オーブンレンジにまつわる疑問の答えを家電コーディネーターの戸井田園子さんに一問一答形式で教えてもらうシリーズ。今回は、レンジ機能をチェック。<br> ボタンひとつであたため、解凍ができるモデルは便利だけど、ムラが出てしまうことも。そんなレンジ機能を上手に使いこなすコツを聞いてみましょう。
【基本編】そもそもオーブンレンジって? 最新トレンドと共に聞きました
【解決編①】オーブンレンジのココがわからない! そんな皆さんの疑問を解消します
【解決編②】オーブンレンジをさらに使いこなす!自動調理とお菓子づくりの話
「各メーカーとも、マイクロ波が放出されるのは上もしくは下の中央部分から。マイクロ波は壁に反射して庫内をグルグル回るので、最も集中する中央が効率良くあたためられる位置となります。ただ、ズレたとしても数秒ほどの違いなので、神経質にならなくても大丈夫」
「ラップをかけるのは、水分を逃したくないものや、カレーのようにこぼれて庫内を汚しやすいものをあたためる時が多いですが、搭載するセンサーの種類によっても変わってきます。たとえば赤外線センサーの場合、ラップと食材との距離が離れていると正確に温度が測れません。かける時はできるだけ近付けるようにしましょう。一方、蒸気センサーの場合はラップをかけるのはアウト。ラップが蒸気をふさいでしまうため、蒸気の温度であたたまったかどうかを判断することができなくなります。いずれにせよ、ラップの有無で迷った時は、取扱説明書をチェックするのが確実ですね」
「とある家電メーカーによると、冷凍食品に設定された加熱時間の目安に500Wと600Wがあるから、どちらも搭載しているとのこと。でも冷凍食品のメーカー側では、電子レンジが2種類あるものが多いので、とも言っているんですよね。あくまで推測ですが、30年くらい前は最高500Wだったオーブンレンジの出力が、技術の進歩で600Wの製品も登場するようになり、それらが混在する時代が長かったのではないでしょうか。それに合わせ、冷凍食品も2種類を表記するようになったのではないかと思います」
「確かに出力の高い方が使用時間は短くなります。でも、後述のとおり消費電力の計算式は出力ワット数×時間なので、出力が高いなら時間が短くても結果は同じ。どちらがエコということはありません」
「単純に比例するそうなので、計算式は500÷600×記載されたあたため時間で求められます。500Wで2分と設定されていたら、500÷600×120(秒)=100(秒)。つまり、600Wなら1分40秒となります」
「レンジ機能のモードの違いは、出力ワット数と時間のプログラミング。たとえば飲料なら突沸しないよう、出力は低めで時間は長めにするなど、それぞれの食材に適した設定となっています」
「冷凍食品の加熱時間には“2個の場合”“4個の場合”などと記載されていますが、必ずしも2倍にはなっていないところを見ると、そう単純ではないようです。参考にするなら、付属のレシピ集が一番。分量を変えてつくる場合は“加熱時間を○倍にしてください”といった記載があるので、確認してみましょう」
「壊れるわけではないので物理的には大丈夫ですが、赤外線センサーが温度を正確に測ることができなくなります。もし使うなら自動あたためは避けて、“600Wで2分”など手動で設定するようにしましょう。ちなみに、レンジの後にオーブンを使う場合は予熱の時間が短くなるだけなので、むしろアリです」
「冷凍した食材は振動する水分子が減っているため、マイクロ波による分子の振動が発生しにくい=あたたまりにくいもの。濡らしたタオルはアツアツにできるのに、乾いたタオルが一向にあたたまらないのも同じ理由です。意外に思うかもしれませんが、氷を電子レンジであたためてもなかなか溶けないんですよ。
時間をかければ上手にできるものの、所要時間15分なんてことになると誰も使ってくれないので、短時間での上手な解凍は各メーカーの課題。最近では東芝、日立、パナソニックが解凍ムラをなくすべく、上位機種の高精細センサー搭載やマイクロ波の技術向上などに注力しています。とはいえ、短時間と上手な仕上がりの両立が難しいのも事実。優しい気持ちで、もう少し見守ってあげましょう」
「冷凍肉で解凍ムラができるのは、先に溶け出した箇所の水分にマイクロ波が偏って反応するため。均等に解凍したいなら、霧吹きなどで全体に軽く水をかけたり、湿らせたクッキングペーパーでくるんだりして水分を足しましょう。私も魚の切り身を解凍するときは、水にサッとくぐらせてからレンジに入れています。また、冷凍の仕方にも配慮が必要。ひき肉などは薄く平たい形状で、辺の長さも揃えた方がいいので長方形より正方形がおすすめです」
最後に、今までご紹介した項目に当てはまらない質問をまとめました。毎日のように使うからこそ、オーブンレンジにまつわる質問は尽きないもの。あなたも普段、気になっていることがあればぜひ教えてください!
「クリーニングモードを搭載したモデルは、オーブンで庫内を焼き切って消臭してくれます。搭載していない場合は、グリル皿に水を張って20分ほどオーブンを運転させましょう。蒸気で汚れが浮くので、レンジ用のウェットシートなどで拭けばきれいになります。
庫内が汚れているとセンサーが働かなくなったり、残った焦げつきが熱せられて発火につながったりすることもあるもの。掃除はとても大切なので、オーブンレンジを選ぶ時も考慮したいですね。掃除しやすいのは、庫内がフラットなタイプ。上部のヒーターがカバーで覆われた『ビストロ』(パナソニック)や、汚れが目立つ白い庫内で取り外し可能なトレーも備えた『ヘルシーシェフ』(日立)など、掃除しやすさに配慮したモデルもあるので、チェックしてみてください」
「水分がある状態で熱を加えるため、煮沸消毒と同じ効果があります。最近ではレンジ用の除菌・消毒ケースといったグッズも増えているので、活用するのもよいでしょう」
「電子レンジと電磁波(マイクロ波)の話題は昔からありますが、こればかりは気にしても仕方がないかな、と。電磁波が人体に与える影響は、きちんと分析したらゼロではないかもしれませんが、それよりも時短できることや栄養素が壊れにくいといった、レンジを使うメリットの方が勝っていると思います。身近にあって電磁波を発生する最たるモノはスマートフォンなので、気にするならまずはこちらを手放した方がいいかも? ちなみに、電子レンジのマイクロ波は水分子を振動させているだけで、スイッチを消せば消えるものなので、加熱後の食品に電磁波が残るようなことはありません」
長きにわたったオーブンレンジFAQ、いかがでしたか? 今回、募集した質問の中で多く見かけたのは「よくわからないから使いこなせない……」という声。今までそう感じていた人も、戸井田さんの回答を読み進めるうちに、多くの疑問が解消されたのではないでしょうか?
ガスコンロと同じようにさまざまな調理ができるオーブンレンジですが、火加減をおまかせできる便利さはガスコンロ以上! 上手に使いこなせば食生活が豊かになるのはもちろん、自分の時間もつくれるから、日々の暮らしがもっと充実するはずです。
家電コーディネーター、All About「家電」ガイド。インテリア&家電コーディネーターとして、テレビや雑誌など様々なメディアで活躍。
(注)戸井田さんは2020年5月17日に急逝されました。謹んでお悔やみ申し上げます。
尚、本記事は2020年3月に執筆いただいた内容です。
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