赤城智美さんコラム日々の生活と、食物アレルギーについて

30日進月歩で進むアレルギーの研究について

公開日:2019年11月29日

知人の子どもは、赤ちゃんの頃から卵アレルギーがあり、誤食するたびに呼吸困難を起こして入院していました。誤食だけでなく、隣家の換気扇から漂ってくる目玉焼きの湯気でもじんましんや喘息が起きていました。鶏肉を食べても同様の症状を起こしたことがあり、自分の子どもは卵だけでなく鶏肉も食べられないのだと知人は思っていたようです。

数年前にある記事で、「鶏のお腹の中には産卵する前の卵があって、メスの鶏を食肉に加工するとき、内臓と一緒にお腹の中の卵も潰されてしまうので、卵の成分が肉に残っていることもある。」という研究者が書いた文章を見つけました。その文章から若鶏のうちに食肉加工された鶏肉には卵の成分が残っていないことを知り、知人に早速伝えました。

彼女はすぐに若鶏の蒸し煮を子どもに作ったそうですが、アレルギーの症状が出る事はなく、美味しく食べられたそうです。その後、知人はスーパーで若鶏と書かれたお肉だけを購入するようになり、自宅で調理した鶏肉料理は、全く問題なく食べられるようになったそうです。彼女は私に会うたびに「鶏肉は、本当はアレルゲンではなかったんだなあ。」とぼやいていました。

その知人は目玉焼きの湯気で子どもにじんましんと喘息が出た際には、看護師から「湯気でアレルギー反応が出ることはないから、お母さんの勘違いよ。卵を食べさせたんでしょう?」と言われ、悔しい思いをしたと話していました。しかし、最近では、「湯気にタンパク質が含まれていることもあり、アレルギー反応が出ることもあるんですよ。」と医者に言われ、「湯気の中に成分が混じり、アレルギー症状が出ることもあるのだとやっと認められた気がして、うれしいような笑ってしまうような不思議な気分だった。」と話していました。知人の話を聞いて、アレルギーの研究は、日進月歩で進んでいるのだと感じました。

食物アレルギーをめぐる出来事は、実際に体験した事であっても、周囲の理解を得られるまでは「不確かなできごと」として取り扱われてきました。食物アレルギーがある人は、そんな理不尽な事柄を沢山経験しながら家族と一緒に乗り越えてきたのだと思います。知人とは「笑って話せる日が来てよかったね。」とお互いにエールを送りました。