ウコンの黄色色素クルクミンについての研究

黄色色素クルクミンは、カレーに使われる主要なスパイスであるウコンという植物に含まれる成分で、近年、その健康機能性が注目されています。
私達は、クルクミンをたくさん含む品質が良いウコンを作ることを目指して、主に、ウコンの中でどのようにしてクルクミンが作られるか?ということについて研究しています。

クルクミンとは

クルクミンはカレーの黄色の素となる成分で、ショウガ科植物のウコン(英語名:ターメリック、学名:Curcuma longa L.)の根茎(イモの部分)に蓄積しています。
近年では、抗酸化効果や肝機能改善効果など、クルクミンが持つさまざまな健康機能についての研究がなされ、沢山の報告が出されています。しかし、ウコンという植物の中で、クルクミンがどのようにして作られているか?という点については、長い間、謎のままでした。

写真:ウコン全体図、根茎(イモ)の部分、根茎を切ったところ

最近の研究成果

クルクミンの生合成経路を解明

ウコン中でクルクミンが作られる時の材料になると思われた物質について、それらのラベル化合物(注1)を与えてウコンを培養し、そのウコンの中で作られたクルクミンを分析することにより、クルクミンの生合成経路、すなわち、材料物質がどのように組合さってクルクミンになるかということを解明しました。
クルクミンが作られる経路には2つの仮説があり、これまで30年以上に渡って、どちらが正しいのかわかっていませんでしたが、私達の研究により、正しい経路が明らかになりました。この成果は学術論文として、2008年にBiosci. Biotechnol. Biochem.誌に掲載されました。

ラベル化合物を使用した実験によるクルクミン生合成経路の解明

ラベル化合物を使用した実験によるクルクミン生合成経路の解明

注1 ラベル化合物とは:化合物中の一部の炭素(12C)や水素(H)を質量数が異なる炭素(13C)や重水素(D)に置き換えてラベル(目印)をつけ、分析時に区別がつくようにした物質のこと。

クルクミンを作る酵素の遺伝子を単離

東京大学大学院農学生命科学研究科醗酵学研究室との共同研究で、ウコンの中でクルクミンが作られる時に働く酵素の遺伝子を単離しました。単離した遺伝子の解析を進めたところ、ウコン中では、DCS(Diketide CoA synthase:ジケタイドCoA生合成酵素)とCURS(Curcumin synthease:クルクミン生合成酵素)の2種類の酵素が働いてクルクミンを作っている可能性が高いことがわかりました。
現在までに、DCSの遺伝子は1つ、CURSの遺伝子は3つ単離されています。
DCSとCURSは共に、種々の植物から単離されているtype III PKS(Polyketide synthase:ポリケタイド生合成酵素)(注2)の仲間ですが、他のtype III PKSの仲間は全て、マロニルCoAという物質を付加する働きをする酵素であるのに対し、CURSはマロニルCoAではない物質を付加する働きをする珍しい酵素でした。
これらの遺伝子単離に関する研究成果は、学術論文として2009年にJ. Biol. Chem.誌およびFEBS Letter誌に掲載されました。

クルクミン生合成経路および関与酵素

クルクミン生合成経路および関与酵素

注2 type III PKSとは:植物の中でポリケタイドという成分が作られる時に働く酵素の総称。ポリケタイドにはさまざまな種類があり、ジケタイドCoAやクルクミンもポリケタイドの一種である。植物からは、さまざまな種類のポリケタイドを作るさまざまな種類の酵素が見つかっており、構造や性質が似ているこれらの酵素をtype III PKSと総称している。

研究成果の外部発表