「食で健康」な社会をつくるために
“ハウス流”CSRが果たすべき「3つの責任」

ハウス食品グループにとって、2014年度は第四次中期計画の最終年度でした。「品質保証力の向上」「環境経営の実践」「コンプライアンス・リスクマネジメントの強化」をCSRの重点課題「3つの柱」として、本業を通じて推進してきました。今回は、この「3つの柱」の取り組みを振り返り、新たにスタートした第五次中期計画での“ハウス流”CSRについて、ハウス食品グループ本社社長・浦上博史とCSR方針策定の総責任者・藤井豊明が意見を交わしました。

第四次中期計画の3年間を振り返って

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ハウス食品グループでは、2012年に策定した第四次中期計画が2015年3月で終了し、4月から第五次中期計画がスタートしました。本日は第四次中期計画を振り返りながら、今後のCSR方針についてのお話をしていただきたいと思います。

浦 上

第四次中期計画では、近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の教えになぞらえて、“本業としてのCSR”の取り組みを考えました。そして「買い手よし(お客様よし)」として「品質保証力の向上」を、「世間よし(社会よし)」として「環境経営の実践」を、「売り手よし(企業、社員よし)」として「コンプライアンス・リスクマネジメントの強化」をそれぞれ柱にして、取り組みを進めてきました。

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それぞれのテーマで取り組んだ内容を具体的にお聞かせください。

藤 井

まず一つ目の「品質保証力の向上」では、お客様の声を製品・サービスに生かすためのQUIC(品質向上活動)の推進と、他の食品メーカーで2013年末に起きた異物・薬物の混入事件を教訓としたフードディフェンスに対する強化を図りました。また人材育成にもかかわりますが、危機管理における認識のあり方を、勉強会を含めて啓発しています。
二つ目の「環境経営の実践」では、お客様視点での環境への取り組みとして、16件のエコ商品を開発しました。また環境マネジメントシステム導入の推進・強化に取り組んだ結果、ハウス食品グループのほぼすべての会社がISO14001を認証取得しました。CO2の削減活動についても、2009年にハウス食品の全工場で燃料の天然ガスへの転換を完了していますが、さまざまな面からの見直しを続けています。物流においてはモーダルシフトを継続的に推進し、トラック輸送から鉄道・船舶とトラックとの複合輸送に35パーセント切り替えました。
三つ目の「コンプライアンス・リスクマネジメントの強化」については、コンプライアンスでは社員一人ひとりの倫理観の向上を目指し、2014年度は98回・延べ3,518名が参加した学習会を通じた啓発活動を積極的に行いました。リスクマネジメントでは、グループ全体でリスクマップを作成し、リスクに対する認識を深め、レベルの向上を図りました。

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社会貢献活動について、いくつかご紹介いただけますでしょうか。

藤 井

料理を作る楽しさ、食べる楽しさを体験していただく「はじめてクッキング」は、19年目の2014年度では幼稚園・保育園児約50万人に参加していただきました。また「ハウス食と農と環境の体験教室」は、全国のNPOと組ませていただき、全国7地区で農作業と食育のイベントを開催しています。
もう一つは商品開発での取り組みとして、食物アレルギーのお子さまを持つご家庭でも「一つのお鍋で、家族を笑顔に」を合い言葉に家族全員が笑顔で食べていただけるように、特定原材料の7品目不使用の商品を発売しました。「バーモントカレー」「シチューミクス<クリーム>」「完熟トマトのハヤシライスソース」の3品目です。アレルギー物質の混入防止のために厳重に管理された専用ラインを新設し、製造にあたっています。

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アレルゲンフリー商品に関しては、お客様からのお問い合せが多く、感謝のお言葉もいただきました。

藤 井

3月には食物アレルギーを持つお子さまとそのご家族を対象とした「ハウス食品グループ食育フォーラム」を開催しました。10月にも東京でのフォーラムを企画しています。

第五次中期計画と“ハウス流”CSR方針

グループ理念と整合性のある“ハウス流”CSR方針を通じて「3つの責任」を果たしていきます。
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第五次中期計画では、CSR方針の表現が変更されました。その背景と狙いについてお聞かせください。

浦 上

CSR方針については、創業100周年にあたる2013年10月に実施した持株会社体制への移行から説明いたします。移行に伴い、ハウス食品グループとして社会での存在意義を提示するグループ理念「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」を新たに制定しました。企業市民として「お客様」「社員とその家族」「社会」それぞれに対して「3つの責任」を同時に果たしていく、それぞれにとってグッドパートナーでありたいという想いを表しています。グループ理念制定後に策定した第五次中期計画では、この理念を普段の活動に反映させる道筋をつくっていくためにCSR方針をグループ理念と整合性のある“ハウス流”の表現にする必要がありました。

藤 井

さまざまな議論を重ねたうえで、ハウス食品グループのCSR方針を「私たちは本業を通じて、健全な社会とすこやかな暮らしに貢献するため、3つの責任を果たします。」としました。「お客様とともに」「社員とその家族とともに」「社会とともに」、この3つの責任を果たす取り組みを推進していきます。

ハウス食品グループCSR方針

「食で健康」クオリティ企業への変革

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CSR方針に対して、どのように取り組んでいくのでしょうか。

浦 上

第五次中期計画は、6年後の2020年に「目指す姿」を想定して議論を重ねました。そこで掲げたテーマが「『食で健康』クオリティ企業への変革」です。食品メーカーとして「あれもできる、これもできる」と全方向で取り組むよりも、「私たちは、事業としてこちらに進みます」と方向性を明示し、CSRとしても事業との一体感を考えながら、取り組むべき内容を詰めていきました。

藤 井

CSR方針の策定にあたっては、グループ理念と2020年に「目指す姿」、両面とのつながりを重視しています。これらにもとづき、「グループ理念の3つの責任の実現」「一貫性のあるCSR活動の推進」「本業でのCSR活動」、さらに共通価値である「食で健康」を要素として実現に取り組んでいきます。「食で健康」は3つの分野でとらえ、さまざまな形で健康に関する食品の開発がテーマになります。笑顔で食卓を囲む家庭、家族と人とのつながりという中での「心の健康」。未病、予防、健康な体づくりという「体の健康」。社会情勢をふまえたケアフード、アレルギー、減塩などの「優しい食品」です。
具体的には、CSR活動を「コーポレート・ガバナンス」「コンプライアンス」「リスクマネジメント」「品質保証力の向上」「雇用創出」「環境経営」「社会貢献」の7つのテーマで進めていきます。“ハウス流”CSR方針を社内外へ伝えていく取り組みを、3年プランのミッションとしたいと思います。
特に「環境経営」では、新たに水資源について、排出量削減に取り組んでいきます。地球規模での環境リスクを考慮して、引き続きすべてのバリューチェーンで環境に配慮した製品・サービスの提供、CO2排出量の削減、リサイクル化を含めた廃棄物の削減に努めます。

浦 上

現時点では、この「7つのテーマ」というのはまだまだ総花的なので、これから新しく定められたCSR方針にもとづき展開していくことで、“ハウス流”CSRを創り込んでいくのだという姿勢で取り組んでいこうと考えています。

2020年に目指す姿を見据え、「食で健康」を共通価値としたCSR活動を推進していきます。

ステークホルダーとの向き合い方

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CSR方針をステークホルダーに理解を広め、浸透させていくためのプランはありますか。

浦 上

社員に対する取り組みとして、仮称ですが「ハウスウェイ・ブック」計画があります。2013年に創業100周年を迎え、次の100年に向けて歩みはじめたハウス食品グループの営みからしても、そういうツールを持つ時期ではないかと。私たちの行動指針や理念を、世代を超え、国を超えて共有していく土台を、年月をかけて創り込んでいきたいと思います。

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2015年4月にカスタマーコミュニケーション本部がコーポレートコミュニケーション本部に名称変更され、CSR部が移管されました。その背景を教えてください。

藤 井

ハウス食品グループにおけるCSRのあり方を明確にするための移管で、現在コーポレートコミュニケーション本部は広報・IR部、広告統括部、CSR部の体制となっています。企業にとって、すべてのステークホルダーに対してどうコミュニケーションを取っていくのかがこれからの重要な取り組みの一つになりますが、その対応を考えた体制づくりです。

浦 上

ハウス食品は上場企業ですので、お客様であり株主でもある、社員であり株主でもあるなど、株主という立場を通じて各ステークホルダーがマルチな立場になることができます。このように各ステークホルダーが複数の接点を持ち、つながりを複合化していきたい、すなわち「マルチステークホルダー」化を進めたいと考えています。

藤 井

それは、第五次中期計画の課題の一つである「ハウスファンづくり」にも関係してきます。個人株主向けにハウス食品グループの企業姿勢を知っていただくイベント企画や、優待などについても検討課題です。今までは商品がメインだったマスメディア向け広告なども、ハウス食品グループトータルの企業広告を流すようになりました。
ハウス食品の企業イメージに対して、多くの反応をいただいています。一方的な情報発信ではなく、ソーシャルメディアを含めた双方向のコミュニケーションを取ることでつながりを深め、ハウス食品グループのファンになっていただき、長く愛していただくための取り組みをさらに進めていきます。

浦 上

また、ステークホルダーを重視した取り組みとして、「コーポレートガバナンス・コード」対応があります。今年3月5日に発表されたコード原案の冒頭で、コーポレートガバナンスとは「会社がさまざまなステークホルダーの立場を理解したうえで持続的な成長を実現するためのもの」としており、CSR活動とかなり一体化するテーマだと思いますし、コード原案の考え方に沿ったガバナンス体制のあり方を、注力して議論していきたいと思います。

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今後の社会貢献活動については、どのようにお考えでしょうか。

藤 井

社会貢献活動も「食で健康」を共通価値とした“ハウス流”に特化したものに、規模も含めて見直しを図る時期にあると思います。ハウス食品グループのすべての社員が、「ハウスが取り組んでいる社会貢献とは何か」を語り、共通認識を持てるような一貫性のある活動を実施していきたいと考えています。

社会で役立つ企業であり続けるために

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最後になりますが、これからハウス食品グループがどのようなステージに進んでいくのか、メッセージをお願いします。

浦 上

第五次中期計画は、持株会社体制移行後初めての中期計画になりますが、その方向性は今までの中期計画とは異なってきている部分もあります。この成熟市場の中で100年後も社会で役立つ企業であるためには、この第五次中期計画を「ハウス食品グループ変革の第一歩」としていかなければなりません。CSR方針というのは期限付きのものではなく、普遍的であるべきですが、あえて6年後の2020年という中期計画2回分の時間軸を置いた「目指す姿」と方向性を合わせています。この新しいCSR方針のもとで、私たちのCSRをこれから創り込んでまいります。