業の実証を行う子会社として設立された『パッチワークキルト株式会社』のなかで展開されていますが、今後1つの事業体として独立させることを目標にしていると言います。

ハウス食品グループは会社の枠を超えて通用する人材の育成を目指す革新的な企業です。『Kidslation』や『タスミィ』のような新事業を通して、食を通じた新たな可能性を皆さまにお届けしていきます。

これからも新展開を予定している『Kidslation』と『タスミィ』、そして5期目に入ったGRITも新しい価値を提供できる新事業を創造すべく、社内エントリーを開始しました。これからもお客様に喜んでいただける事業を展開していく予定です。ぜひ楽しみにしていてください!

▶『Kidslation』公式ECサイト
URL:https://kidslation.jp

▶『タスミィ』
設置保育園(千葉県野田市、印西市、流山市の保育園。下記保育園以外に他1ヶ所、計10ヶ所)

設置保育園 住所
すくすく保育園 千葉県野田市山崎1952
滝すくすく保育園 千葉県印西市滝546-5
けやきの森保育園西初石園 千葉県流山市西初石4-1408-2
けやきの森保育園おおたかの森園 千葉県流山市おおたかの森北2-8
けやきの森保育園おおたかの森第三 千葉県流山市おおたかの森北1-11-4
チャレンジキッズおおたかの森園本園 千葉県流山市おおたかの森西1-22-1
スター★リーフ 千葉県流山市市野谷441-3(運A85街区6)
アートチャイルドケア南流山保育園 千葉県流山市大字木480(B67街区15)
ピオーネ流山保育園 千葉県流山市西平井2-17-3

※保育園関係者以外の方でもご購入いただけます。設置保育園は変更になる可能性があります。

取材日:2024年4月
内容、所属等は取材時のものです

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