便利なオーブンレンジも上手に使いこなせなければ宝の持ち腐れ。そこでお客様から募ったオーブンレンジにまつわる疑問の答えを、家電コーディネーターの戸井田園子さんに一問一答形式で教えてもらいましょう。
家電エキスパートがお答え! オーブンレンジ使いこなし術【基本編】そもそもオーブンレンジって?最新トレンドと共に聞きました
家電エキスパートがお答え! オーブンレンジ使いこなし術【解決編②】オーブンレンジをさらに使いこなす!自動調理とお菓子づくりの話
家電エキスパートがお答え! オーブンレンジ使いこなし術【解決編③】あたため、解凍……レンジ機能を上手に使おう
あたためや解凍、下ごしらえに使うのはレンジ。では、グリルとオーブンは? 焼く機能だと認識してはいても、それぞれの使い分けや他の調理機器との違いはよくわからない人も多いようです。グリルとオーブンにお悩みの方は、こちらをチェック。
「違いは加熱方法にあります。どちらもヒーターが熱源ですが、簡単に言うとグリルはヒーターで上下(または上だけ)から表面を直接炙り、オーブンは温度設定をしながら庫内全体の温度を上げ、熱で包みこんで加熱する調理です。
グラタンのように焼き目を付けたい料理や厚みのない肉・魚など中まで火を通さなくてよいものはグリルで。スポンジケーキや塊肉、パンのように全方位から中まで火を通したいなら庫内を一定の温度に保って焼き上げるオーブン。鶏の丸焼きといった高さのあるものも、オーブンでないと中まで火が通りません」
「オーブン機能を使うか、グリル機能を使うかで変わってきます。庫内全体の温度が上がるオーブンでは、上下どちらにセットしても仕上がりに違いはありません。量が多いなら下段を使ってください。一方、グリルの場合は焼き目の付き方も変わるので、基本的にメーカーの使い分けに倣いましょう。ただし私は経験上、ゆっくり焼きたいものには下段を使っています。たとえば鶏の手羽先。下段でグリルすると外がパリパリ、中はしっとりになっておいしいですよ」
「オーブンレンジとオーブントースターの大きな違いは、庫内サイズと出力。庫内が小さく、出力もせいぜい700Wとオーブンレンジの半分程度であるオーブントースターは、焼き直しや焼き色を付けるための調理器具です。例を挙げるなら、トースターでトーストは焼けても、パンをイチから焼くことはできないといったところですね」
「魚焼きグリルの方が高温になりやすく、庫内が狭いので早く火が通るメリットはありますが、熱源の種類が違うだけで、オーブンレンジのグリルもやっていることは一緒です。コンロの魚焼きグリルは、魚を食べることが多い日本人ならではの調理器具で、海外のキッチンでは見かけません。逆に、肉を食べる機会が多い欧米圏などではビルトインのオーブンがキッチンに備わっていることも多く、オーブンを使うのがとても上手です。
わが家の場合、焼き魚はすべて『ヘルシオ』(シャープ)の自動調理機能にまかせて調理していますが、とても上手にできますよ。
ちなみにホイル焼きにする時にトースターを使う方も多いと思いますが、これもグリルの方が向いています」
いろいろなことができるからこそ、どう使えばいいのかわからない……。そんなお悩みも多いようですが、使いこなせばきっとお料理上手になれるはず!
「ほとんどの場合、コンロにできることはオーブンレンジにもできるもの。できないことと言えば、海苔をあぶるくらいでしょうか。先ほどもお話ししたように、オーブンを使うのが上手な国では魚やハンバーグを焼く時も、コンロで焼き目を付けて、あとはオーブンで中まで火を通したり。自動調理だと、グリルとオーブン機能を切り替えて調理することもあります。
煮込み料理もオーブンですね。コンロの火にかけてコトコト煮るより、手間がかかりませんから。フランス生まれのル・クルーゼが鋳物ホーロー鍋なのも、オーブン料理に使えるからだと思います」
「オーブン料理だけなら市販のレシピ本も活用できますし、付属のレシピ集や料理本にあるメニューからつくっていって経験を積むと、いつの間にか他のメニューもできるようになりますよ。コンロではできるのにオーブンでできないというのは、結局、慣れの問題。中まで火が通ったかの判断も、ガスコンロで調理する時と同じように、竹串を刺してチェックすれば解決です」
「調理するメニューによりますが、低温の状態から温度を上げながら焼くのではなく、最初から高温で焼く必要がある時には予熱が必要になります。
これもレシピ集や料理本のメニューをつくっていって、経験の中で学びましょう。コンロで炒め物をする時は、先にフライパンを予熱しておくのがセオリーであるのと同じように、経験から判断できるようになります」
「どちらも基本的には同じ。熱源は過熱水蒸気で、蒸したりゆでたりが得意です。シュウマイをあたためる、ブロッコリーなどの野菜をゆでたり下ごしらえしたりするといったことに利用しましょう」
「面倒と思わず、いろいろな機能を使って慣れることが大切。自己流の使い方を通しがちな人も、まずはマニュアル通りに使ってみてください。とはいえ重量をきっちり量るなど、厳密にする必要はありません。ある程度は適当でも大きな失敗はないし、臨機応変に使えるのはガスコンロと同じ。失敗は成功の母と思ってフレキシブルに使い、成功体験を積んでいけば慣れにつながります。
“機能が覚えられない”という方もいましたが、オーブン・グリル・ウォーター(スチーム)オーブンの違いを理解しておけば、それほど難しいことはありません。オーブンレンジ全般に言えることですが、初めてのオーブンレンジがいきなり使いこなせないのは、初めて手にしたスマホが使いこなせないのと一緒のことなので、まずは使っていって慣れるようにしましょう。なお、『ビストロ』の場合はアプリ上でユーザ—同士が交流できるサービスもあるので、こうした場も利用するといいですね」
「そうそう! 唐揚げはいいんですが、海老フライのようにパン粉を使うものだと“焼きパン粉サンド”みたいになっちゃいますよね……。これはもう、こういうものだと割り切ってください(笑)」
「各メーカーのサイトに掲載されているレシピ集は、大半が季節ごとに更新されています。これらをチェックしていれば、いずれ参考になるものも見つかるのではないでしょうか?」
「“200℃で30分”などと手動で設定すると、オーブンレンジは忠実に作動するので焦げることもありがちです。これを避けるなら、様子を見ながらつくるのが一番。繰り返しになりますが、慣れも必要なので、がんばって経験を積んでいきましょう」
「発想の転換で、予熱の時間は別のことをしてはいかがでしょうか? 私の場合、帰宅したら予熱の設定をしてから着替えに行っています。機種や設定温度によっては、予熱に30分くらいかかることもあるので一概には言えませんが……。
オーブンレンジは、箱形のほったらかし家電としては元祖。料理初心者も上手に使うことで、時短・時産が実現できます。段取りがうまくできないと自覚しているなら、つくりたいものと所要時間を書き出して、時間割を作るのもひとつの方法。完成を同じ時間にするために時間のかかるものから始める、空いた時間に使った調理器具を洗うなど、時間を効率良く使えるようになります」
電気代がかかりそう……。そんなイメージを持つ人も多いオーブンレンジ。実際のところ、どのくらいかかるものなのでしょうか?
「オーブンやグリルは長時間使うことが多いため、電気料金が高そうなイメージを持たれがちですが、都市ガスとの比較であればそれほど大きく変わりません。それよりもほったらかしで別のことができる、時短・時産のメリットに目を向けた方がいいと思います」
「電気代の算出方法はどれも同じで、計算式はそれぞれの出力キロワット数×時間×1kWhあたりの料金。1kWhの単価は全国平均で27円なので、たとえばレンジ1000Wで30分稼働させた場合は1(ワット数をキロワット換算した値)×0.5(時間)×27(1kWh単価)=13.5円となります」
「1箇所のコンセントで使用できるのは1500Wまで。差し込み部分が別でも回路が同じ場合は使えないので、炊飯器と同時使用はNGです。そこで提案したいのが、炊飯器をダイニングテーブルへ移動させること。ご家庭で必ず確認していただかなくてはならないのですが、キッチンとダイニングは回路が分かれていることが多いんです。おかわりするときにテーブルから離れる面倒もなくなりますよ。
ただし、回路が別でも、家全体の総アンペア数を超えるとブレーカーは落ちますのでご注意を。例えば、家全体で40Aの契約だった場合、
・キッチンのオーブンで1000W
・ダイニングの炊飯器で1000W
だけなら落ちませんが、さらに
・エアコン2台1000W
・ヘアドライヤー1200W
を同時に使っていたらアウトです。家全体のアンペアも踏まえて、総トータル消費電力量に注意しましょう」
家電コーディネーター、All About「家電」ガイド。インテリア&家電コーディネーターとして、テレビや雑誌など様々なメディアで活躍。
(注)戸井田さんは2020年5月17日に急逝されました。謹んでお悔やみ申し上げます。
尚、本記事は2020年3月に執筆いただいた内容です。
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