第三者意見

ハウス食品グループは、2012年に策定した第四次中期計画が本年3月に終了し、本年4月から第五次中期計画がスタートしている。本レポート冒頭の「トップ対談」では、浦上博史社長とCSR方針策定の総責任者である藤井豊明取締役が、第四次中期計画における3年間のCSR活動を総括し、新たな「“ハウス流”CSR方針」策定の経緯と「目指す姿」を語っている。
私は2012年から同社グループの第三者意見の執筆を担当しており、3年間の活動の総括には感慨深い思いがある。この間、同社グループは持株会社体制に移行し、「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします」という新しいグループ理念を策定した。CSR活動に関しては、近江商人の「三方よし」の考え方を体現する活動を行ってきた。「三方よし」とは、「売り手(同社グループ)」のみならず、「買い手(お客様)」や「世間(社会)」にも喜ばれる企業を目指した活動である。具体的には、お客様の声を製品やサービスの改善に生かす品質向上活動やフードディフェンスへの取組みを中心とした「品質保証力の向上」、ISO14001の認証取得やエコ商品開発などを中心とした「環境経営の実践」、そして継続的な従業員教育を中心とするコンプライアンス体制、「リソース型BCP」など特徴があるリスクマネジメント体制の強化である。
同社グループのCSR活動の特徴は、「お客様」を中心に据えて長期的な視座でそれぞれの活動を行っていることであろう。たとえば、子どもたちにカレー作りを体験してもらう「はじめてクッキング」の活動は今年で20年目を迎え、のべ約595万人の幼稚園・保育園児が参加したそうである。筆者が教える大学でも「はじめてクッキング」に参加した学生がおり、楽しかった記憶として残っていると話してくれた。
同社グループは2013年10月に創業100年を迎えた。変化の激しい食品業界において、100年を超えてなお、お客様の信頼を獲得し続けていることに敬意を表したい。信頼を獲得し続けている理由は、「お客様起点の経営」への真摯な取組みに他ならない。本年度版のCSRレポートは、このような特徴が端的に表現され、また「誠実さ」と「あたたかさ」を感じる好感が持てる内容になっている。
本年度から始まる第五次中期計画は、「100年後も社会で役立つ企業であるため」の第一歩の計画として策定され、これにあわせて「“ハウス流”のCSR方針」を策定している。わが国は、「日本版スチュワードシップ・コード」、「コーポレートガバナンス・コード」の影響により、上場企業はROE(自己資本利益率)重視の経営にシフトしつつある観がある。ROE重視の経営は株主への還元を目的としており、近視眼的な経営を求める結果をもたらすおそれがある。100年余の間、お客様の信頼を獲得し成長し続けてきたハウス食品グループは、いままでと変わることなく、長期的視座に立ったCSR経営を推進されることを期待したい。「お客様」「社員とその家族」「社会」のグッドパートナーとして、「笑顔ある暮らし」を届け続けて頂きたいと願っている。

関西大学 
社会安全学部・大学院社会安全研究科 
副学部長、教授・博士(法学)

日本経営倫理学会 理事、
日本経営倫理士協会 理事
 
経営倫理実践研究センター 
上席研究員

高野 一彦

高野 一彦 Kazuhiko Takano