赤城智美さんコラム日々の生活と、食物アレルギーについて

26遠足のおやつ

公開日:2019年7月5日

子どもが低学年の頃「遠足のおやつ」は300円までと決まっていたのですが、アレルギー対応のお菓子は沢山入ったものが多く、値段が高かったので、どうしたものかといつも悩んでいました。初めての遠足の時は、家でストックしているお菓子を全部机の上に並べて、どれを食べたいかのベスト3を子どもに聞いて、500円玉サイズのラムネを5個、大きめの塩せんべい3枚、100円玉サイズのビスケット10枚を透明なビニール袋に入れて、担任の先生に300円相当と認めてもらってから、遠足当日を迎えました。

卵、乳、小麦がアレルゲンだったので友達と交換したおやつは食べられなかったのですが、それでも「友達と取り換えっこしてみたい」と子どもが言うので「交換するのはビスケットにしたら? ベスト1のラムネは食べたいよね。ビスケットは沢山あげてもちょっとは残るだろうから自分も食べられるよ」とアドバイスして送り出しました。

「ただいま」と遠足から帰ってきた姿は明るく元気だったので、安心したものの「使ったタオルや空のお弁当箱を出して」と言ってもリュックの中身をなかなか出しません。きっと何かあったのだろうと思いリュックを開けてみると、子どもが食べられないガムやチョコレート、クッキーなどがビニールの中にいくつも入っていました。「食べられないのによく頑張ったね」と言うと「それは僕が頂戴って言ってもらったんだよ」「でもアレルギーのビスケットは硬くておいしくないって最初に誰かが言ったから、みんなラムネとか塩せんべいを欲しがったんだ」と言い、リュックの底からは割れたビスケットがビニール袋に10個分入ったまま出てきました。

塩せんべいは子どもが自分で食べて、ラムネをあげたから自分としては満足なんだけど、自分が好きなビスケットを食べてもいないうちから「硬くておいしくない」と言われたことが「すごく悲しい」と言っていました。きっとビスケットだけではなく、自分まで否定されたような気分だったのだと思いました。「みんなの前でおいしいおいしいってバクバク食べちゃえばよかったのに」と、努めて明るく私が言うと「ホントだ。今度はそうするね。ちょっと気分が負けちゃっただけー」と言いながらそのビスケットを頬張ったときは、いつもの笑顔に戻っていました。友達と交換した「食べられないお菓子」は私がもらい、代わりに大好きな果物やゼリーを沢山プレゼントしました。

「アレルギー用のものはおいしくない」という何気ない言葉は、その後も様々な場面で大人からも子どもからも言われました。それは本人にとって「すごく悲しい」ことなのだとわかっていただけるといいのですが。