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地域、人種、世代によってこんなに違う!アメリカの食文化に見られるSDGs意識を現地からレポート

地域、人種、世代によってこんなに違う!アメリカの食文化に見られるSDGs意識を現地からレポート

多様性の国・アメリカ。州ごとに特色があり、さまざまな考え方の人が暮らす国だからこそ、SDGsについては大企業の取り組みが人々の意識へ大きく影響しているそうです。なかでも、誰もが生活に欠かせない「食」の文化において、その意識転換が見られるのだとか。All Aboutガイドで2018年からマサチューセッツ州で暮らす小池りょう子さんに、現地からレポートしていただきました。

そもそも、アメリカのSDGs意識ってどうなの?

私がアメリカ東海岸のマサチューセッツ州に移住して4年。在米日本人やアメリカ人の誰に聞いても「アメリカのSDGsは世界一遅れていると思う」という答えが返ってきます。

スーパーでは大量に並ぶ炭酸飲料の売り場に圧倒され、ショッピングモールでは料理のテイクアウト用プラスチック容器や、飲み残しも入ったペットボトルを平気でゴミ箱に入れる人だらけ。パーティーでピザやフライドポテトが余れば、プラスチックのお皿ごと1つのゴミ袋へ放り込むアメリカ人。お皿を洗って再利用し、余ったフードを「もったいない」と箱に入れて持って帰ると「日本人はプレートまでリユースするの?」と驚かれました。

そもそも、アメリカのSDGs意識ってどうなの?

州や町だけでなく、1ブロック違えば住んでいる人種はもちろん、環境への意識も違うアメリカ。手入れが行き届いた庭に、生ゴミ処理用コンポストがある家が多い町を通り過ぎれば、積み重ねられたピザの空き箱と大量のペットボトルが無造作にゴミとして放り出されているエリアが出現し、地域によるギャップも顕著です。

また、在米日本人に聞くと、今でも中高年アメリカ人の「この国には資源なんて無限にある。それを消費するのは美しいことだ」という発言に驚くことがあるそうです。日本人としては昭和でとっくに終わったと思える「消費は美徳」の価値観が残る一方で、わが家の小学6年生の娘は、現地校の社会科の授業で「炭酸飲料のペットボトルがどれだけ海を汚しているか?」や「牛を一頭分、食肉として出荷するのに生産や物流の過程でどれだけ二酸化炭素が排出されるか?」を習っています。

そのため、アメリカでのSDGsへの意識は人種や地域、州はもちろん、世代によっても大きく差があると感じます。上の世代が資源を無駄に消費してきたと感じている若い世代にとっては、エコバッグを使うことも、植物性ボトルのミネラルウォーターを選ぶことも、紙製のストローも、プラスチック製のレジ袋が有料であることも、すべて当たり前のサスティナビリティなのです。

多様性の国アメリカでは大企業がSDGsを牽引

多様性の国アメリカでは大企業がSDGsを牽引

国土が広く、州ごとに文化や住む人種も違うアメリカでは、サスティナビリティについては全米チェーンのスーパーやカフェなど、大企業の取り組みが人々の意識へ大きく影響していると感じます。

特に「食」に関するSDGsについては、スーパーマーケットへ行けば食品メーカーの姿勢がよくわかります。そして、ミートオルタナティブ(代替肉)などのプラントベースフード(植物性食品)を、スーパーや食品メーカーなどの企業が全面的にアピールすることで「植物性食品を摂ることは、健康になれるだけでなく環境維持へも貢献できる」と顧客も気づき始めたようです。

多様性の国アメリカでは大企業がSDGsを牽引

たとえば、全米チェーンのスーパー「ホールフーズ」では、地元産の商品には「Local」と表示し、地産地消を促しています。娘やその同級生に「ローカルプロダクトって何がメリットかわかる?」と聞いたら「長距離のトラックで商品を運んでいないからCO2の排出を抑えているんでしょ?」という答え。私たち世代よりも子どもたちの方がはるかにSDGsへの意識が高いのでは?と感じます。

脱動物性食品が非常に進んでいる

SDGsに大きく関わるプラントベースフードのなかでも、アメリカの市場を賑わせているのが「ミートオルタナティブ」です。ヴィーガンやベジタリアン向けの店で提供されていた食材が、あっという間に多くのレストランへ広がり、全米チェーンのカフェやファストフード店には、サンドイッチやハンバーガーは代替肉を使ったメニューがあります。

脱動物性食品が非常に進んでいる

スーパーの冷蔵、冷凍食品には、動物性の原材料を一切使わないという意味の「プラントベース」や「ミートレス」と表示されたコーナーがあり、冷凍のピザやハンバーガーなど、本物の肉製品にしか見えないパッケージがズラリと並びます。多くは大豆が主原料の商品ですが、何もいわれなければ肉だと疑わないジューシーさと風味は、食べるたびに技術の進歩に感心させられます。

「豆腐(TOFU)」はプラントベースフードの代表的食品

「豆腐(TOFU)」はプラントベースフードの代表的食品

「プラントベース」コーナーで、大きな売り場面積を占めるのが「豆腐(TOFU)」です。私の周りのアメリカ人は「80年代にはアメリカ人がもっとも嫌いな食材だった豆腐(TOFU)だけど、最近はどこで食べてもおいしい」といい、定番のスターフライ(炒め物)からスムージーまで、日本人が知らなかった豆腐料理を次々と教えてくれます。

レストランでは肉、魚に加えて「豆腐(TOFU)」はメインディッシュとして大きな存在感があり、動物性食品を積極的に摂らないヴィーガン、ベジタリアンはもちろん、最近ではフレキシタリアン(肉の摂取をなるべく控えている人)にも圧倒的に人気の食材。マサチューセッツ州ボストン近郊の大手スーパーマーケットでは、豆腐(TOFU)を置いていないところなんてないのでは?と思うくらいの普及率です。

日本人をはじめ、アジア人が比較的多い西海岸だけでなく、東海岸でも和食ブームと豆腐(TOFU)の勢いは収まる様子がありません。アジア系の食料品店ではさまざまな人種のファミリーやカップルがスーパーで豆腐(TOFU)をショッピングカートに入れるのを見かけます。健康や食への関心が高い人にとっては、日常的な食材として認知されていることがわかります。

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「食品ロス対策」が文化に根づいてきている

「食品ロス対策」が文化に根づいてきている

大量生産、大量消費のアメリカでは、食品ロス対策でも日本と大きな違いがあり、基本的には食事を残したら生ものでも持ち帰れます。持ち帰ってからの衛生管理は客の自己責任なので、「寿司(Sushi)」でも「ラーメン(Ramen)」でも持ち帰る人は多く「生ものも汁物もOKなの?」と最初は驚きました。

残り物を持ち帰るなんてケチくさくて恥ずかしいと感じている世代は、今でも持ち帰り用の袋を「ドギーバッグ(犬用に食べ残しを持ち帰る袋)」と呼びますが、どうやら最近では死語になってきているようで、「To Go Box」などと呼ばれることが多くなりました。食品ロスが激しいアメリカで、廃棄処分を減らすために残した料理を持ち帰ることは環境にも良いことだ、という考えが根づいてきたのでしょう。残り物は犬ではなく人間が食べるのも当たり前になりつつあるのです。

これからのサスティナビリティは、SDGs感度の高いフードカルチャーを持つ人や企業が、大きく牽引していくのかもしれません。

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小池 りょう子

All About 「車」ガイド。元トヨタアムラックスレディ。自動車営業インストラクター、クルマ&バイクフリーマガジン編集者などを経て、フリーランスの自動車ライター/エディターへ。2018年より米国マサチューセッツ州在住。


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