公園パパ会議~コロナ禍で変わりつつあるパパ料理~

公園パパ会議~コロナ禍で変わりつつあるパパ料理~
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パパたち、家事・育児を楽しみながらできていますか?「主夫」や「育休」といった選択をし、一足早く家庭に軸足を置いたり、子育てにコミットしたりしているパパたちが語るリアル。
今回のテーマは「コロナ禍で変わるパパ料理」について。

日本で唯一のパパ料理研究家として全国のパパや親子向けの料理教室を開くなどパパ料理を広めている滝村雅晴さんと、二人の娘の子育て中で日々家族に料理をつくっている「秘密結社主夫の友」の杉山錠士さん(兼業主夫放送作家)は、コロナ禍でいろいろな環境が変わる中でパパ料理はどうなっていっているのか?ということについて公園の井戸端会議で話し合っているようです。

20代パパの7割が夕食を家で食べる!?

杉山さん(以下敬称略)「滝村さんが推奨している“パパ料理”改めてどんなものか教えてください」

滝村さん(以下敬称略)「はい。パパ料理は、家族のおなかがすいた時に、家族が食べたいものを、家族が喜ぶようにつくる料理です。よく“男の料理”との違いを聞かれますが、“男の料理”というのは、自分のおなかがすいた時に、自分が食べたいものを、自分の好きなようにつくるもの。つまり、 “パパ料理”は“家族軸”、“男の料理”は“自分軸”というところが一番違います」

杉山「滝村さんが活動を始めた10年ほど前は、まだ“パパ料理”といってもピンと来る人はあまり多くなかったんじゃないでしょうか?」

滝村「そもそも僕自身も料理を始めたのが、長女が生まれてからですし、最初は完全に“男の料理”で妻を困らせたタイプなので、あまり偉そうには言えませんが、確かに少なかったと思います。でもその現状は明らかに変わってきているんです」

杉山「料理をするパパは増えているんですか?」

滝村「2019年10月に全国の共働き世帯のパパママ1000人を対象にアンケートを行ったのですが、その時わかったことのいくつかが衝撃的でした。まず、『1週間に何回家族全員で食事をしていますか?』という質問に対して、『週に4日以上』と答えた20代のパパが約7割もいたんです」

杉山「7割!それは確かに多いですね」

滝村「そもそもこのアンケートは共働き限定ですし、週4日といっても週末も含まれるのですが、それでも10年前に比べたら明らかに多いと思います。また、20代だけでなく、30代でも6割以上、40代、50代、60代も4割は超えていました。つまり、高度成長期やバブル期のような『食卓にパパがいないのは当たり前』という状態ではないということです」

杉山「確かにそうですね。でも、つくる人はまだまだ少ないんじゃないですか?」

滝村「それがそうでもないんです。まず『料理がしたいですか?』という質問には20代から50代で5割を超えました。さらに『週に2回以上料理をつくる』と答えたパパは20代、30代で約4割もいたんです」

コロナ禍は家族の料理スキルを底上げしてくれた

杉山「それが昨年の秋の話ですよね。コロナ禍となった今はまた状況が変わっていると思いますがどうでしょうか?」

滝村「在宅勤務をする人が増えたり、家族で過ごす時間が増えている中で料理をつくるパパは増えていると感じます。僕の周りにも料理はまったくしないというパパは意外といたのですが、その人たちが軒並み料理をするようになっています。傾向として感じるのは『子煩悩だけど料理はしなかったパパがつくるようになっている』という感じです。子どもを公園に連れて行ったり、一緒に遊んだり、お風呂に入れたり、ということは今までも積極的にしてきたけど、料理は妻に任せていたというパパですね。こういう人たちはそもそも家族に思考が向いているので、ちょっとしたきっかけで料理にも取り組むようになりやすいです。料理は起きている間、1日3回、およそ6時間ごとにやってくるミッションです。こんなに回数が多い家事はほとんどありません。今回、多くの人が今までとは違って平日日中に家族みんなで過ごしたことで、見えなかった家事にスポットが当たりました」

杉山「それで、こんなに大変だったのか、と」

滝村「そうですね。それでいてその状況について誰にも文句を言えませんから、結局協力しながらやるしかないですし、どうせならポジティブに料理に臨もうと思える人も多かったと感じています。もちろんこれは子どもたちも含めたことで、家族全員が料理と向き合うことになったために、料理が家族の共通言語になったわけです」

杉山「でも、料理を始めたからといってもすぐにはうまくなりませんよね。その辺りはどうですか?」

滝村「それはそうですね。簡単にうまくいかないからパパ料理研究家はまだまだ必要かなと(笑)。今回の状況が幸いしたのは、1~2か月という割と長い期間だったことです。料理のスキルが上がるかどうかはその人次第ですけど、これだけの期間があると、ある程度は慣れてくるところもあるでしょうし、単純に『一品つくる』とか『一食つくる』ということだけでなく『料理を回す』という感覚を得ることができたと思います。また何回もつくるうちにメニューは変わってくるんです」

杉山「どう変わるんですか?」

滝村「料理をしなかったけど食べるのが好きな男性が最初につくるのは『外食メニュー』です。外で食べたおいしいものの再現ですね。小難しい横文字の名前のイタリアンとか」

杉山「どうだ?これうまいだろ?的な」

滝村「それもありますけど、もう一つ外食メニューを選ぶ理由があって、それは『妻が普段つくらないメニュー』であることです。普段食べているメニュー、特にそれが妻の得意料理だったとしたら、子どもたちは食べる時におのずと比べますよね。そしてまず勝てません。残念ながら。だから同じ競技では勝負をしないんです」

杉山「万が一勝ってしまったら、それはそれで鳥肌ものですね」

滝村「その場では笑っていても、絶対ママは忘れませんから、たぶん(笑)。で、外食メニューは、最初は新鮮でおいしいのですが料理にもTPOがあります。お祝いの日や記念日には外食メニューはいいですけれど、体調が悪い時にはさっぱりと消化のいい料理がいい。毎回時間と食材費をかけてつくる外食メニューは家庭料理としてはどうなんだろう?ということに気付いていく。そして結果的に汎用性が高くて、普段から繰り返し食べたいものをつくることになっていくんです」

杉山「みそ汁みたいなものですね」

滝村「まさにそういうことですね。さらに僕の周りでは子どもにも料理をさせるようになったパパが増えました」

杉山「確かに子どもにも覚えてもらったら助かります」

滝村「得意じゃないパパが料理をすることで、子どもにとっても料理のハードルは下がりますし『私にもできそう』ってなりますよね。そうすると、結果的に家族全体の料理スキルの底上げとなります。もう誰が体調を崩しても誰かが料理をつくれる状態です」

杉山「なんて頼もしいことでしょう」

オンライン料理教室だからできたこと

杉山「料理をするパパが増えると、滝村さんが以前からやってきた男性向けの料理教室に興味を持つ人は増えるんじゃないでしょうか?」

滝村「それはもちろんそうだと思います。しかし、残念ながら今までのような料理教室はなかなかできません。人が集まることも難しいし、料理をして一緒に食べるというイベントだとなおさら難しいです」

杉山「そういう中で、どうやって活動をしているんですか?」

滝村「オンラインでの料理教室を始めました」

杉山「オンライン!……それで教えるのは難しくないですか?」

滝村「もちろん最初は試行錯誤です。とりあえず手持ちの環境で何ができるか試して、足りない機材を一つ一つ買いそろえました。一番重要なのは、手元でつくっている映像を参加者に見せることなんです。僕の顔が見たいのではなく。参加者にアンケートをとってわかりました(笑)。それとワンオペで運営できる方法をつくり上げることを何度も繰り返すうちに、今はもうスムーズに実施できるようになりました」

「パパの料理塾オンライン」(https://www.bistropapa.jp/juku)

杉山「参加するパパたちは当然自宅のキッチンから参加するんですよね?」

滝村「もちろんそうです。自宅のキッチンにパソコンや、タブレット、スマホを設置してもらってオンライン会議アプリのZOOMでつなげて、一緒につくります。でもこの状況がいいことだらけなんです」

杉山「わざわざ会場まで足を運ばないでいいというのは参加のハードルが下がりますよね?」

滝村「はい。まずはそれがいいところです。また事前にレシピと用意するものを送っておくと自分で買ってきておいてもらえるし、会場の場所を押さえなくてもいい。こちらの手間もコストも格段に省けます」

杉山それは運営側としてはありがたいですね(笑)」

滝村「でも、オンライン料理教室の一番はその時にパパがつくった料理を、実際に家族が食べてくれるということです。今までたくさん料理教室をやってきて感じていたことなんですが、料理教室で多少の料理を覚えたからといって参加したパパが全員、家で復習のためにつくるとは限りません。材料もすべてそろってお膳立てされた環境で、教えてもらってつくる料理教室と、買い物して家のキッチンでつくるのとはだいぶ違うんですよね。でも、オンラインになったことで、パパたちは自宅の慣れたキッチンで、家族の前で料理をします。また、料理教室でつくった料理は参加した人だけで食べますが、オンラインの料理教室は、自宅でつくるからこそ家族と『いただきます』ができるのです」

杉山「確かに料理教室でつくった料理は家族がその現場に来ない限り食べられなかったですよね」

滝村「他にも、いいことはあります。リアルな料理教室より講師と参加者の距離が近いので質問もしやすいです。甜麺醤がないけどどうすればいい?薄力粉ではなくて米粉でもいいですか?5人分の分量は?と、料理中に出てきた疑問がすぐに解決できます。また、今(2020年8月)は毎週土曜日の夕方から実施しているのですが、そもそも週末に料理を担当するパパにとっては、新しいメニューに挑戦するチャンスにもなりますし、何よりメニューを考えなくてもいいというメリットがあります」

杉山「確かに!メニューを考えるのって大変ですもんね」

滝村「そうなんですよね。これは男女関係なく料理をする人みんなの悩みどころです。こういったいいことが積み重なっていく状況ができると、料理をオンラインで楽しむという新しい習慣ができます。そうなれば、僕の料理教室がない時でも今はいろいろな動画がありますから、そういうのを見ながら料理をするようなケースも増えていってどんどん楽しくなっていくと思います。もちろん、その習慣は子どもにも広がるので文化になっていくんです」

「パパの料理塾オンライン」(https://www.bistropapa.jp/juku)

杉山「本当にいろいろと大変な状況ですけど、家族の料理についてはいい面もあったんですね。最後に滝村さんが料理をするようになったパパや、これから料理をしてみようと思っているパパに向けて、今伝えたいことはなんですか?」

滝村「もともと思っていることなんですが『おいしく食べるより楽しく食べる』ということです。おいしいものは世の中にたくさんありますし、料理が上手な人もたくさんいます。そこと勝負しても勝てなくて当たり前です。でも、楽しく食べることは今すぐに誰にでもやろうと思えばできます。特にそれは家族で一緒にできることです。そして、結果的には『楽しく食べたらおいしい』ですよね。特に子どもがいると、ご飯を食べている時に、ああもうそういう食べ方しないで!みたいにイライラすることもあると思うんですけど、それをしたらやっぱり空気が悪くなりますから、できるだけ穏やかにしたいですよね。そういうことを心掛けると、家族の食卓はもっともっと楽しくなります。そしておいしくなります。そのために料理をしてみてはどうでしょうか?」

杉山「なるほど、おいしくよりも楽しく!僕も心掛けていきます!」

♪~夕焼小焼~

杉山「あ、5時ですね。よーし、じゃあ今日は楽しくつくるぞ!」

滝村「献立は決まっているんですか?」

杉山「はい、一番楽しい料理ということで、チャーハンにします!」

滝村「チャーハンが楽しいんですか?」

杉山「チャーハンが楽しいというよりも、中華鍋を振るのが楽しくて」

滝村「好きな調理道具を使うのって楽しいですよね~」

杉山「そうなんですよ~」

滝村「結構本格的な中華鍋なんですか?」

杉山「はい、中華街で買ったんで」

滝村「それはテンション上がりますね」

杉山「よーし、頑張るぞ!」

夕暮れとともに流れるチャイムが “定時”を知らせ、この日の会議は終了。
さあ、いきなり難しい料理ができなくても、自分が楽しめる料理に挑戦してみませんか?

プロフィール
滝村雅晴

パパ料理研究家、株式会社ビストロパパ代表取締役。料理を通して、男性の家事参画、働き方改革を推進する、日本で唯一のパパ料理研究家。家族の食育・共食と健康づくり、ワークライフバランスなど提案。
・NHK「あさイチ」「きょうの料理」「まいにちスクスク」出演
・著書「パパごはん」(マガジンハウス)、「パパ料理のススメ」(赤ちゃんとママ社)
・ブログ「ビストロパパ~パパ料理のススメ~」(http://blog.livedoor.jp/tuckeym/)は、13年間以上毎日連続更新中
・パパの料理塾 主宰。大正大学 客員教授。農林水産省 食育推進会議 専門委員。
・日本パパ料理協会 会長飯士。NPO法人ファザーリング・ジャパン トモショクProjectリーダー。

プロフィール
杉山錠士

子育て情報サイト「パパコミ」編集長、兼業主夫放送作家・株式会社ジョージ代表取締役。
妻がフルタイムで働いている共働き家庭であることもあって、2008年頃から家事育児に軸足を置くことを決意。“兼業主夫放送作家”へ。現在も16歳と8歳の娘たちのパパで炊事や掃除など家事全般を担当。

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