加熱と解凍を行う単機能の電子レンジに対し、オーブン、グリルなど複数の調理機能を搭載するのがオーブンレンジ。時短調理の頼れる味方ですが、「調理機能の違いがわからない」「イマイチ使いこなせない」といった声も聞こえてきます。
オーブンレンジにまつわる疑問は、機能を理解することでずいぶん解消できるもの。そこで最初の一歩として、家電コーディネーターの戸井田園子さんに、オーブンレンジの基本を教えてもらいました。
家電エキスパートがお答え! オーブンレンジ使いこなし術【解決編①】オーブンレンジのココがわからない! そんな皆さんの疑問を解消します
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家電エキスパートがお答え! オーブンレンジ使いこなし術【解決編③】あたため、解凍……レンジ機能を上手に使おう
まずは熱源のお話。戸井田さんによると、一般的なオーブンレンジには大きく分けて「マイクロ波」「ヒーター」「過熱水蒸気」という三つの熱源があるそうです。
戸井田さん「水の分子を振動させて発熱させるのが、マイクロ波。あたためや解凍を行う、単機能の電子レンジに搭載されています。二つ目のヒーターは、オーブンとグリルの熱源として使われるもの。そして最後の過熱水蒸気は、水蒸気を100℃以上に加熱したスチームのことで、“第3の熱源”と言われています。水蒸気で加熱と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、近いのはフライパンで目玉焼きを焼く時。そのまま焼いても火が通るのは白身だけですが、フタをして水を差すことで蒸気が卵の表面を覆って、黄身まで熱が入るイメージですね」
これら三つの熱源を搭載したモデルはスチームオーブンレンジと呼ばれ、国内主要メーカーの中級〜上級グレードは大半が当てはまるそうです。ちなみに、家庭用レンジで過熱水蒸気を初めて搭載したのはシャープの『ヘルシオ』。過熱水蒸気による調理がメインのため、“ウォーターオーブン”の別名を持つモデルです。
戸井田さん「熱源のほかにも、グレードによって差がつく機能はさまざま。たとえばオーブン機能を見ると、最上位グレードの大半はファンを搭載しており、対流を起こすことで熱した空気を熱風として素早く庫内に行き渡らせることができます。これが、いわゆる“コンベクションオーブン”と呼ばれるタイプ。
コンベクションは“対流”という意味で、庫内で熱風を循環させて熱ムラを抑えるため、調理の途中で角皿の向きを変えるといった手間がなくなるのがポイントです。油を使わない揚げ物の“ノンフライ調理”ができるのも、このタイプだけ。扉を開けた時、庫内の正面がメッシュになっていて奥にファンが見えたらコンベクションオーブンの証なので、お手持ちのオーブンレンジが当てはまるかわからない場合は確認してみてください」
また、各種センサーも高価格帯の上位モデルほど数が増えたり、精度が高くなったりするのだとか。
戸井田さん「たとえば、パナソニック『3つ星 ビストロ』の“ワンボウル調理”は、64箇所もの温度を見る“高精細・64眼スピードセンサー”によって実現した機能。このセンサーが細かくチェックした温度に基づいて火を通すので、すべての材料をボウルに入れてセットすれば、あとはほったらかしで料理が完成します。
もちろん、メーカーを問わず上位モデルは全体をより細かく見ることができるほか、マイクロ波の出力もピンポイントで変更可能。たとえば左にごはん、右にお総菜をセットして加熱する場合、温度の低い方からマイクロ波を照射していくのが上位モデル。逆に下位モデルはマイクロ波が固定されるため、ターンテーブルで回転させることでまんべんなくマイクロ波を当てて加熱ムラを抑えています」
そんなオーブンレンジのトレンドは、インターネットと連携するIoT化。これに伴って、一時は数の多さを売り文句としていた自動調理メニューも、最近は減少傾向にあるそうです。
戸井田さん「自動調理メニューを増やしても、すべてをつくる人はそういませんよね。ネット連携なら自分が必要なメニューだけをダウンロードするので、探す手間も省けます。IoT化に加えて、最近注目されているのがAIの搭載。2020年2月現在、国内メーカーで搭載しているのはシャープのみで、ユーザーの使い方を学習しておすすめのメニューを提示したり、地域のスーパーのネットチラシから特売情報を教えてくれたりといったこともできます」
多彩な機能が魅力の上級グレードですが、ネックとなるのはやはり価格です。下位グレードと比べると、つい「これだけのお金を出す価値はあるの?」と思ってしまいがちですが……。
戸井田さん「価値の有無は、人によって変わってきます。よく使う機能があたためだけなら、まったく必要ないですし。とは言え、高精細センサーなどを搭載していれば、あたための際の加熱ムラは格段に減るので、もう一度あたため直し……といった手間がなくなるのはポイント高いですよね。購入時の投資で得られるのは、スピードよりも快適さ。上級グレードなら“肉を解凍したら半分火が通ってしまった!”なんて失敗もなくなりますよ」
戸井田さんによると、同じオーブンレンジでもメーカーごとに特徴があるのだそう。一体、どんな違いがあるのでしょうか?
戸井田さん「料理が好きでお菓子やパンもつくるという人には、東芝の『石窯ドーム』がおすすめ。上級グレードのオーブン最高温度は350℃と、他メーカーにない高温を誇っています。その対極とも言えるのが、パナソニックの『ビストロ』。全体的にバランスが良く、平均点が高いモデルです。“ワンボウル調理”のように時短も得意なので、共働き世帯や料理に時間をかけたくない人におすすめ。
お金がかかる子育て世帯など、一台に高額の出費ができない人には、日立の『ヘルシーシェフ』。同じ機能でも他メーカーモデルと比べて2~3万円ほど価格を抑えられるのが魅力。過熱水蒸気でヘルシーに調理できるのが、シャープの『ヘルシオ』。言い換えると、油分と塩分を落として素材の味で勝負するので、質が高い食材を購入する余裕のある人、たとえばお子さんが自立した夫婦二人の家庭などに最適です」
では、次回からはハウス食品のお客様から募った、オーブンレンジについての疑問にお答えしていきましょう。
家電コーディネーター、All About「家電」ガイド。インテリア&家電コーディネーターとして、テレビや雑誌など様々なメディアで活躍。
(注)戸井田さんは2020年5月17日に急逝されました。謹んでお悔やみ申し上げます。
尚、本記事は2020年3月に執筆いただいた内容です。
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